F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.032

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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇

     No.32 ; 2013.11/17(日)[旧暦 神無月十五日]発行

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 立冬(7日)を過ぎ、急に冷え込む日が多くなってきました。

 一方、この季節になっての大きな台風で、フィリピンで甚大な被害が

発生しました。折しもポーランド・ワルシャワでは、気候変動に関する

国際会議が開催中、CO2削減に向けた実効的な対策が求められます。

 

 時の流れを感じて頂く一助とするため、旧暦の毎月1日(朔日=新月の

日)と15日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は旧暦神

無月十五日の配信です。

 


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  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

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日本は「農業大国」か

 (4)  日本農業の強み −人口密度−

 前回は、他の主要国にはない日本農業の強みとして「風土」をあげ、

その代表的な指標として年平均気温と年間降水量を紹介しました。

 

 むろん、農業の生産条件を決めるのは気象だけではなく、気象にして

も気温と降水量だけで代表するのは乱暴です。

 そもそも日本国内でも、気象条件は千差万別です。

 

 それでも、あえてこの2つの指標で各国間(しかも首都どうし)を比較

したのは、少なくとも生産技術面においては、日本農業は一般的に捉え

られているような、脆弱なばかりではないことを示したかったからです。

 

 そして今回、日本農業の強み(有利な条件)の二つ目として取り上げ

るのは「人口密度の高さ」です。

 

 これまた単純な比較ですが、総務省統計局のウェブサイトに掲載され

ている国土1平方キロメートル当たりの人口(2011年)をみると、イギリ

257人、フランス 115人、ドイツ 229人、アメリカ 32人、オーストラ

リア 3人に対して、日本は 343人と最も高くなっています。

 山がちで平野が少ない日本の場合、可住地面積当たりで比較すると、

諸外国との差はさらに拡がることになります。

 

 人口密度が高いことは、一般的には、農業の生産条件にとっては不利

なこととイメージされるかも知れません。

 確かに、都市近郊等において、農地が住宅地や商業用地に囲まれてい

るような状況は、日本農業の生産性の低さを象徴しているようにみえま

す。

 

 しかし、ひるがえってみると、人口密度が高いということは、農業の

生産現場の近くに多くの消費者がいることを示しているのです。

 

 消費者は、自分たちの食べ物が生産される様子を身近に観察すること

ができ、生産者は、自分たちが作った食べ物を消費する人たちのニーズ

や要望を聞く機会に恵まれています。

 つまり、日本においては、生産者と消費者が「顔の見える」関係を成

立させるためには、比較的容易な条件下にあると言えるのです。

 

 世界平均からみても高い所得水準と購買力を有する1億人以上の消費者

が、農業生産の現場の近くにいるということは、日本農業にとっては大

きな「強み」と言えるのではないでしょうか。

 

 ただ、この「強み」は、気温や降水量とは違い、天から自然に恵まれ

るものではありません。

 消費者、生産者(あるいは仲介する事業者)それぞれが、「顔の見え

る関係づくり」に向けて意識して取り組むことにより、初めて享受でき

るものなのです。

 

[参考]総務省ウェブサイト『世界の統計2013』、2-5 人口・面積

  http://www.stat.go.jp/data/sekai/0116.htm

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 酒井文子(さかい・あやこ)さんは、在宅介護支援団体のソーシャル

ワーカー等を経験された後、野菜ソムリエの資格を取得され、現在は、

食育・野菜料理コーディネーター、江戸東京野菜料理研究家、野菜ソム

リエ、食育実践アドバイザーとして活躍されている方です。

 

 小金井市食育推進会議の副会長、NPO法人ミュゼダグリ(「農の博物館」

という意味)の理事長も務められました。

 また、市民の手作りによる「小金井市食育ホームページ」の編集委員

もされています。

 

 江戸東京野菜との出会いは、酒井さんの食育活動をさらに幅広いもの

にしました。

 伝統野菜を復活・普及する取組は、「人と人のつながり」「伝統の継

承と復活」等を考える機会にもなることから、江戸東京野菜を使った料

理を考え発信することが、現在の酒井さんの活動の一つとなっています。

 

 東京・多摩にある小金井市は、生産者や農業団体だけではなく、行政、

商店会、大学など様々な主体が連携して、「江戸東京野菜で町おこし」

に熱心に取り組んでいる地域です。

 

 酒井さんが理事を務めるNPO法人ミュゼダグリでは、「あっぱれ野菜!

