F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.055

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇

     No.55; 2014.10/24(金)[和暦 閏長月朔日]発行

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 和暦とは、太陽と月のリズムを併用した(太陽の周期で季節を、月の

周期で日にちを表す)太陰太陽暦です。月の満ち欠けは12カ月で約354

であるのに対して地球が太陽をめぐる一太陽年は約356日。そのずれを

修正するために、数年に一度、閏月(うるうづき)が設けられます。

 今日は、その閏長月の朔日。

 

 ここ数日、東京地方は冷たい雨の日が続き、冬が訪れたかのような気

配です。

 本メルマガは、時の流れを体感して頂くため、和暦の毎月一日(朔日

=新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

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  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

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5 フード・マイレージ基礎知識

(17) フード・マイレージ指標の有用性-4

 

 前回、よりよい食を求めることが「世直し」につながること、フード・

マイレージ指標は、そのための一つの「よすが」、ツールとなると述べ

ました。

 

 例えば、食品ロスの問題を考えてみましょう。

 毎年、日本で発生している食品ロス(本来食べられるにのに廃棄され

ている食品)の量は、500800万トン(2011年度、農林水産省)。これ

は世界全体の食料援助量の約2倍、日本の米生産量に相当します。

 

 このように大量の食品ロスが発生している背景には様々な要因があり

ますが、その一つは、食べ物を大事にしようという気持ちが失われつつ

あることです。

 

 「もったいない」という言葉があった日本。食べものが豊富に出回る

ようになり、「飽食」時代と言われ、肥満やメタボが社会問題となって

くる中で、食べものを残すことへの罪悪感が薄れがちになるのは、やむ

を得ない面があるのかもしれません。

 

 さらには、食の生産の現場(農業)が遠いものになってしまいました。

 かつては農家出身者も多く、農業は身近なものでした。ところが大量

の人口が都市に集中するようになるのに伴い、自分たちの食べものが、

どこで、誰によって、どのように作られ運ばれてきているのかが、見え

なくなってきたのです。

 

 今や多くの日本人にとって、食べ物とは、スーパーでの棚にパックさ

れて並んでいる一つの商品です。土や泥、汗の臭い、ましてや虫などと

は無縁の、人工的な清潔さが保証されているのです。

 

 このように、消費者の多くには食べものを作っている人の顔が見えな

くなっています。食べものを生産することの大変さなど、想像すること

もできません。

 このことが、食べ物に対する尊敬の念が失われてきている原因ではな

いでしょうか。

 

(この意味で、いたずらに世界の食料が余っていることのみを強調する

一部の論調には、腹立たしささえ覚えます。)

 

 今こそ、離れてしまった「食と農の間の距離」を、再び近づけること

が必要です。

 そのためには、例えば農業を体験することも有効で、学校農園で自分

達が作った野菜は、野菜嫌いの子ども達も食べ残さないそうです。

 

 フード・マイレージとは、輸送量に産地からの輸送距離を掛け合わせた

指標です。が、産地や生産者のことに想像を及ぼす「よすが」となるの

です。産地や生産者を意識することは、安心で、栄養価も豊富な旬の食材

(より良い食)を求めることにもつながります。

 

 また、食の分野を含めて、現代社会は様々な分断が生じています。例

えば消費者と生産者、都会と農村。さらには、同じ地域の中でもコミュ

ニティ機能が失われ、住民たちが分断されつつあります。

 「よりよい食」を求めることは、いわゆる「まち食」の拡がりも含め

て、これら分断を克服すること(世直し)にも通じると思われるのです。

 

 そして言うまでもなく、「より良い食」を求める主体は、貴方自身し

かありません。

 

[参考]

 農林水産省「食品ロス削減に向けて」

 http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/pdf/syokuhin_loss_sakugen.pdf

 

 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」

 http://food-mileage.jp/

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 中村靖彦先生は、1935年宮城・仙台市の生まれ。

 東北大学文学部を卒業後NHKに入局、主に農業や食料の分野を担当され、

社会的反響を呼んだ多くの番組を世に出されるとともに、解説委員とし

て複雑な農業・食料問題を視聴者に分かりやすく解説して下さいました。

 

 1996年には、特定非営利活動法人「良い食材を伝える会」の設立に関

わられ、代表に就任されています。このNPOは、高品質で美味しく安全な

国産農産物や加工食品を発掘し、広く普及させ、次の世代に伝えていく

ことを目的として、ニュースレターの発行や出版等を行うととともに、

定期的に「食材の寺小屋」という勉強会を開催しています(私も2度ほど

フード・マイレージについて話をさせて頂きました)。

 

 2001年にNHK解説委員は退任されましたが、在職中から、米価審議会や

畜産振興審議会の委員、食品安全委員会の初代委員等の公職を歴任され

るとともに、現在も東京農業大学と女子栄養大学の客員教授、日本食育

学会の会長等として活躍されています。

 

 『日本の食糧が危ない』『ウォータービジネス』『狂牛病〜人類への

警鐘〜』(以上、岩波書店)、『シカゴファイル2012』(NHK出版)、

『牛肉と政治不安の構図』『コンビニ ファミレス 回転寿司』(以上、

文芸春秋)など多くの著作もあります。

 いずれも、その時代時代の最先端のテーマを取り上げ、独自の取材と

知見に基いて、読者に分かりやすく問題提起されています。

 

