豊年萬福塾-東京の農業を知る- @日本橋

140222_1_convert_20140223101657.png 2014年2月22日(土)。
 関東・甲信地方の大雪から1週間が経ちましたが、自宅近くに一画を借りている市民農園は、一面雪におおわれているままの状況です。
 トンネルが雪で潰されていました。
 ささやかで強度のないものながら、実際に潰れているのを見ると、自然の脅威を目の当たりにしたようで小さなショックを受けました。
 今回の大雪は、これまであまり雪が降らなかった施設農業地帯に大量の積雪をもたらしています。被害を受けられた生産者の方の気持ちを思うと、胸が詰まります。
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 さて、この日(2月22日・土)は日本橋に向かいました。
 翌日に開催される東京マラソンのタペストリが青空に映えています。1週間前でなくて幸運でした。
 
 近年、この辺りは再開発が進み、近代的でお洒落な建物が増えるなど、街の光景が一変しています。
 川沿いを行くと、伝統的な瓦屋根の蔵造りという建物が目に入ってきました。ここが「日本橋室町 豊年萬福」。物販やセミナー・展示も行う「文化情報発信型飲食店」だそうです。
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 中に入ると、壁や調度類は木調で統一され、高い天井には行燈風の照明等と、落ち着いた素敵な空間です。
 ここで、日本橋に特化しその魅力を伝えるタウン誌「月刊日本橋」(1979年創刊)の主催により、定期的に「豊年萬福塾-日本橋から。日本橋へ。」というセミナーが開催されています。
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 この日、その第八回「東京の農業を知る」が開催されました。
 講師は、江戸東京野菜生産者である高橋金一さんと井上誠一さん(JA東京むさし小金井地区壮青年部)、そして食育・野菜料理コーディネーターの酒井文子さん。
 いずれの方も、江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座等でお世話になっている方たちです。
 「月刊日本橋」の代表、堺美貴さんの開会あいさつでスタート。参加者は30名ほどです。
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 まず、高橋金一さんからは都市農業をめぐる情勢について。もともと植木農家だったそうですが、現在は野菜や果樹生産が中心とのことです。
 都市部で農業を続けるには多くの困難。転用した方が経済的な利益も大きい。都市農業も伝統野菜も守らないと消えてしまう。自分は歯を食いしばってでも次世代に残して行きたい。そのためには、消費者の皆さんに食べて応援して頂きたい、と熱意のこもった説明です。
 続いて、小金井・江戸東京野菜研究会の代表でもある井上誠一さんから、江戸東京野菜の概要と小金井市における取組について報告がありました。
 伝統野菜の生産・流通は難しい面があるものの、食べてもらうと美味しさが分かるとのこと。最初は4名から始まった小金井市における江戸東京野菜の栽培は、現在は10名ほどに増えているそうで、年2回、市をあげてのイベント(春のお花見弁当、秋の黄金丼)も開催されているそうです。
 また、地元の保育園や小学校に足を運んで亀戸大根の栽培体験等を指導されるなど、食育の取組にも積極的に取り組んでおられることも紹介して下さいました。
 
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 続く酒井文子先生からの「楽しく、おいしく、おもしろい食育」と題する話は、野菜の花の名前当てクイズから始まりました。ご自身も畑で野菜を栽培している酒井さん、花を咲かせるのが好きだそうで、普通は見られない(開花する前に収穫する)ブロッコリの黄色い花も紹介して下さいました。
 そして、日本人は野菜の摂取量が不足しており、必要な350g以上を摂取するのはこれだけが必要と、ざるに盛られた野菜を掲げられます。
 これだけの量はとても食べられない、と思いましたが、実際に調理した料理をスライドで見せて頂くと、煮たり炒めたりすれば食べられるかなと思いました。
 
 また、作成に携わっておられる小金井市の食育ホームページも紹介して下さいました。なかなか充実した内容です。
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 説明の後は、試食の時間。
 まずは「青虫体験」と称して、のらぼう菜と金町小カブ(葉っぱも)を生のまま試食。いずれも甘味があります。
 続いて酒井先生のレシピによる2品。
 1品目は「のらぼう菜の海苔和え」。のらぼう菜は東京・あきるの市産、海苔は江戸前の富津産だそうです。何とも美味です。江戸時代の人は、こんなに美味しいものを食べていたのでしょうか。
 2品目は、江戸時代に伯州(現在の鳥取県)で食べられていたという大根卵和えという秘伝の料理。卵を裏ごしして白味噌とすり合わせ、煮た大根と和えるという珍しいものです。見た目も食感も独特です。
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 最後は質疑応答の時間。
 参加者からは、江戸東京野菜の栽培に取り組むようになったきっかけ、残留農薬など安全性確保についての取組、年中行事と結びついた食育を進めるべきではないか、等の熱心な質問や意見が出されました。
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 2時間の楽しくて美味しいセミナーは、あっという間に終了。
 講師の方の話は、いずれも実践に基づいた具体的な内容で分かりやすく、3人の息もぴったりでした(「レッツゴー三匹」と自称されていました。ちょっと古い?)。
140222_10_convert_20140223102308.png 帰りには、のらぼう菜と、亀戸大根の種をお土産に頂きました。
 種はサヤのままです。小学校等における栽培体験は、このサヤをむくところから始まるそうです。詳しい栽培マニュアルも同封されていました。
 江戸の中心・日本橋で聴く江戸の食文化の話は、格別でした。
 次回の「豊年萬福塾」は、3月29日(土)14~16時、「江戸前の学校その2-東京湾における環境再生の取り組み」をテーマに開催されるとのこと(講師:神奈川県水産技術センター・工藤孝浩氏、ゲスト:横浜市漁協・斎田芳之氏)。
 ご関心を持たれた方は、「月刊日本橋」編集部(03-6202-1221、平日10~18時)までお問い合わせ下さい。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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