コミュニティでグリーフをサポートするために

 2014年3月24日(月)の「共奏キッチン♪」では多くのイベント等の告知がありました。
 その一つが「哀しみに寄りそい、ともに生きる~コミュニティでグリーフをサポートするために~」という講演会・ワークショップ。
 紹介して下さったのは、入江杏(いりえ・あん)さんという女性の方。
 2000年12月30日、世田谷区上祖師谷で幼い姉弟を含む一家4人が殺害される事件が発生しました(現在も未解決)。この時の被害者の一人が、入江さんの実の妹だそうです。しかも入江さんは、一家とは壁を接した二世帯住宅に(事件当日も)住んでおられたとのこと。
 その週末の3月29日(土)は、初夏のような陽気に恵まれました。
 入江さんに紹介されたセミナーに参加するため、会場の上智大学に足を運びました。東京・四谷の土手の桜は満開、そぞろ歩く人、そこここにビニールシートを布いて宴に興じる人たち等で賑わっています。幸せな光景です。
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 上智大学にはグリーフケア専門の教育研究機関があり、家族との死別等による深い悲しみ・嘆き(グリーフ)をサポート、ケアする研究や講座に取り組んでいます。
 その受講者等による自主的な勉強会「ベグライテン」、入江さんの「ミシュカの森」と上智大学哲学科が、この日のセミナーを共催しています。
 14時に開会。会場は50名ほどの参加者で満席です。
 前半の講演は「グリーフサポートせたがや」の方から。
 米国オレゴン州の「ダギーセンター」(親との死別を経験した子ども達をサポートする施設)に研修に行ったメンバーが、自分たちが暮らす地域でも同じような活動をしたいと、グリーフを抱える人をサポートするコミュニティ作りに取り組んでおられます。
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 2013年から連続講座「哀しみに寄りそい、ともに生きる」を開催しており(その1回目の講師が入江さん)、近く、空き家を活用した「サポコハウス」をオープンされるそうです。グリーフを抱える人が立ち寄り、経験をシェアし合う「ともに生きるスペース」とのことです。
 また、メンバーのお一人からは、18歳で亡くなったご子息が遺した写真の作品展「たちかぜ」の案内もありました。
 4月21日(月)〜29日(火)の11〜17時(26日は休)、ギャラリー夢うさぎ大倉山(横浜市港北区)で開催されます。
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 後半はワークショップ形式。
 入江さんから、ご自身の活動を進める中で知り合った方たちを招き、この日のセミナーを開催することとなった運びについて紹介がありました。
 続いて一般社団法人リヴオンの代表理事、尾角光美(おかく・てるみ)さんからの活動報告。
 大学入学直前に母を亡くし、「あしなが育英会」で遺児たちのグリーフケアに携わりつつ、自殺予防や自死遺族のケアに関する活動をされています。
 母の日の原点(亡くなったお母さんに想いを届ける)を伝えるための「母の日プロジェクト」、僧侶と協働しての「グリーフサポート連続講座」等の活動を進められているそうです。
 「グリーフケア、サポートが当たり前のように行われるような社会を目指したい」とのことです。
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 続いて登壇された慶應大学の坂倉杏介先生は、コミュニティの場づくりの専門家です。行政(港区)とも連携し「ご近所イノベータ養成講座」等にも取り組んでおられます。
 ご自身はグリーフケアには詳しくないと断られつつ、「芝の家」でのエピソードを紹介して下さいました。
 それは、「芝の家」に何度も来ていた身寄りのないおばあさん(子ども達に紙芝居を演じてくれていたそうです。)が亡くなり、「悼む会」を開いた時のこと。それは、非常に豊かな暖かい気持ちに包まれた時間だったそうです。
 坂倉先生によると、コミュニティとは、今生きている人だけのものではなく、故人を感謝するとともに、生まれてくる人のことも考える場とのこと。
 そして、グリーフサポートせたがやの活動は地域において大きな意味があると、エールを送られました。
 また、別の参加者の方からは、世田谷区にある存明寺というお寺では、3カ月に一度、「グリーフケアのつどい」が開催されていることも紹介されました。 
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 入江さんも触れておられましたが、かつての日本社会では、家族や地域社会の中でグリーフケアが行われていました。しかし、現代日本では核家族や単身世帯が増加し、地域社会の人間関係も希薄になっています。
 このような中で新たなコミュニティを紡ぎ直すことは、グリーフをケアし、サポートする面でも重要であることが再認識された会合でした。
 グリーフは、全ての人に平等に訪れるとも言われます。
 しかし、隣に住んでいた妹一家が殺害されるというような事態は想像することもできません。
 入江さんの著作『この悲しみの意味を知ることができるなら』(2007、春秋社)は、何とも重く深刻な内容ですが、最後は次のような文章で締めくくられていました。
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 「一瞬一瞬をいとおしみ、笑顔ですごしていきたい。悲しみを知った今だからこそ、そう思えるのだ。これを苦しみの意味というのなら、苦しみからの贈り物を微笑んで受け取りたいと思う。」
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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