F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.052

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇

     No.52; 2014.9/8(月)[和暦 葉月十五日]発行

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 カレンダーは9月に。各地で天候不順による豪雨等が続きます。

 東京地方も涼しくなったと思うと暑さがぶり返したり、熱帯性の熱病

が流行ったりと落ち着きません。

 今日、葉月十五日は二十四節季の白露。草に宿った露が白く光るとの

意です。そして今夜は中秋の名月。東京地方の空模様は残念な予報です

が、読者の皆様の地ではいかがでしょうか。

 時の流れを体感して頂くため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と

十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は葉月十五日

の発行です。

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  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

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5 フード・マイレージ基礎知識

(15) フード・マイレージ指標の有用性-1(おさらいと批判)

 

 前回まで、フード・マイレージ指標が有する2つの限界・問題点につい

て述べてきました。おさらいします。

 

 一つ目は、輸送に伴う環境負荷(二酸化炭素排出量)は、輸送機関に

よって大きく異なることです。

 日本における食料輸送の大部分を担っているトラックの二酸化炭素排

出係数は、鉄道や船舶の10倍近くの大きさです。つまり、近くで取れた

食料をトラックで運ぶよりも、少々遠くからでも鉄道や船で運んだ場合

の方が、輸送に伴う環境負荷は小さくなる可能性があります。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/4_CO2keisu.pdf

 

 二つ目は、フード・マイレージ指標はあくまで輸送面に限定されたも

のであるということです。

 食料は、その生産(さらに言えば生産のための肥料や農薬等の資材の

生産も含めて)、加工、包装、流通、消費、廃棄というあらゆる段階

(ライフサイクルの全体)で二酸化炭素を排出しています。これがLCA

(ライフサイクル・アセスメント)やカーボンフットプリントと呼ばれ

る考え方です。

 様々な研究によると、輸送段階のシェアは12割程度。つまり、いく

ら地元で生産された食料であっても、それが農薬や肥料を多用したり、

あるいはハウスで暖房したりした場合には、遠隔地でも、そのようなこ

とをせずに(粗放的に)生産された食料を輸送してきた方が、トータル

としての環境負荷は小さくなる可能性があるのです。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/14_tomato.pdf

 

 このような面を捉え、近年、フード・マイレージが世の中に次第に知

られてきたこともあって、様々な識者から批判が寄せられています。

 

 例えば、

CO2排出量は距離と単純に比例しないという面でフード・マイレージは

いかがわしい。便利なライフスタイルの見直しに目を向けないで横文字

を使って国産野菜を買うことが環境に良いことをしているような幻想を

振りまいている」(農学者の川島博之氏)

 

「輸送の形態や燃料効率を問わずに距離だけで環境に良いの悪いのと語

るのは暴論。国産だから、安全で環境に良いとウソを伝えて消費を

喚起するのはやめるべき」(サイエンスライターの松永和紀氏)

 

 さらには「意味が分からない英語を使って商売にしようとたくらんで

いる人たちの意図もちらつく」(環境評論家の武田邦彦氏)といった極

端なものもあります。

 

 これらは本メルマガで書いてきたことと同じ内容ですが、一方で松永

氏は、「自分たちの食事がいかに海外に支えられているか気付いていな

い多くの人達の関心を集め、生産者を勇気づけるという運動としては大

きな価値がある」とも述べられています。

 

 そのフード・マイレージの指標の「価値」について、次号以降、考え

ていきたいといきます。

 

[参考]

 F.M.豆知識(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 熊本で毎月1回発行されている『ドリ一ム』という同人誌があります。

 

 最新号(2014815日付け)は通算165号ということですので、優に

10年以上にわたって発行され続けていることになります。会員(読者)

100名以上、熊本や九州だけではなく全国におられます。

 

 発行しているのは「ふるさと食農ほんわかネット」。熊本を中心とし

た食や農に関心のある方達のネットワークで、代表の徳野貞雄先生(熊

本大学教授、農村社会学)には、私も熊本在勤・在職中に色々とお世話

になりました。

 熊本赴任直後、その徳野先生から紹介していた頂いた方のお一人が、

当時、同じ職場に勤務していた『ドリーム』編集長の高木正三(たかき

まさみ)さんでした。

 

 食や農に関わる様々な方達のネットワークづくりに取り組んでこられ

た高木さん。2009年に定年退職されてからは、ドリームの編集・発行だ

けではなく、地域活動にもますます熱心に取り組んでおられます。

 また、現在は社会福祉法人「全国重症心身障害児(者)を守る会」の

理事も務められ、厚生労働省の研究会「障害児支援の在り方に関する検

討会」にも委員として参画されています。

 

