勇吾クンと勇気クンの物語

 一次産業の現状について説明したり語ったりする時、「厳しい」って言葉が枕詞のようにつくよね。
 でも最近、特に若い人たちの間で、農業や林業が見直されていると感じることがあったんだ。
 といってもリアルの経験ではなく、映画と小説なんだけど。
140314_1_convert_20140315104916.png 『銀の匙(ぎんのさじ)Silver Spoon』という映画が、今、ロードショー公開中だ。
 受験戦争に挫折し、札幌の進学校から大蝦夷農業高校(エゾノー)酪農科学科に入学した八軒勇吾クン。
 最初は周囲から浮いていたのが、次第に友情と恋が育まれていくという学園生活がコミカルに描かれている。
 それだけではなく、ペットのように飼っていた豚を屠殺、解体してベーコンにして食べるというシーンがあるかと思うと、親友の家(酪農家)が破産して引っ越し転校していくといったエピソードも出てくるんだ。 
140314_2_convert_20140315104949.png 北海道農業は規模拡大が進み、日本農業の優等生のように言われているけれど(その通りだけど)、その背景には多くの農家が離農・離村していったという厳しい現実がある。そのことが現在も続いていることも、しっかりと描かれている。
 
 ちなみに原作は少年向け雑誌に連載されている漫画とのこと。
 読んだことはないけど、これが若い人たちにすごい人気だそうだ。
 しかも、大自然の中で生き物と触れ合えるといったポジティブな面だけではなく、命を頂くことの厳粛さや、厳しい農業の現実まで描かれているこの映画(と原作の漫画)をみて、モデルとなった北海道の農業高校を志願する若い人たちが増えているニュースには、ちょっと驚いた。
140314_3_convert_20140315105008.png 次は、小説『神去(かむさり)なあなあ日常』。
 作者は『舟を編む』で本屋大賞を受賞した三浦しをん。この本もベストセラーらしい。
 高校卒業後、適当にフリーターでもして食っていこうと思っていた平野勇気クン(18歳、横浜在住)は、ひょんなことから三重県の山奥の森林組合に研修生として放りこまれてしまう。
 ちなみに「なあなあ」とは、「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」ってニュアンスの村の人たちの口癖。
 林業の仕事はキツく生活にも馴染めず、最初のうちは何とか逃げ出そうとばかり考えていたのが、山を守る男たちやその家族と交流するなかで、次第に大自然や森の素晴らしさに惹かれていく、というストーリー。
 そして終章では、主人公は
 「俺は多分、このまま神去村にいると思う。林業に向いているかどうか、まだわからない。若いひとがほとんどいない村にいて、このさきの展望が開けるかどうかも、はっきりしない。(中略)
 たしかなのは、神去村はいままでもこれからも、変わらずここにあるってことだ」と語っている。
140314_4_convert_20140315105033.png ちなみに、この小説も映画化され、5月に公開されるらしい。見に行かなきゃ。
 いま、農業や林業は、特に都会に住む若者にとっては、遠いところの「他人ごと」のようになってしまっている。
 その典型のような勇吾クン、勇気クンが(ともに「勇」の字が付くのは偶然だろうが)、酪農や林業の現場に身を置き、周りの人たちと触れ合うなかで、自らの殻を破って成長していくというストーリー。
 この映画を見、本を読んで、日本の農林業の未来は、世の中で言われているほど暗いばかりではないという気がしてきたんだ。
 必要以上に深刻ぶらず、「なあなあ」がいいのかもね。
 てなことを考えながら、若者ではない自分も農業のまねごとをしようと、2014年3月15日(土)も自宅近くの市民農園へ。
 冬の間、楽しませてくれた(まだ楽しませてくれている)仙台雪菜、温海カブは、よくみると小さな花蕾をつけている。花が咲き、種が採れるだろうか。
 隅っこに、植えた覚えのないパンジーをもう一株発見。
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 亀戸大根を間引き。
 鉛筆くらいの太さだけど、白くて長い長~い根っこにびっくり。こんなちっちゃなくせに、しっかりと、深く深く、土の中に根を下ろしているんだ。
 夕食の時にスライスしてかじってみると、これがまた、しっかりと辛かったねぃな。
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【ご参考】
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