置賜自給圏構想

 2014年11月29日(土)[和暦 神無月八日]は、冷たい雨の中、お茶の水へ。
 銀杏並木越しのニコライ堂のドーム、ビルの合間の関東大震災の記念碑等を眺めつつ連合会館に到着頃には、雨は上がり雲の合間から日射しも。
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 15時から開催されたのは東京「TPPに反対する人々の運動」連続講座11月の会
 この日のテーマは「TPPに対抗する置賜自給圏構想の動き」です。
 講師の菅野芳秀(かんのよしひで)さんは、1949年、山形・長井市の生まれ。若い頃は三里塚等での闘いに関わった後、故郷に戻って稲作と自然養鶏中心の農業を営まれています(頂いた名刺には大きく「百姓」とありました)。
 長井市レインボープランや今回の置賜自給圏構想の立役者の方です。
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 定刻を回り、農業ジャーナリストで日刊ベリタ編集長・大野和興さんの司会により開会。
 紹介された菅野さんからは、まず、製作中の『無音の叫び声』の予告編を観て下さい、と上映が始まりました。
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 山形・上山市の農民で詩人でもある木村迪夫さんの姿を追ったドキュメンタリです。 
141129_4_convert_20141202064351.png 菅野さんに促されて、この日、参加されていた原村正樹監督ご自身がマイクを取られ、
 「父親と叔父が戦死した木村迪夫さ んの戦後の歩みを通して、農業の歴史をたどり、反戦や平和ともに、豊かな日本人の精神構造が自然や農業とともにあったことを伝えていきたい」 等と語られました。
 
 続く菅野さんの講演は「8500円の衝撃」という話から始まりました。
 「本年産の米価(概算金)は60kg当たり8500円、加算金等を加えても1万数百円程度にしかならない。これは40年ほど前と同じ水準で、生産原価 (1万6千円程度) を大きく下回っている。
 マスコミは日本の農産物価格は高いと批判するが、この間、新聞代は3倍以上に上がっている。農家は甘やかされている等とマスコミに言われたくない。」
 「原価割れは今年だけではなくここ数年続いており、離農が続出すると言われている。 農地の受け手がいるか心配。長井市にも大規模経営はいくつかできているが、従業員の給与支払いにも苦慮しているような状況。国の政策に沿って規模拡大した農家ほど打撃が大きい。
 工場の海外移転等で兼業機会も減っている。地域ではかつて経験したことのない状況が生まれつつある。コミュニティの崩壊さえ危惧される」とのことです。
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 しかし、菅野さんの話は難局を嘆くことに留まりません。
 「国の政策が悪い、時代が悪いと犯人探しをしても現実は変わらない。
 重要なことは、追い詰められている中で、どんなオルタナティブな提案ができるか。対抗軸を提示できるか。それが今の私たちの責任。
 基本は、地域住民が自ら方向性を決定していくということ。地域の未来に責任を持てるのは、地域に暮らしている人だけ。地域の主人公としての自覚と責任が求められている。」
 そこで出てきたのが「置賜自給圏構想」。
 山形県南部(かつての米沢藩の版図)を一つの自給圏してとらえ、豊かな地域資源を活かした循環型社会の構築を目指す取組です。今年4月に300人を集めて設立総会を開催し、さらに8月には一般社団法人 置賜自給圏推進機構を立ち上げ、現在、8つの部会で具体的な取組が始まっているそうです。
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 菅野さんによると、自給圏構想は長井市のレインボープランの発展型とのこと。
 レインボープランの目的は、単に生ごみをリサイクルするだけ(私はそう誤解していました)ではなく、都市住民と生産者が一体となって、命や健康にしっかりと向き合った土づくり、地域づくりをしていくことだそうです。
 土からできる農作物を食べる人間は「土の化身」であり、健康な土かどうかが問われているとのこと。
 後半は、会場との質疑応答に。
 ともすれば運動は排他的になりがちでは、との質問には、
 「単に反対するだけではなく何かを創り上げていくためには、間口を広くする必要がある。自給圏構想の「呼びかけ人」には、与野党の国会議員を含め、様々な立場の方が参加されている」との回答。
 鉄や海産物も自給できるのか、との質問には、
 「自給圏といっても閉鎖的な社会を考えている訳ではない。米沢藩も最上川の舟運を介して交易していた。地域の資源や文化に目を向け、その重要性と価値を再認識・継承することで、地域を基礎とする新しいモデルを創っていくのが主眼。」
 そして「未来は等身大のものしかなく、自分達で創り出す以外にない。置賜での取組事例を全国に発信していきたい」等と熱く語られました。
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 非常に多くの示唆に富む講演会でした。
 来年度から本格的に活動が始まるという置賜自給圏構想が、一つのオルタナティブなモデルとして、各地に波及していくことが期待されます。
 
 18時を回ってすっかり暗くなった中、久しぶりに神田・なみへいへ。この1年、色々とお世話になった方と合流。
 「東京から地域おこし」をコンセプトとするこのお店、11月の月替わり特集メニューは岩手・一関市と長崎のコラボです。
 いわての地ビールで乾杯。前菜は「かさい君家」のほうれん草のおひたし、ごぼうの山椒揚げ、在来カボチャ「南部一郎」のアヒージョなど。
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 皿うどんがトッピングされた長崎サラダ、一関・館ヶ森高原の豚ステーキ、魚料理は長崎のフグです。
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 喜久盛酒造(岩手・北上市)の日本酒・タクシードライバー等の飲み比べ。メインの鍋料理は長崎おでん。
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 菅野さんの熱い講演に加え、美味しいお酒と食事で、心も身体も暖まった一日でした。
 ちなみになみへいの来月(12月)の特集メニューは、川野オーナーの出身地、青森・津軽だそうです。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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