フードマイレージ分科会 Vol.4

 2014年12月7日(日)。朝夕の冷え込みは厳しいものの、この日も東京は冬晴れです。
 東京の青空の下ではなかなか想像できないのですが、北陸や北日本、さらには四国では大雪で深刻な被害が出ているとのこと。一方、フィリピンにはこの季節に大型台風が接近とのニュース。
 年々、気候変動が激しくなっているようです。
 東京・自由が丘の「シェア奥沢」へ。
 堀内正弘先生(多摩美術大)が自宅を改装して開設されているシェアスペースです。
 ここで8月以降、開催されてきた「食と農の会・フードマイレージ分科会」も4回目。この日の参加者は(固定化している訳ではありませんが、常連?の)7名です。
 まずは、進行役の「まこちゃん」 さんから、これまでの議論の振り返り。
 食に関わる様々な問題を解決(例えばフードロスを削減)していくためには、1人ひとりの意識と行動が変わっていくことが必要。しかし、大きな声で正論を振りかざすだけでは共感は得られず、世の中が変わらないことも現実。
 であれば、まずは気づきのきっかけとなる「仕掛け」を考えようということで出てきたのが、「インコンビニエンス・ストア」のアイディアです。
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 コンビニは、現在の(少なくとも表面的には)豊かで便利な食生活の象徴です。何しろお金さえ出せば、24時間、好きな食べ物を手に入れることができるのですから。
 一方、コンビニを支える食品流通システムが高度化(規格化、広域化)したため、食べ物がどのように作られているか、どんな人が作っているかが見えにくくなっており、その結果、食べ物に対する感謝の念が失われ、食品ロスの増大につながっているのではないか。
 そこで、コンビニへのアンチテーゼとして、少々不便でも、もっと大事な価値があることに気づくきっかけとなる「インコンビニエンス・ストア」 というものが考えられないか、というのが前回までの話し合いの内容でした。
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 そしてこの日の目的は、「インコンビニエンス・ストア」 のストーリーを創り上げること。
 参加者それぞれから、どんどんイメージやアイディアが出されます。
 例えば、古民家で三和土 (たたき) がある、夕方には閉店する、レジ袋はない、味噌作り等の体験もできる、裏木戸を開けると畑があり野菜等を収穫できる、生ゴミを持って行けば肥料や野菜と交換してもらえる、恐いおばあちゃんがいる、等々。
 スマホをかざすとその商品の来歴が分かるような仕組みを導入してはどうか、との提案も。
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 ところが次第に、リアルなストア開設には多くの課題があることも明らかになってきて、話し合いが行き詰まりかけたところで、堀内先生から出てきた提案が「デモンストレーション映像」を制作してみてはどうか、というもの。
141207_4_convert_20141208005722.png イメージを膨らませた「デモ映像」を制作・公開することにより、マスコミを含めた世の中に訴え興味を持ってもらう。その上で、例えば企画書をコンビニチェーン等に提案するという内容です。
 堀内先生は、大学での研究テーマの一つとして提案できないか検討してみるとも話されていました。
 具体的な方向性が出たことで、フードマイレージ分科会はーつの区切 りに。
 今後は、デモ映像制作に関わっていくだけではなく、過去3回の話合いのなかで出てきた別の課題 (例えば食料消費と環境の関わり、食品ロスの削減等) について、引き続き検討していくことになりました。
 金沢市在住の中村早苗さんに提供頂いた資料「キッチン・マネジメント」も、参考にさせて頂きます。
 また、この日もまこちゃんさん達が軽食を準備して下さいました。玄米ご飯に切り干し大根、高野豆腐、水菜のサラダ、煮物など。おやつは持ち寄り。
 私は自家製のゴマ(市民農園で栽培・収穫し、選別・調製し炊ったもの)を提供。
 自らゴマの選別をしてみたいと言う奇特な方がおられたので、サヤとともに、未分別のものをビニール袋に入れて持参した次第(Nさん、頑張って下さい)。
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 ところで、この秋以来、米価の「暴落」が大きな話題となっています(以下、やや詳しい説明が必要であれば拙メルマガを参照下さい)。
 農協に出荷した際に支払われる概算金が1俵当たり2000~3000円と大幅に引き下げられた結果、関東から東北にかけては平均8500円(143円/kg)程度という水準になっています。
 これに対して、米生産のコストは全国平均で218円(作付面積15ha以上という大規模農家でも158円)で、コスト割れの状況にあります(グラフ参照)。
 販売の見通しが立った段階で追加払いがなされるとはいえ、米生産地帯では、多くの米農家が廃業するのではないかと悲鳴が上がっているのです
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 このように日本の米生産自体が存続の危機にあるのですが、問題は、このような状況を一般の消費者がほとんど知らないということ(私も消費者の1人ですが)。
 ことほどさように、食と農(消費者と生産者)の間の距離は広がってしまっているのです。
 ちなみに、私たち消費者が買っている米の値段は1kg当たり400円程度(お茶碗1杯分だと約26円)。
 この値段には消費地までの運賃等も含まれているのですが、もし、これに近い水準で消費者が農家から直接購入することにすれば、農家にとっては生産コストを大幅に上回る値段で売れることになります。
 広がってしまった食と農の間の距離を再び近づけ、「顔の見える関係」を再構築していくためのきっかけ、仕掛けを少しでも多く作っていくことを目指して、「食と農の会・フードマイレージ分科会」は引き続き活動していきたいと思います。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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