F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.049

================================================================

◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇

     No.49; 2014.7/27(日)[和暦 文月朔日]発行

================================================================

 梅雨も明け、723日は一年で最も暑いとされる二十四節季の「大暑」。

26日(和暦・水無月三十日)は夏越の祓(なごしのはらえ)でした。

 一年の折り返し、弱った体と気持ちをいたわり持ち直す時期です。

 

 そして、暦は文月に入りました。七夕(七日)に短冊に詩歌を献じて

祈ったことが語源との説があります。

 時の流れを体感して頂くため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と

十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は文月朔日の

発行です。

—————————————————————-

  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

—————————————————————-

5 フード・マイレージ基礎知識

(12) フード・マイレージ指標の限界-2 (LCA)

 

 フード・マイレージ指標は、地産地消が輸送に伴う環境負荷を低減す

る効果があることを説明する上で、単純で分かりやすい指標である一方、

限界や問題点もあります。

 

 前回は、どのような機関(輸送手段)によって運ぶかによって、輸送

に伴う二酸化炭素排出量は大きく異なるということ、現在の日本の食料

9割以上はトラックにより輸送されており、これを環境負荷の小さな鉄

道や船舶で輸送するよう変更していくこと(モーダルシフト)が重要性

であること説明しました。

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/4_CO2keisu.pdf

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/11_yusou.pdf

 

 今回は、フード・マイレージ指標の限界の2点目を説明します。

 食料(工業製品も考え方は同じです。)は、その生産から包装、流通、

加工、消費、そして廃棄・リサイクルの過程全体を通じて、二酸化炭素

を排出しています。この全ての過程を通した環境負荷を定量的、客観的

に評価する手法を、LCA(ライフサイクルアセスメント)と呼びます。

(フード・マイレージは、輸送の部分のみに着目した指標です。)

 

 そして、そのライフサイクルの各段階における二酸化炭素の排出量を、

カーボンフットプリント(炭素の足跡)と呼びます。

 

 どのようなものか、今回は、まず、一つの試算例をお示しします。

 2010年度『食料・農業・農村白書』においては、北海道のコープさっ

ぽろ(札幌市)によるカーボンフットプリントの算定、表示の取組が紹

介されています(ちなみに、この前段ではフード・マイレージも紹介さ

れています)。

 

 例えば、みそ(規格は500g)の二酸化炭素排出量は合計で564gとなっ

ていますが、その内訳をみると、原材料(生産段階)が47%と最も高く、

次いで店舗(小売段階)34%、工場(加工段階)12%となっており、輸

送(原材料及び製品)は7%程度です。

 さらに加工度が高いほたてピラフの場合は、輸送段階における二酸化

炭素排出量の割合は、全体の2%弱に過ぎません。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/12_CFP1.pdf

 

 このように、食品のライフサイクル全体を通じた二酸化炭素排出量の

の中では、輸送段階における排出量の割合は大きくないのです。つまり、

フード・マイレージ指標に着目して地産地消を心がけたとしても、それ

だけでは「環境にやさしい食生活」の実現には必ずしもつながるわけで

はないのです。

 

 このLCAやカーボンフットプリントの問題は重要なので、次回も説明を

続けます。

 

[参考]

 F.M.豆知識(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 平成22年度『食料・農業・農村白書』

  http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h22_h/trend/part1/topics/t3_01.html

 

—————————————————————-

  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

—————————————————————-

 高田彰一(あきかず)さんという本名は知らなくても、「たかったー」

というニックネームは多くの人に有名です。

 

 本業はコンピュータのプログラム開発等を支援するフリーのシステム

エンジニア。ともすれば無機的なイメージがあるIT業界に身を置く高田

さんですが、その関心は、極めて人間的な「対話」や「コミュニティ」

にフォーカスされています。

 ちなみに高田さんは自称「フローデザイナー」。フローデザインとは、

差異に気づき、そこに余白をつくること。流れが循環を生み、共生をも

たらすそうです。

 

 高田さんが2011年頃から取り組んでいるのが「共奏キッチン」。

 FBの案内文には「どなたでも参加できるオープンなイベント 。みん

なでごはんをつくって語り合いましょう^^」とあります。

 

 都会の真ん中で見知らぬ者同士が一緒に食事を作り、食べ、語り合うと

いう、食を仲立ちとした新たなコミュニティづくりの取組です。

 以前は東京・三田の「三田の家」、現在は自由が丘の「シェア奥沢」を

主な会場として、月1回程度、定期的に開催されています。

(次回は86日(水)夜、シェア奥沢で開催予定。)

 

 その「共奏キッチン」での取組は、現在はより幅広い「共奏」という

コミュニティに発展しています。

 高田さんによると、「共奏」とは、共に奏でるつながりを育むコミュニ

ティ。明確な定義はないそうですが、次の5つの問いにすべて「YES!」と

答えられれば、それは「共奏○○」とのこと。

 

 ・多世代が集う場をシェアしていますか?