 毎号、A4 版で20頁ほどもある『ドリーム』の巻頭は高木編集長のコラ

ム。最新号は「P(ピン)P(ピン)とK(コロリ)の間の短縮」との表題

で、平均寿命と健康寿命について取り上げられていました。

 その後は全国各地の会員からの投稿で構成されています。投稿されて

いるのは、例えば自然農法を実践されている生産者の方、農家民宿を経

営されている方、高齢者向け配食サービスに携わっておられる方、弁護

士、福祉関係のNP0代表など。

 住んでおられる地域も様々です。毎回、秀逸な俳句を投稿して下さる

方もおられます。

 

 201495日(金)には、年に一度の「東京ドリーム読者の集い」が

「東京から地域おこし」をコンセプトとする神田・なみへで開催され、

千葉や群馬など関東各地から15名ほどが集いました。

 

 私のように熊本に転勤して会員になった方もおられ、また、比較的高

齢の方が多いのですが、様々な活動に積極的に取り組んでおられる方ば

かりです。

 

 今年は、事務局長として毎月の発送等を担当して下さっている佐藤洋

子さん(通称・ゴーヤー洋子さん)も見えられて、久しぶりの再会を喜

び合った次第。

 ちなみに佐藤さんご自身も、随時、得意の料理や人との交流をテーマ

とした記事を投稿されています。いずれも、じんわりとした暖かさが心

に伝わってくるような内容です。

 

 『ドリーム』は、熊本のみならず全国各地で人の輪を繋ぎ、拡げ続け

ています。高木編集長、佐藤事務局長の手作りによる毎月の『ドリーム』

を、これからも楽しみにしています。

 

 参考

 『ドリ一ム』問合せ先(事務局・佐藤)

  熊本市出水3丁目7-86、メールアドレス yoko-g(アットマーク)camel.plala.or.jp

 

 高木正三さんブログ(タ一坊の愉快な農的生活)

  http://turbo1297.exblog.jp/

 

 ゴーヤー洋子さんブログ
yamaneko 弁当便)

  http://blog.goo.ne.jp/yoko-goya715

 

 「東京ドリーム読者の集い」の様子(拙ブログ)

  http://food-mileage.jp/2014/09/07/

 

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  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 コツコツ小咄 総集編1 (08/19)

 1カ月強にわたってFBに投稿してきた「コツコツ小咄」、お待ちかね

(?)の総集編です。たぶん「2」はありません。

  http://food-mileage.jp/2014/08/19/

 

 経済学を学ぶこと、そして「定常状態」
(08/22)

 八重洲ブックセンターで開催された齊藤誠先生、池尾和人先生の講演

会。齊藤先生の「定常状態」とランニングマシーンの比喩は興味深いも

のです。

  http://food-mileage.jp/2014/08/22/

 

 江戸東京野菜「ツマモノ」の魅力
(08/24)

 江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座の「長老に聞け」シリーズ第4

は、小林五郎先生からの講演と、お約束の美味しい試食!

  http://food-mileage.jp/2014/08/24/

 

 棚田での稲刈り@大山千米田
(09/05)

 千葉・鴨川の大山千枚田は、一面、黄金色の稲穂で埋められていまし

た。この素晴らしい光景は、地元の保存会の皆様の尽力のおかげです。

  http://food-mileage.jp/2014/09/05/

 

 東京ドリーム読者の集い(第7回)
(09/07)

 神田・なみへいで開催された『ドリーム』の東京読者の集い。熊本か

らは編集長と事務局長(名コンビ?)も参加して下さいました。

  http://food-mileage.jp/2014/09/05/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 共奏キッチン♪ 9/8月曜夜(仲秋の名月)

 日時:98日(月)18:0022:00

 場所:シェア奥沢(世田谷区奥沢2-32-11

 主催:共奏事ム局

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1530158157214839/

 

 第16回「全快野菜ちゃん−品川新鮮野菜マルシェ」

 日時:920日(日)10:0015:00

 場所:品川寺(ほんせんじ、品川区南品川3-5-17

 主催:グリーンスマイル

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/294025314117823/

 

 フードマイレージ分科会 Vol.2(フードマイレージ、食の安心、食

  料自給率やロスの問題に取り組むために)

 日時:920日(土)16:0018:30

 場所:シェア奥沢(世田谷区奥沢2-32-11

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/groups/238058786404938/

 

 新潟の棚田へ稲刈りに行こう

 日時:927日(土)9:00928日(日)12:00

 場所:新潟県上越市吉川区大賀集落(東京から4時間弱)

 世話人:八木和美さん、高田あきかずさん

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/685219248233417/

 

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* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

* 次号No.53924日(水)[和暦
長月朔日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997

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  発行者:中田哲也

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