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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇
No.58; 2014.12/6(土)[和暦 神無月十五日]発行
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カレンダーは12月。今年も残り1ヶ月を切ってしまい焦燥感にさいな
まれています。和暦ではまだ神無月(10月)半ばと思っても、慰めには
なりません。
明日は二十四節気の大雪(たいせつ)、本格的な冬の到来です。
時の流れを体感して頂くため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と
十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は神無月十五
日の配信です。
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◆ F.M.豆知識
フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎
回少しずつ取り上げていきます。
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6 「食と農」豆知識
(3) お米の値段について
この秋以来、経済紙や業界紙に「米価暴落、米作農家に廃業の危機」
といった見出しが溢れています。
これは、本年(26年)産の米について、農家がJA(農協)に出荷した
際に支払われる仮渡し金(概算金)が、昨年に比べて60kg(1俵)当たり
2000〜3000円も引き下げられたことを表しています。
この結果、関東から東北にかけての概算金は、1俵当たり8500円程度に
なっています。
今回は、このお米の値段について考えてみたいと思います。
概算金8500円を1kg当たりにすると約143円です(以下、分かりやすく
1kg当たりの値段で説明します)。
(図17)
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/17_beika.pdf
これに対して、米生産のために実際に掛かっているコストは全国平均
で218円(肥料や農薬等の物財費が150円、労働費が68円)。つまり、お
米を1kg生産するたびに、農家は70円ずつ損をしている状況なのです。
これは、日本の稲作農家の規模が零細で生産性が低いためだと思う方
がおられるかも知れません。しかし、作付面積15ha以上という大規模農
家でも生産コストは158円(物財費117円、労働費40円)かかっており、
現下の概算金水準ではコスト割れになっています。
「米農家に廃業の危機」というのは、このような状況を指しています。
もっとも農家には、販売の見通しが立った段階で農協から追加払いが
なされます。昨年の農家販売価格は233円でした。これでもコストぎりぎ
り(平均では利子や地代を支払えば赤字)なのに、今年は概算金が大幅
に引き下げられる一方で燃料費等が上昇しているため、農家の間に大き
な不安が拡がっているのです。
今回の概算金引き下げの背景には、民間在庫が大きいことに加え、作
柄が良好と見込まれた(実際には平年並み)という事情があります。
しかし、より長期的にみると、日本人の米の消費が大きく減少し続け
ているという構造があります(年間1人当たり消費量はここ50年で半減)。
このため、米価水準も長期的に低下傾向で推移しているのです。
このようにみてくると、日本の稲作に明るい未来は無いかのようにも
思われます。
一方、私たち消費者が買っている米の値段はというと、平均して1kg当
たり400円程度です(ホームセンター等ではもっと安いものもあります)。
この値段には消費地までの運賃や商業マージンが含まれているのですが、
もし、これに近い水準で消費者が農家から直接購入することにすれば、農
家にとっては生産コストを大幅に上回る値段で売れることになります。
直販等を通じて消費者と生産者が直接つながることで、生産者は再生産
可能な収入が確保でき、消費者は安心感を得ることができます。この辺り
に、難局を打開するヒントがあると思われます。
ちなみに、お茶碗1杯分のお米(65g程度)の値段は約26円。
これが他の物価に比べて高いか安いか、人によって見方は違うのでしょ
うが・・・、私は十分に安いと考えています。
[参考]
(農林水産省ホームページ)
「最近の米をめぐる状況について」(平成26年11月)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/pdf/261107b_kome_meguru.pdf
「農業経営統計調査
平成25年産
米生産費」
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noukei/seisanhi_nousan/pdf/seisanhi_kome_13.pdf
FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html
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◆ オーシャン・カレント −潮目を変える−
食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組
んでおられる方達を紹介するコーナーです。
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山形県で注目される取組が始まっています。その名は「置賜自給圏構
想」。
置賜(おきたま)とは山形県南部の3市5町からなる地域で、江戸時代
の米沢藩(上杉鷹山公で有名)の版図とほぼ重なります。
この地域を一つの「自給圏」ととらえ、豊かな地域資源を生かして産
業を興し雇用を生むことで、内発的発展と循環型社会の構築をめざそう
というものです。
本年4月、星寛治さん(農民・詩人)を始め、大学の学長、生協の代表、
食品加工や旅館業の方、さらには与野党の国会議員等が呼びかけ人となっ
て、「置賜自給圏構想を考える会」の設立総会が300名以上を集めて開催
されました。続いて8月には「一般社団法人電置賜
自給圏推進機構」が
設立されています。
その活動は「地産地消に基づく地域自給と園内流通の推進」「自然と