 ・分け隔てなくオープンな場をシェアしていますか?

 ・一人ひとりの主体的な参加を促す場をシェアしていますか?

 ・全員が等しく発言できる場をシェアしていますか?

 ・共同体験を大切にする場をシェアしていますか?

 

 2014720日(日)には、東京・品川のコクヨEco Liveoffice で、

「第1回共奏Weekend『きく』から始まる次の一歩。1分プレゼンを共創し

よう!」と題するイベントが開催されました。

 

 午前中はお互いを「きく」ことにフォーカスし、午後はそれぞれの活動

やプロジェクトを伝える1分間のプレゼンテーションを共創し、最後に実際

1分間のプレゼンを行うという内容。

 35名ほどの参加者はお互い初対面という方も多かったのですが、その場

で話し(聞き)合い、グループでアイデアを出し合い、最後には何ともユ

ニークな10組のプレゼン(あるいは寸劇、ダンス、パフォーマンス、模型

作り等)が披露されました。

 

 「『共奏』によって生まれるのは、言葉にはうまくできないけれど、大

切にしたい、分かち合いたいなにか。こんな関係性が広がっていったら、

今ある社会課題の多くは消えてしまうかも? やわらかな余白のある生き生

きとした社会になるかも?

 高田さんは、そんな期待を胸に抱いておられます。

 

参考

 共奏キッチン

 https://www.facebook.com/kyosokitchen

 共奏

 https://www.facebook.com/kyosocom

 第1回共奏Weekend(当日の雰囲気が分かる写真も掲載されています。)

 https://www.facebook.com/events/312726455556547/

 

—————————————————————-

  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

—————————————————————-

ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 「シェア奥沢」1周年
(07/12)

 東京・自由が丘の「シェア奥沢」がオープンから1周年を迎え、オーナ

ーの堀内先生の誕生日と合わせてお祝いの会が開催されました。

  http://food-mileage.jp/2014/07/12/

 

 ふくしまオーガニックコットン・ボラバス2014(第2回)
(07/15)

 NPOJKSK(女性の活力を社会の活力に)主催のボラバスの第2回。

コットン畑の作業とともに、防災緑地事業やオリーブ園の見学も。

  http://food-mileage.jp/2014/07/15/

 

 大山千枚田に行ってきました! (07/20)

 首都圏から最も近い棚田として有名な千葉・鴨川の大山千枚田に初めて

行ってきました。素晴らしい景観と生物多様性。

  http://food-mileage.jp/2014/07/20/

 

「第1回共奏Weekend」から始まる次の1
(07/21)

 東京・品川で開催された一風変わったイベント。ほとんど初対面の方達

が話し合って1分間のプレゼン、寸劇、ダンス等を協創し披露しました。

  http://food-mileage.jp/2014/07/21/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

 〜観て、聴いて、食べて、東北支援〜

  林隆三追悼映画会&津軽三味線&尺八&朗読

 日時:728日(月)15:3021:30

 場所:シェア奥沢(世田谷区奥沢2-32-11

 主催:松井つるみさん

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/336888869797477/

 

 おやこDE子育て&食育講座〜反抗期がやってきた〜

 日時:87日(木)10:0013:00

 場所:ウェルパルくまもと(熊本市中央区大江5丁目1-1

 主催:フード&ライフスタイル協会

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/609380635842922/

 

 共奏キッチン

 日時:86日(水)17:0022:00

 場所:シェア奥沢(世田谷区奥沢2-32-11

 主催:共奏キッチン

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/groups/216738481693888/

 

 フード・マイレージ分科会 Vol.1

 (フード・マイレージ、食の安心、食料自給率やロス等の問題に取り組むために)

 日時:89日(土)15:0018:00

 場所:シェア奥沢(世田谷区奥沢2-32-11

 主催:水谷誠さん

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/684206051649467/

 

 種まきからはじめる 秋そばづくり第1弾「そばの種まき」

 日時:816日(土)11:0020:00

 場所:山梨県上野原市西原(さいはら)

 主催:しごと塾さいはら

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/864411946919983/?ref_dashboard_filter=calendar

 

—————————————————————-

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

* 次号No.50(!)は810日(日)[和暦
文月十五日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

================================================================

 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997

================================================================

  発行者:中田哲也

http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/