F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.036

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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信 ◇◆◇

     No.36
; 2014.1/15
(水)[旧暦 師走十五日]発行

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 前号(11日付け)は、これまでの内容を振り返るダイジェスト版と

してお送りしましたので、今回が2014年の実質的なスタートの号です。

 引き続き、皆様とともに食や農の問題について考えていくための素材

を提供していければと考えていますので、どうぞよろしくお願いします。

 

 時の流れを体感して頂く一助とするため、今後も旧暦の毎月一日(朔

日=新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信します。

 今日は旧暦・師走十五日(ちなみに満月は明日)です。

 120日(月)は大寒、一年で最も寒い時期です。どうぞご自愛下さい。


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  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

  また、今号から、ポイントとなるグラフ等をリンクを貼るかたちで

 提供していきます。継続していけば、食や農に関するミニ・データベ

 ースができます(できるはずです)。

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5 フード・マイレージ基礎知識

(1) 輸入食料のフード・マイレージ

 まずは、メルマガのタイトルにもある「フード・マイレージ」に関す

る基礎的なグラフ等を紹介していきます。

 

 フード・マイレージとは、食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせた単

純な指標(例えば、20トンの食料を50km輸送してきた場合のフード・マ

イレージは、20×50100トン・キロメートル)で、これに、二酸化炭素

排出係数を乗じることにより、その食料の輸送によって排出された二酸

化炭素の量を推計することができます。

 つまり、食料の輸送に伴う環境への負荷の大きさを定量的に把握でき

るのです。

 

 私が農水省・農林水産政策研究所在勤中に、最初に輸入食料のフード・

マイレージを計測したものが、以下のリンク先のグラフです。

2001年値。その後、日本については2010年の数値を追加。)

 

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/1-1_FM1.pdf

 

 2001年における日本の輸入食料のフード・マイレージを試算すると、

9000億トン・キロメートルとなりました。これは、日本国内における

1年間の全ての貨物輸送量の約1.6倍に相当します。

 

 また、諸外国と比較すると、韓国・アメリカの約3倍、イギリス・ドイ

ツの約5倍、フランスの約9倍と、際立って大きくなっています。

(なお、輸入食料のフード・マイレージが世界一大きい国は、人口大国

の中国と思われます。)

 

 さらに、日本の輸入食料のフード・マイレージを品目別にみると、飼

料穀物(とうもろこし等)や油糧種子(大豆、菜種等)が大きな部分を

占めていることが分かります。

 つまり、戦後、日本人の食が欧米化(米の消費半減、畜産物や油脂の

消費急増)したことが、際立って大きな輸入食料のフード・マイレージ

の背景にあるのです。

 

 また、2010年の日本の輸入食料のフード・マイレージは若干減少して

いますが、これは、近年における世界的な食料価格の高騰に伴い、輸入

量が減少したことによるもので、私たちの食が、長距離輸送された大量

の輸入食料に支えられているという状況は、残念ながら変わっていませ

ん(平均輸送距離は、むしろ永くなっています)。

 

 このように、フード・マイレージは、私たちの食のあり方(どのよう

な食生活を選択するか)が、地球環境問題とも関わっていることに気付

くヒントとなるものです。

 

 次回も、輸入食料のフード・マイレージについての説明を続けます。

 

[参考]

 フード・マイレージについての少し詳しい説明

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-gaiyou.html

 

 フード・マイレージ関係資料(発表論文等)

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data.html

 

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  オーシャン・カレント 潮目を変える

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 2014年、最初に紹介させて頂くのは「ひご野菜ブランド協議会」です。

 

 今、全国各地で伝統野菜や在来作物を復活、普及させようという取組

が盛んになっています。

 例えば、東京では江戸東京野菜に関する取組が拡がっていますが、こ

れは、食料自給率が低い大都会だからこそ、逆に食に対する強い関心

(危機感)が背景となっている面があります。

 京野菜(京都)や加賀野菜(金沢市)の取組も、必ずしも農業生産に

有利とはいえない地理的・気象的条件の下で、地域の農産物や食文化を

大切にしようという強い意識に支えられています。

 

 一方、九州・熊本は、温暖で農地も広く、農業生産に恵まれた条件下

にあります。野菜の生産額は全国第4位、トマトやナスなど、全国の市場

にブランドとして流通している品目もたくさんあります。

 

 このため、かえって伝統野菜や地産地消に対する意識は必ずしも高い

とは言えず(例えば、努力しなくても自然に地産地消はほとんど達成で

きます。)、その結果、伝統野菜等の生産農家は高齢化・減少し、後継

者も育っていないという現状にあります。

 

 このようななか、ひご野菜の継承・普及活動を通じた生産者の所得向

上、食文化の継承と発展、地域づくり等に寄与することを目的として、

昨年7月、民間主導により「ひご野菜ブランド協議会」が発足しました。

 

 構成員は生産者・生産者団体、卸売市場、百貨店、ホテル、知的財産

の専門家、食育に取り組む女性グループの方たちで、産地見学会、調理

実習、研修会への講師派遣等の活動に積極的に取り組んでいます。

 また、ひご野菜を学校給食の食材として供給する取組も行っています。

 