共生する安全・安心の農と食の構築」「教育の現場での実践」「医療費
削減の世界モデルへの挑戦」を4本柱として、8つの部会を設立し、来年
度からの本格的な活動に向けて具体的な取組が始まっているのです。
構想の立役者が菅野芳秀(かんのよしひで)さんです。
長井市で稲作と自然養鶏を営んでおられる方で、生ゴミリサイクルを
通じて都市住民と農家をつなぎ循環型の地域づくりに取り組む「レイン
ボープラン」の主導者としても著名な方です。
その菅野さんの講演を初めてお聴きしたのは、2014年11月29日(土)
のこと。
レインボープランの発展型でもある自給圏構想の内容について詳しく
お聞きできましたが、特に感銘を受けたのは以下のような部分でした。
「国の政策が悪い、時代が悪いと犯人探しをしても現実は変わらない。
重要なことは、追い詰められている中で、どんなオルタナティブな提
案ができるか。対抗軸を提示できるか。それが今の私たちの責任。
基本は、地域住民が自ら方向性を決定していくということ。地域の未
来に責任を持てるのは、その地域に暮らしている人だけ。地域の主人公
としての自覚と責任が求められている」
なお、「自給圏」といっても閉鎖的な社会を目指すものではありませ
ん。もともと米沢藩も最上川の舟運を介して交易していました。
地域の資源や文化に目を向け、その重要性と価値を再認識・継承する
ことで、地域を基礎とする新しい人間社会の普遍的なモデルを創ってい
くのが主眼のようです。
この置賜のモデルが、広く世界に、未来に提示され、それぞれの地域
の特性を踏まえたかたちで拡がっていくことが期待されます。
[参考]
一般社団法人
置賜自給圏推進機構 ウェブサイト
http://www.okitama-jikyuken.com/
レインボープラン推進協議会ウェブサイト
菅野芳秀氏ブログ「ぼくのニワトリは空を飛ぶ」
http://samidare.jp/kakinotane/
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◆ 情報ひろば
食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各
種イベントの開催情報等をお知らせします。
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▼ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報
○ 江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座(総合コース)第4期
(11/22)
http://food-mileage.jp/2014/11/22/
○ 土とみどりを守る会「晩秋のつどい」(11/24)
http://food-mileage.jp/2014/11/24/
○ グリーンスマイル3周年パーティー(11/28)
http://food-mileage.jp/2014/11/28/
○ 置賜自給圏構想(12/02)
http://food-mileage.jp/2014/12/02/
▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には
必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
○ 種まきからはじめる 秋そばづくり第5弾
「水車挽き
そば打ち体験&冬伏せ」
日時:12月14日(日)9:30(JR上野原駅)〜17:00
場所:山梨県上野原市西原(さいはら)地区
主催:しごと塾さいはら
https://www.facebook.com/events/360241554153321/
○ 白川真澄さん著『脱成長を豊かに生きる』出版記念の集い
日時:12月20日(土)13:30〜17:30
場所:スペースたんぽぽ(千代田区三崎町2-6-2)
主催:研究所テオリア/ピープルズ・プラン研究所/社会評論社
http://www.peoples-plan.org/jp/modules/news/article.php?storyid=456
○ おたがいさま食堂 @ 阿佐ヶ谷市庭スタジオ #020
日時:12月21日(日) 16:30〜21:00
場所:市庭スタジオ(JR阿佐ヶ谷駅徒歩1分)
主催:阿佐谷もちより食堂
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/851973854822882/
○ ミシュカの森2014「涙も笑いも力になる」
日時:12月27日(土)14:00 〜16:30
場所:日比谷コンベンションホール(日比谷図書文化館)
主催:ミシュカの森
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/402447126575586/
○ 市民研恒例のクリスマス会
日時:12月27日(土)14:00〜(実践料理講座)、17:30〜(パーティー)
場所:アカデミー湯島(文京区湯島2-28-14)
主催:市民科学研究室
(詳細、お問合せ等↓)
http://blogs.shiminkagaku.org/shiminkagaku/2014/12/1227.html
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* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方
の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
* 次号No.59は12月22日(月)[和暦
霜月朔日]の配信予定です。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて
頂いています。いつもありがとうございます。
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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
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◆ 発行者:中田哲也
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