下宿ふせぎ(東京・清瀬市の伝統行事)

140503_0_convert_20140505060501.png 2014年5月3日(土)は文化の日、GW後半に入りました。
 午前中は自宅近くに借りている市民農園で作業。暑い。
 数日前の友人のFB投稿によると、この日、隣接する清瀬市で「下宿ふせぎ」という伝統行事が行われるとのこと。面白そうなので、昼食後、出かけることにしました。
 Googleマップで調べてみると目的地までは約8km。自転車で30分程度の距離です。
 自宅から空堀川(からぼりがわ)沿いの遊歩道を東北に向かいます。
 名前の通り普段はほとんど水はありませんが、大雨の時は激しい流れになります。
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 清瀬市に入り西武池袋線をくぐると、やがて柳瀬川(やなせがわ)ど合流。この辺り、緑が濃くなり、清瀬せせらぎ公園、金山緑地などがあります。
 多くの家族連れやグループが川遊びやバーベキューを楽しんでいる河原もありました。 
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 JR武蔵野線のガードがみえてくると下宿(したじゅく)地区。
 この辺り、市民センターや運動公園のほか、市指定文化財の森田家住宅(江戸時代の民家)もあります。
 その一画にある円通寺は南北朝時代に創建された古刹で、観世音菩薩立像(市指定文化財)は新田義貞の弟・義助が鎌倉から移したと伝えられています。
 長屋門(これも市指定文化財である長屋門の前には、)の前には、「ふせぎ」の文字が染め抜かれた法被を着た人たちが集まっておられます。軽トラックで大量のわら束も運ばれてきました。
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 13時を回って保存会会長さんの挨拶があり、今年の「下宿ふせぎ」が始まりました。
 病気や害虫を防ぐため、稲藁で蛇を編んで村の入り口に掲げるという江戸時代から続く行事で、東京都無形民俗文化財にも指定されているそうです。
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 長屋門に立て掛けられた梯子に一人が登り、太い紐を通して下ろし、その下端から藁を巻きつけていきます。
 藁を巻くのは技術だけではなく相当の力もいるようで、数人で声を掛けながらぎゅっぎゅっと編んでいきます。徐々に紐を引き上げていくのですが、不安定な梯子の上で紐を支え引っ張り上げるのも大変な作業です。
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 長屋門の中では、並行して蛇の頭部などを編む作業が続けられています。年に1度のこの行事は、藁を編む(なう)技術を伝承していく効果もあるようです。
 この日の参加者は、数としては比較的年配の方が多かったのですが、若い方達も何人も参加されていています。中には「おだてられて」梯子に登っていく人も。会話をしながらの共同作業は楽しそうで、時々、笑いも起こります。
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140503_7_convert_20140505060746.png そのうちに、蛇が完成したと会長さんからお披露目がありました。
 ところが実は、これは小さい方(3メートルほど)で、今年は市役所に飾られる予定とのこと。
 「本番」の大蛇を編む作業が始まっています。これは9間(約16メートル)にもなるそうです。
 確かに、先ほどとは太さも藁の量も違います。巻く力も、さらに必要のようです。
 編みあがった部分が、脇の方に、次第に長く伸びていきます。
 
 これをずっと抱えているのも、なかなか大変なようですが、神様に捧げるものなので、最後まで地面に触れさせないのだそうです。
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 頭の部分も、先ほどとは大きさが違います。
 大きな丸い目の玉。2本のヒゲも付けられます(蛇ではなく龍かも知れません)。
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 胴体は、どんどん長く伸びていきます。
 ハサミを入れて形を整えていきます。地元の床屋さんも活躍されていたようです。
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 頭部がつけられて大蛇が完成。みんなで抱えて100メートルほど離れた場所にまで運びます。小さい方の蛇も連れていかれます。 
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 昔は村の入口であったであろう場所に、道路を挟んで2本の大木があります。それぞれ梯子が掛けられ足場が設けられおり、数人が登っていきます。
 作業車のゴンドラには2人が乗り、大蛇を抱えて持ち上げていきます。
 注連縄のように蛇を2本の木に差し渡すのですが、不安定な場所での作業は難しそうです。できあがった時に頭は西(村の外側)を向くようにしなければならないそうで、巻き方、長さなど、下から経験豊富な方たちが次々と指示を出します。
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 保存会の方たち全員の共同作業で、ようやく完成。しっぽの方も、しっかりと結わえられました。
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 掛けられたばかりの大蛇に向かって祭壇がしつらえられ、小さい方の蛇が置かれました。円通寺のお坊様がお経を上げられ、会長さん始め主だった方が焼香。
 これで今年の「下宿ふせぎ」は、無事に終了しました。
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140503_16_convert_20140505083859.png 帰途、改めて大蛇を見上げてみました。
 大きな目の玉が、村の外から入ってくる人を、あるいは病や害虫が入ってこないよう、睨みつけているようです。
 地域の人たちによる年に1度の共同作業による伝統行事は、この地でコミュニティが生き続けていることを示しています。
 私自身、この近隣に30年近く住んでいながら、このような行事があるとは知りませんでした。
 数百年前、この地域の人たちがどのような思いで大蛇を作り始めたのか、疫病や不作がきっかけになったのか、詳しい由来は明らかではないそうです。
 柳瀬川に近いこの辺りでは、かつて稲作が行われていたことも示しています。
 身近な地域に伝統行事が残っていることは嬉しく、歴史や由緒を想像することは楽しみでもあります。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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