 昨年12月に主催された産地見学会(芋の芽、水前寺セリ、水前寺ノリ、

水前寺もやし)と講演会には、私も参加させて頂き、ひご野菜の生産の

現状等を垣間見ることができました。

 

 協議会の発足に尽力し、事務局を務められているのは北亜続子さん

(本誌No.25では、ひご野菜コロッケ専門店「ひご之すけ」の経営者とし

て紹介させて頂きました)。

 

 北さんは、「伝統野菜を次の世代に伝えていくためには、農家の所得

を確保し、後継者を育てることが必要です。そのために、ひご野菜の認

知度を高め、学校給食を含めた消費拡大に取り組んでいきたい」と話さ

れています。

 

 ひご野菜ブランド協議会の活動が益々拡がっていくことを、期待した

いと思います。

 

[参考]

 昨年12月のひご野菜見学会等の模様

  http://food-mileage.jp/2013/12/28/

  http://food-mileage.jp/2013/12/29/

 

 ひご野菜コロッケ専門店「ひご之すけ」

  http://ameblo.jp/55higonosuke/

 

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  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 11日付け]2014年、新年のご挨拶を申し上げます。

  穏やかに2014年が明けました。いつものように近所の神社に初詣。

 「地口行燈」の文句は解明されないままです。

   http://food-mileage.jp/2014/01/01/

 

 14日付け]今年も伝統野菜等に注目です。

  おせちとともに頂いた「ひご野菜コロッケ」。各地で拡がる伝統野

 菜や在来作物の取組に今年も注目していきたいと思います。

   http://food-mileage.jp/2014/01/04/

 

 19日付け]2014年も進化する共奏キッチン

  シェア奥沢(自由が丘)で開催された今年最初の共奏キッチンは、

 自然栽培の野菜を使った鍋もの等で温まりました。今年はさらに進化

 の予感。

   http://food-mileage.jp/2014/01/09/

 

 112日付け]カナ&ゴローさん「星めぐりサンバ」

  新宿の「ダイニングカフェ・結YUI」で開催された「ぐりぐり星人

 のお二人による被災地支援報告会は、笑いとともに、心に染み込んで

 くるイベントでした。

   http://food-mileage.jp/2014/01/12/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  締切り等の場合がありますので、参加を希望される場合等は、必ず事

 前に主催者にお問い合せ下さい。

 

  市民科学研究室「設立20周年記念シンポジウム、交流会」

  日時:118日(土)

     シンポジウム14:0017:30、交流会18:0021:00

  場所:せたがや がやがや館 多目的室(世田谷区池尻2-3-11

  主催:NPO法人市民科学研究室

  (詳細、お問合せ等

  http://blogs.shiminkagaku.org/shiminkagaku/2014/01/11820.html

 

  第12回品川マルシェ「全快野菜ちゃん」

  日時:119日(日)10:0015:00(売り切れ終了)

  場所:品川寺(ほんせんじ、品川区南品川3-5-17

  主催:グリーンスマイル

  (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/790059507677073/?ref_newsfeed_story_type=regular

 

  「日本の田舎を食べて、元気と笑顔を作る」

   わわわwith
greensmile
プロジェクト キックオフパーティー

  日時:119日(日)15:0018:30

  場所:アームス経堂(世田谷区経堂2-6-1

  主催:wawawa
共催:グリーンスマイル、

  (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/295678637224012/?ref_dashboard_filter=upcoming

 

 「東京産地場野菜でつくる冬の干し野菜」

  (あっぱれ野菜!  STUDY & CAFE vol.18

  日時:119日(土)11:3013:00

  場所:小金井タウンショップ黄金や2階「黄金やキッチン」

    (小金井市東町4-42-21

  主催:NPO法人ミュゼダグリ

  (詳細、お問合せ等

  http://www.musee-d-agri.org/pdf/2013/s_c140119_2.pdf

 

  丘の上より三田の家 三田の家の7年間の活動をふり返りつつ、

   コミュニティや場づくりについて対話する午後

  日時:119日(土)13:0017:30

  場所:コクヨ エコライブオフィス品川(港区港南1-8-35

  主催:共奏事ム局

  (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1394443530803443/?ref_dashboard_filter=upcoming

 

  アドボカシーカフェ第23回「ヘイトスピーチと人種差別」

  日時:121日(火)18:3021:00 

  場所:NPO法人「まちぽっと」会議室(新宿区歌舞伎町2-19-13

  主催:ソーシャル・ジャスティス基金(SJF) 

  (詳細、お問合せ等

  http://socialjustice.jp/p/20140121/

 

  下里有機の里づくり講演会「里山から見える未来」

  日時:126日(日)13:3015:00

  場所:小川町農村センター(埼玉県小川町下里459-1

  基調講演:澁澤寿一氏(NPO法人共存の森ネットワーク理事長)

  主催:下里有機の里づくり協議会

  (詳細、お問合せ等

   http://tad-a.com/shimosato/satoyama/

 

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* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は、全て筆者の個人的なものです。

  ご意見、ご質問、投稿等をお待ちしています。

 

* 次回は、131日(金)(旧暦・睦月朔日)の配信を予定しています。

 旧暦でもいよいよ新年を迎えます。

 

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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也

 
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