F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.051

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇

     No.51; 2014.8/25(月)[和暦 葉月朔日]発行

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 広島市を始めとする豪雨被害の犠牲者の方々にお悔やみ申し上げると

ともに、被災者の皆様にお見舞いを申し上げます。

 

 葉月朔日は八朔(はっさく)と呼ばれ、早稲を神にささげ豊作に感謝

する行事が各地で行われていました。この頃に吹く強風も八朔と呼ばれ、

台風の被害のないことを願うものでもありました。葉月八日(91日)

は立春から数えて二百十日目です。

 時の流れを体感して頂くため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と

十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は葉月朔日の

発行です。

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  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

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5 フード・マイレージ基礎知識

(14) フード・マイレージ指標の限界-2 (LCA-3)

 

 フード・マイレージ指標は、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観

点からは輸送の過程に限定されているという限界があることに関連して、

前回、前々回と、北海道のコープさっぽろ(札幌市)、ニュージーラン

ドの研究者によるカーボンフットプリントの算定事例を紹介しました。

 

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/12_CFP1.pdf

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/13_NZ.pdf

 

 今回は、国内におけるトマトの生産・流通を対象とした研究事例を紹

介します。

 トマトは生産額の面でも、機能性など栄養の観点からも重要な野菜で

すが、栽培に適する温度帯は比較的狭く(暖地以外では温室栽培が必要)、

同時に、生鮮品として流通させるためには低温での輸送が必要という特

徴があります。つまり、生産の優位性を重視するのであれば温暖な地域

の方が有利であり、一方、輸送面を優先するのであれば大消費地近郊で

の生産が望ましいことになります。

 

 環境負荷の観点から、椎名ら(出典は記事末参照)は、生産及び流通

条件の異なるケースを想定して生鮮トマトのLCA分析を行いました。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/14_tomato.pdf

 

 その結果、温室栽培においては暖房器や換気扇の運転など生産段階に

おける二酸化炭素排出量が全体の90%近くを占めていること、暖房を必

要としない(雨よけ栽培が可能な)地域でから遠距離輸送する場合でも

輸送に伴う二酸化炭素排出量は10%強に過ぎないことを明らかにしていま

す。

 このことは、輸送距離を短縮するために東京近郊でトマトを温室栽培

するよりも、南九州等で暖房せずに生産したトマトを長距離輸送した方

が全体の二酸化炭素排出量は小さなものとなることを示しています。

冬場の築地市場におけるトマトの半分は熊本(特に八代地域)産ですが、

このことはLCAの観点からも望ましい姿と言えます。

 

 これまで3回にわたって紹介してきたLCAの事例からは、環境負荷低減

のためといって地産地消を「やみくもに」推進することは望ましいこと

ではないことか明らかとなりました。また、輸送面に限定されているフ

ード・マイレージ指標の限界や問題点も明らかとなりました。

 かといって、フード・マイレージの有用性が、全て否定されるもので

はないと考えます。次回からは、このことについて考えていきたいと思

います。

 

[出典]

 椎名武夫ほか『日本国内で消費される生鮮トマトのLCA

 (第2回日本LCA学会講演要旨集、2007.3

  https://www.jstage.jst.go.jp/article/ilcaj/2006/0/2006_0_49/_pdf

[参考]

 F.M.豆知識(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 2011311日に発生した東日本大震災を忘れないため、毎月11日に

新宿で開催され続けているイベントが「結イレブン−新宿と福島を結ぶ

復興カフェ」です。

 

 会場は、新宿・富久町のダイニングカフェ「結・YUI」。

 福島・いわき出身の根本二郎さん(新宿区議)が、東北の復興のため

の情報発信や交流の拠点として開かれたお店です。

 

 「結イレブン」の主催は「新宿有機マルシェ・すずめの未来市」(み

らいち)。

 主宰の鈴木亮(りょう)さんは1972年の生まれ。ニュージーランドの

大学を卒業後、国際青年環境NGOA SEED JAPAN」の活動に共同代表等と

して関わり、現在は未来生活nowプロジェクトの理事。また、東日本大震

災支援全国ネットワーク(JCN)福島担当として、今は福島にお住まいの

方です。

 

 去る811日(月)は、福島から届いた美味しい野菜料理と飲み物を頂

きながら、鈴木さんのプレゼンに続いて自由な意見交換に。活動をいか

に広げていくかがテーマの一つになりました。

 

