銀座から生まれる日本農業の新しいデザイン

 20日(月)は二十四節気の「大寒」。
 1年で最も寒い時季ですが、冬至から1ヶ月が過ぎ、朝夕など確実に日は長くなってきました。
 自宅近くの市民農園。こぶ高菜(長崎・雲仙の伝統野菜)には、見事な「こぶ」ができています。
 先日、職場の生協売店で、3年ぶりに出荷再開された福島の名産「あんぽ柿」をゲット。
 最初に入荷した際はすぐに売り切れて買えませんでした。何とも爽やかな甘さです。
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先週土曜日(18日)、「市民研」20周年記念シンポジウムに向かう途中、東急・池尻大橋駅を地上に出ると目黒川沿いに巨大な建築物。福岡・ヤフードームのような外観です。
 エレベーターで昇ってみると、なだらかに円を描く細長い斜面が公園になっており、野菜畑までありました。高速道路のジャンクションの屋上で、「目黒天空庭園」というそうです。
 全国の農山村地域では過疎が進み耕作放棄地が増加する一方で、東京では、このようなところまで農作物が栽培されていることに違和感を覚えつつも、都市住民の「農」に対する願望を垣間見たような気がしました。
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 さて、大都会・東京を象徴する銀座という地から、日本農業の新しいデザインが描かれ始めています。
 2014年1月21日(火)、銀座農業政策塾第3期「コミュニティ農業の実践」が開講したのです。
 蔦谷栄一先生の実践的な講義を受けつつ、塾生一人ひとりがコミュニティ農業、農的社会の実践を目指そうという趣旨の講座は、6月まで6回シリーズという長丁場かつ充実したものですが、既に定員はほぼ一杯とのこと。
 この日の会議室も満席でした。
140121_1_convert_20140125110822.png 講師の蔦谷栄一(つたや・えいいち)先生は、昨年、永く務めておられた農林中金総合研究所を退職、自ら「農的社会デザイン研究所」を立ち上げられた方。
 山梨・牧丘町で交流活動「農土香(のどか)の会」を運営されておられるほか、新たに西東京市(田無駅近く)に安心して遊べる居場所「おむすびハウス」を開設されたそうです。
 蔦谷先生の理論は、豊富な知識や調査研究だけではなく、実践にも基づいているところが(僭越な言い方ですが)素晴らしいところです。
 主催者であるNPO農業情報総合研究所・植村春香代表の司会で開会、塾長の高安和夫さん(NPO銀座ミツバチプロジェクト代表)から挨拶に続いて、参加者から1人ずつ自己紹介。
 農業関係団体や行政の方だけではなく、弁護士、行政書士/司法書士、IT関係の会社経営者、ファイナンシャルプランナー、コピーライター、翻訳家、主婦、大学院生など、多彩な方々です。
 蔦谷先生からの1回目の講義は、「農業関係者だけではなく、国民全体が農業とふれ合い、向き合っていくことの必要性を実感している。銀座から日本の農業を変えていきたい」との言葉から始まりました。
140121_2_convert_20140125111006.png 1960年度から現在にかけ、GDPに占める農業のシェアは9%から1%に、就業人口に占める割合は27%から4%に低下。担い手の高齢化も進行(平均年齢は66歳)。
 農家一戸あたりの平均面積は諸外国と比べて小さいものの、新大陸と旧大陸、畜産・小麦文化圏と稲作文化圏の違いがあることに留意が必要。稲作は生産性が高い(小面積でも多くの人口を扶養できる)。
 総合食料自給率にはカロリーベースと金額ベースの2種類があるが、食料の安定確保という観点からはカロリーベースの方が重要。
 今後の日本農業を考えていく際には、多様な地域性、高い技術水準、品質等にこだわる高所得の消費者がいること、都市と農村の時間的距離の近さ(日本全体が都市農業のようなもの)、棚田等の素晴らしい景観、といった特質を踏まえることが重要。
 国は新しい農政を進めようとしているが、財政状況には懸念があり、自分たちが支えていくことが必要。
 一人ひとりが農業とどう関わっていくかが問われる時代となっている、とまとめられました。
140121_3_convert_20140125111059.png その後、自然農法と有機農業、直接支払制度の概要、人・農地プランや地域営農ビジョン等に関する熱心な質疑応答があり、1回目の講座は終了です。
 引き続き、近くの大衆割烹に移動しての番外編(交流会)には、蔦谷先生を含め20名以上が参加されました。
 名刺交換等でネットワークが拡がっていきます。
 ちなみに、ここはいつも美味しい刺身を出してくれます。この日はドジョウの唐揚げもありました(帰り際に階段に置かれたバケツを見ると、たくさんのドジョウが泳いでいました)。
140121_4_convert_20140125111121.png さて、翌1月22日には、蔦谷栄一先生の新著「地域からの農業再興~コミュニティ農業の実例をもとに~」(創森社)が上梓されました。
 「日本農業は地域農業の複合体」等の卓見がちりばめられています。講義の後で改めて本も読むと理解が進みます。
 また、多くの事例も紹介されており、コミュニティ農業への流れが着実に広がりつつあることが実感されます。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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