図17 お米の値段


◆ F.M.豆知識
  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎回少しずつ取り上げていきます。
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6 「食と農」豆知識
(3) お米の値段について
 この秋以来、経済紙や業界紙に「米価暴落、米作農家に廃業の危機」といった見出しが溢れています。
 これは、本年(26年)産の米について、農家がJA(農協)に出荷した際に支払われる仮渡し金(概算金)が、昨年に比べて60kg(1俵)当たり2000~3000円も引き下げられたことを表しています。
 この結果、関東から東北にかけての概算金は、1俵当たり8500円程度になっています。

 今回は、このお米の値段について考えてみたいと思います。
 概算金8500円を1kg当たりにすると約143円です(以下、分かりやすく1kg当たりの値段で説明します)。

 (図17)
 
 これに対して、米生産のために実際に掛かっているコストは全国平均で218円(肥料や農薬等の物財費が150円、労働費が68円)。つまり、お米を1kg生産するたびに、農家は70円ずつ損をしている状況なのです。
 これは、日本の稲作農家の規模が零細で生産性が低いためだと思う方がおられるかも知れません。しかし、作付面積15ha以上という大規模農家でも生産コストは158円(物財費117円、労働費40円)かかっており、現下の概算金水準ではコスト割れになっています。
 「米農家に廃業の危機」というのは、このような状況を指しています。

 もっとも農家には、販売の見通しが立った段階で農協から追加払いがなされます。昨年の農家販売価格は233円でした。これでもコストぎりぎり(平均では利子や地代を支払えば赤字)なのに、今年は概算金が大幅に引き下げられる一方で燃料費等が上昇しているため、農家の間に大きな不安が拡がっているのです。

 今回の概算金引き下げの背景には、民間在庫が大きいことに加え、作
柄が良好と見込まれた(実際には平年並み)という事情があります。
 しかし、より長期的にみると、日本人の米の消費が大きく減少し続け
ているという構造があります(年間1人当たり消費量はここ50年で半減)。
このため、米価水準も長期的に低下傾向で推移しているのです。
 このようにみてくると、日本の稲作に明るい未来は無いかのようにも思われます。

 一方、私たち消費者が買っている米の値段はというと、平均して1kg当たり400円程度です(ホームセンター等ではもっと安いものもあります)。
 この値段には消費地までの運賃や商業マージンが含まれているのですが、もし、これに近い水準で消費者が農家から直接購入することにすれば、農家にとっては生産コストを大幅に上回る値段で売れることになります。
 直販等を通じて消費者と生産者が直接つながることで、生産者は再生産可能な収入が確保でき、消費者は安心感を得ることができます。この辺りに、難局を打開するヒントがあると思われます。

 ちなみに、お茶碗1杯分のお米(65g程度)の値段は約26円。
 これが他の物価に比べて高いか安いか、人によって見方は違うのでしょうが・・・、私は十分に安いと考えています。

[参考]
(農林水産省ホームページ)
 「最近の米をめぐる状況について」(平成26年11月)
  http://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/pdf/261107b_kome_meguru.pdf

 「農業経営統計調査 平成25年産 米生産費」
  http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noukei/seisanhi_nousan/pdf/seisanhi_kome_13.pdf

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

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