STUDY & CAFE」と題する江戸東京野菜編講座(講演+試食)や東京の農

業や野菜に関連する外部講師を招いた講座を、ほぼ毎月開催しています。

 

 さて、酒井さんの食育のモットーは、「学んで、おいしく食べて、面

白い発見をしながら、みんなで実践しましょう」。

 毎日の食生活の中での些細な「発見」や「気づき」で、「たのしく、

おいしく、おもしろい食育」や「畑から食卓へ」を提唱しておられます。

 

 1110日(日)に開催された食育フォーラムでは、児童館、小学校、

青年会議所のメンバー、市議会議員など様々な方達を対象にした取組の

様子を紹介して下さいました。

 

 酒井さん達の活躍により、地域における食育の取組がますます拡がっ

ていくことが期待されます。

 

[参考]

  江戸東京野菜でまちおこし「NPO法人ミュゼダグリ」

   http://www.musee-d-agri.org/

  小金井市食育ホームページ

   http://koganei-style.ora-so.com/info.html

 

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  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 113日付け]US.Peaceファーム「収穫祭」@埼玉・小川町

  埼玉・小川町での有機米栽培体験会の最終回は、脱穀と精米、そし

 て収穫祭。秋の日射しの下で、感謝しつつ食事を頂きました。

   http://food-mileage.jp/2013/11/03/

 

 116日付け]秋の畑からの授かりもの。そして日本シリーズ。

  市民農園では立派な伝統大蔵大根、仙台雪菜、落花生等が収穫でき

 ました。そして、イーグルス日本一についての個人的な感慨。

   http://food-mileage.jp/2013/11/06/

 

 117日付け]しゃしん日記(ゴマのいっしょう))

  「東京ゴマ01(ゼロワン)プロジェクト」の一環として、東村山

 市で栽培したゴマの一生を、小学生がレポートしてくれました。

   http://food-mileage.jp/2013/11/07/

 

 1111日付け]乞うご期待! ひのはら冬のプロジェクト

  「東京ゴマ01(ゼロワン)プロジェクト2013」は最終段階の精製

 作業。来年5月までの間、檜原村で行う新しいプロジェクトについて

 話し合いを行いました。

   http://food-mileage.jp/2013/11/11/

 

 1112日付け]収穫祭−めぐみへの感謝 

  小金井市と東村山市での収穫祭と食育フォーラム。そして市民農園

 からの収穫も。身近に農業があることの有難さを噛みしめました。

   http://food-mileage.jp/2013/11/12/

 

 1114日付け]桑原史成さん写真展「不知火海」 

  桑原さんの集大成「水俣事件」の出版に合わせ、銀座で写真展が開

 催されています。記録映画監督の原一男さんとのフォトセミナーも

 開催されました。

 

   http://food-mileage.jp/2013/11/14/

 

 筆者が説明者等として参加予定のイベント等です。

  参加を希望される場合等は必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

 

  江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座(第3期総合コースの一部)

  日時:1123日(土)10:3017:00

  場所:東京アグリパーク(JA東京南新宿ビル3F

  主催:江戸東京野菜コンシェルジュ育成協議会

  (詳細、お問合せ等

   http://edocon831.seesaa.net/article/378495311.html

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  中には締切等の場合がありますので、参加を希望される場合等は、

 必ず事前にお問い合せ下さい。

 

  銀座農業政策塾/第3期/プレ講座「コミュニティ農業のすすめ

    〜生産者と消費者、地域と地域をもっと身近に〜」

  日時:1120日(水)19:0021:00

  場所:銀座会議室三丁目(6B室、中央区銀座3-7-10松屋アネックスビル)

  講師:蔦谷栄一氏(農林中金総合研究所客員研究員)

  主催:戦略経営研究会

  (詳細、お問合せ等

   http://m-motegi.at.webry.info/201310/article_12.html

 

  種まきからはじめる秋そばづくり第4弾「そば&大豆の脱穀」

  日時:1123日(土)〜24日(日)

  場所:山梨県上野原市 西原(さいはら)地区

  主催:しごと塾さいはら

  (詳細、お問合せ等

   http://shigotojyuku-saihara.jimdo.com/

   https://www.facebook.com/events/557886764289921/?ref_dashboard_filter=upcoming

 

  あっぱれ野菜!STUDY
& CAFE <
江戸東京野菜編>vol.16

    江戸東京野菜がつなぐ江戸時代の食と今の食

  日時:1130日(土)11:3013:30

  場所: 楠公レストハウス(千代田区皇居外苑1-1

  主催:NPO法人ミュゼダグリ

  (詳細、お問合せ等

   http://www.musee-d-agri.org/pdf/2013/s_c131130_4.pdf

 

  映画『紫』上映会、トークライブ冨田貴史さん×高月美樹さん

  日時:1130日(土)[1]14:0016:00[2]17:0020:00

  場所: [1]沼袋・シルクラブ(中野区沼袋2-30-4

      [2]荻窪かふぇ&ほうる(杉並区荻窪3-46-13

  (詳細、お問合せ等

   https://www.facebook.com/events/178082305719985/?ref_dashboard_filter=upcoming
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  みんなで遊ぼう ドイツ環境食育ゲーム「ビオな食卓」

  日時:1130日(土)13:0015:00

  場所:金沢市西部環境エネルギーセンター(東力町ハ3番地1

  主催:金沢エコネット

  (申し込み、お問合せ等)金沢市環境政策課、電話076220-2304

 

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* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は、全て筆者の個人的なものです。

 

* 今回も読んでいただき有難うございました。

  次号は123日(日)(旧暦・霜月朔日)の配信予定です。

 

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也

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