 大震災から3年半が経過しました。津波被災地等では多くの問題を抱え

ながらも復興に向けた動きが進んでいるものの、原発事故に関しては、

未だ数万人の人たちが故郷に戻れる見通しが立たないという厳しい状況

は変わっていません。

 ともすれば、被災地への関心が薄れつつある私たちに対して、ふくし

まの復興の「生の声」を伝え、ふくしまの復興に誰でも参加できる道を

拓きたいとの思いで、毎月の結イレブンは開催し続けられているのです。

毎回、福島を訪ねるボランティアツアー等の情報も提供されます(記事

末のリンク参照)。

 

 8月の会でスタッフの若い女性が口にした「支援するという『上から目

線』ではなく、自分たちも主体者の一人として歩み寄り、一緒に未来を

創っていきたい」という言葉に、結イレブンの姿勢と目的が端的に表さ

れていました。

 もっとも、まだまだ「支援」が必要な状況は変わっていません。

 

 次回は911日(木)19時からの予定です。大都会・新宿の一隅に、ふ

くしまと日本の再生を目指す明かりが灯されます。

 

(参考)

 東京有機マルシェ「すずめの未来市」(みらいち)

  http://ameblo.jp/suzumenomiraichi/

 

 ダイニングカフェ「結・YUI

  http://www.geocities.co.jp/yokoze/yui/

 

 ふくしまの有機交流バスツアー(913()14()

  http://www.furusatokaiki.net/event/22688/

 

【訂正】

 前号で吉永鴻一さんを紹介した文章の中、「20117月からは石巻市協

働のまちづくりアドバイザーとして・・・」と記載しましたが、正しく

は「20117月から石巻に滞在して復興支援、2013年度からは石巻市協働

のまちづくりアドバイザーとして・・・」です。お詫びして訂正します。

 

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  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 食と農の会・フードマイレージ等分科会(第1回)
(08/10)

 シェア奥沢(自由が丘)で開催された分科会は、少人数で深い対話が

でき、将来的に「ドキッ」とするものを創り上げていくことに。

  http://food-mileage.jp/2014/08/10/

 

 資本主義は「終焉」するのか−第3回「脱成長」ミーティング− (08/12)

 江戸川橋のピープルズ・プラン研究所で開催された勉強会では、水野

和夫氏のベストセラーを素材に議論が行われました。

  http://food-mileage.jp/2014/08/12/

 

 20148月の福島×新宿復興カフェ「結イレブン」 (08/14)

 毎月11日に新宿「結」で開催されている「結イレブン」。福島の生の

声を伝え復興に参加できる道を開くための復興カフェです。

  http://food-mileage.jp/2014/08/14/

 

 コツコツ小咄 総集編1 (08/19)

 FBに投稿してきた小咄、待望(?)の総集編です。

  http://food-mileage.jp/2014/08/14/

 

 2014経済学を学ぶこと、そして「定常状態」 (08/22)

 齊藤誠先生と池尾和人先生の講演会。齊藤先生は現在の日本経済をラ

ンニングマシーンに例えて「定常状態」と表現されています。

  http://food-mileage.jp/2014/08/14/

 

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 第1回コミュニティスペースフォーラム

  「コミュニティカフェは、いま」

 日時:830日(土)12:5016:10

 場所:高島平区民館ホール(高島平駅西口徒歩3分)

 主催:いたばしコミュニティスペース連絡会

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/640957456011366/

 

 哲学と憲法学で読み解く 民主主義と立憲主義

 日時:831日(日)14:0017:00

 場所:国立市公民館地下ホール(高島平駅西口徒歩3分)

 内容:國分功一郎氏、木村草太氏対談

 主催:国立市公民館

 (詳細、お問合せ等↓(p.3)

  http://www.city.kunitachi.tokyo.jp/dbps_data/_material_/localhost/700000/705000/pdf/dayori20140805.pdf

 

 江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座*入門編

 日時:96日(土)13:0016:30

 場所:JA東京南新宿ビル3F「東京アグリパーク」(新宿駅南口徒歩3分)

 主催:江戸東京野菜コンシェルジュ育成協議会

 (詳細、お問合せ等

  http://edocon831.seesaa.net/article/397119098.html

 

 共奏キッチン

 日時:98日(月)18時頃から

 場所:シェア奥沢(東急・自由が丘駅徒歩5分)

 主催:共奏事務局

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/kyosokitchen

 

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* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

* 次号No.5298日(月)[和暦
葉月十五日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997

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  発行者:中田哲也

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