 中村先生の問題意識と指摘は、常に本質を突いた深いものです。

 例えば、東日本大震災の直後に出版された『日本の食糧が危ない』に

おいては、「大災害が世の中を変えた。国内の食料供給についてきちん

と考えておく必要がある。日本をどんな国にしたいのかという議論が必

要。食料について、エネルギーについて、日本にとって真の国益は何か、

悩みながら考えるべき時が来ているように思う」と述べられています。

 さらに「食料の安全保障は、私たち一人一人の心の中にあると思う。

政治家、官僚、企業人、そして消費者それぞれが、今どれだけ農業への

思いを抱いているだろうか。どうやらここに、食料の安全保障の第一歩

があるような気がする」とされています。

 

 その中村先生が、「専門家でない多くの人たちにも農業・食料問題の

ポイントを分かりやすく伝えたい」との思いで、自選著作集「食と農を

見つめて50年」の刊行を始められました。

 20136月刊行の第1巻『いつまでもあると思うな、水と農』を嚆矢と

して、現在、第2巻『コメはコメなり、田は田なり』、第3巻『
種子は世

界を変える』までが刊行済みです。予定されている全6巻が揃えば、これ

までの日本の食料や農業、農政がどのような道を辿ってきたかを再確認・

追体験できる貴重な資料となることが期待されます。

 

 食べものは非常に身近で、かつ一日も欠かせない重要なものです。

 一方、食べもの、あるいはそれを支える農業の問題は、安全性や栄養

など自然科学的な側面、農業技術の面、経済や政治・制度面など社会的

な側面など、非常に幅広い事情が複雑に絡み合っています。

 そのパズルのような問題を、これまで一貫してテレビ番組や著作等に

よって誰にでも理解できるような言葉で解説・問題提起して下さってき

た中村靖彦先生の功績は、非常に大きなものがあります。

 

 今後とも、引き続きご指導を頂きたいと思います。

 

参考

 中村靖彦先生プロフィール(農文協HPより)

  http://www.ruralnet.or.jp/ouen/meibo/104.html

 

 中村靖彦自選著作集 食と農を見つめて50

  第1巻『いつまでもあると思うな、水と食』

  http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=05_54103931/

 

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  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 大山千枚田(千葉・鴨川)での収穫祭
(10/09)

  生憎の雨模様でしたが、大山千枚田で収穫祭(及び前夜祭)が開催

 され、飾り寿司や棚田米で作った日本酒等を頂きました。

  http://food-mileage.jp/2014/10/09/

 

 環境物理学からみた里山資本主義(10/12)

  市民研主催の勉強会では、加納誠先生(東京理科大)から環境物理

 学という自然科学の観点からみたベストセラー『里山資本主義』の読

 み方等について。

  http://food-mileage.jp/2014/10/12/

 

 有機米作り体験会「稲刈り」@埼玉・小川町(10/13)

  台風接近中の曇り空の下での農業体験会、子どもたちはカエルや虫

 達に大喜びまたは大泣き。大釜で茹でた地大豆「大山在来」の枝豆の

 美味しかったこと。

  http://food-mileage.jp/2014/10/13/

 

 「インコンビニエンス・ストア」(10/20)

  市民農園ではコットンが豊作。東京・東久留米の伝統小麦を使った

 柳久保うどん。食と農の会・フードマイレージ等分科会 vol.3では

 「インコンビニエンス・ストア」の仕様とストーリー作り。

  http://food-mileage.jp/2014/10/20/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 種まきからはじめる 秋そばづくり第4弾「そば&大豆の収獲」

 日時:1025日(土)10:10 JR中央線上野原駅前集合)〜17:00

 場所:山梨県上野原市西原

 主催:しごと塾さいはら

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1479903752279779/

 

 ゴマ01 in 檜原村

 日時:1025日(土)9:30(武蔵五日市駅前集合)〜17:00

 場所:東京都西多摩郡檜原村

 主催:グリーンスマイル

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/583614825094004/

 

 クラシック音楽鑑賞会 in シェア奥沢
Vol.4
秋の夕べのブラームス

 日時:1026日(日)16:0020:30

 場所:シェア奥沢(世田谷区奥沢2-32-11

 主催:堀内正弘さん

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/794221087288329/

 

 坂倉杏介さんにきく、学びあう場づくりのこと(ご近所ラボ新橋 対話の場 #2

 日時:1027日(月)18:3021:00

 場所:ご近所ラボ新橋(港区新橋6丁目4-2 きらきらプラザ新橋1F

 主催:ご近所ラボ新橋 × 共奏事ム局

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/363709783792098/

 

 共奏キッチン♪48 自由が丘シェア奥沢

 日時:115日(水)18:0022:00

 場所:シェア奥沢(世田谷区奥沢2-32-11

 主催:共奏事ム局
https://www.facebook.com/kyosocom/info

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1498778073711397/

 

 品川新鮮野菜マルシェ 第18回「全快野菜ちゃん」

 日時:118日(土)10:0015:00

 場所:品川寺(ほんせんじ、品川区南品川3-5-17

 主催:グリーンスマイル

 

 棚田新米おにぎりと物々交換!BBQ 〜焼く材料は現地調達?!〜

 日時:119日(日)10:0017:00

 場所:城南島海浜公園(大田区城南島4-2-2

 主催:我楽田工房(http://garakuta.tokyo/)/地元びいき

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/461645997310107/

 

 「脱成長ミーティング」公開研究会−人口減少と脱成長社会

 日時:119日(日)14:0017:00

 場所:ピープルズ・プラン研究所(有楽町線「江戸川橋」徒歩5分)

 主催:脱成長ミーティング

 (詳細、お問合せ等(高坂勝氏ブログより)

  http://ameblo.jp/smile-moonset/entry-11935028231.html

 

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* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

* 次号No.56117日(金)[和暦
閏長月十五日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997

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  発行者:中田哲也

本ウェブサイト開設の趣旨