F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.062

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇

     No.62; 2015.2/3(火)[和暦 師走十五日]発行

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 今日は節分、明日は立春です。

 和暦ではまだ師走、年内に新しい春を迎えることになりました。季節

の変わり目には邪気(鬼)が生じると考えられており、それを追い払う

ための伝統行事が行われます。

 時の流れを体感するため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と十五

日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は師走十五日の配

信です。

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  F.M.豆知識

 食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、

あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げて

いきます。

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 今回は「行事食」について。

 私たちの生活の中には、季節ごとの行事やお祝いの日(ハレの日)に、

家族の幸せや健康を願って特別の料理(行事食)を頂くという習慣があ

ります。

 

 ところが近年、これら行事食の習慣は薄れつつあります。

 博報堂生活総合研究所「生活定点調査 1992-2012」によると、正月に

お節料理を食べた人の割合は1992年には87%だったのが、2012年には75

%へと低下しています。

 同様に、同じ時期に七草粥を食べた人は34%から26%に、節分に豆ま

きをした人は55%から44%に、冬至の行事をした人は35%から29%へと

減少しているのです。

 ちなみにクリスマスを祝った人は、2000年代に入って増加傾向です。

 

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/20_nenjugyoji.pdf

 

 ここで話は大きく変わりますが、近年、親などによる子どもの虐待が

深刻な社会問題になっています。

 全国の児童相談所が児童虐待相談に対応した件数は、1992年には

1,372件だったのが2012年には66,701件へと大きく増加し、これまでで最

多となっています。

 

 仮にこれらグラフを重ねてみると、あたかも行事食の習慣が廃れるに

伴って児童虐待が増加しているように見えます。

 両者の因果関係を証明することは難しいでしょうが、家族が一緒に行

事食を頂く機会が減ることが、家族関係を不安定にしている一因となっ

ている可能性は否定できないのではないでしょうか。

 

 ところで、前掲のグラフによると、近年、食べる人が増えている行事

食が一つだけあります。それは節分の「恵方巻」。

 もともと大阪など一部地域での慣習だったのが全国に拡がりつつある

ことをコンビニの商業主義と批判することは簡単ですし、また、恵方巻

を食べたからといって児童虐待が減るわけでもないでしょうが、食文化

や行事食に対する関心が拡がることに、目くじらを立てる必要はないと

思います。

 

[参考]

 博報堂生活総合研究所「生活定点調査 1992-2012

 (注:行事食については「02暮らし向き」カテゴリーにあります。)

  http://seikatsusoken.jp/teiten/

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の分野について、先進的かつユニークな活動に取り組んでお

  られる方達を紹介させて頂いています。

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 京浜急行・北品川駅を降りて北品川商店街(旧品川宿)を南に下ると、

右手に見えてくるのがマルダイ大塚好雄商店です。

 遠くから見ると普通の青果店ですが、近づくと、店頭にある江戸東京

野菜の名前や由来を記した大きなパネルが目を引きます。

 

 ご主人の大塚好雄さんは、店で旬の時期の江戸東京野菜を積極的に扱っ

ておられるだけでなく、江戸東京野菜の普及にライフワークとして取り

組んでおられる方です。

 

 大塚さんが江戸東京野菜に注目するようになったきっかけは、10年ほ

ど前、品川蕪(カブ)という伝統野菜を知ったことでした。一見、細長

くて大根のように見える蕪です。

 

 江戸東京野菜には小松菜、練馬大根など地名がついたものがたくさん

ありますが、自分の住んでいる土地の名前がついた野菜があったことに

大塚さんは驚かれると同時に、現在の品川区には農地自体がなく、品川

蕪という伝統野菜も失われてしまっていることに、残念な思いをされた

そうです。

 

 ところが、同じ種類の蕪(東京長蕪)が東京・小平市で栽培されてい

ることを知った大塚さんは、これを品川で復活・普及しようと決心され

ました。

 早速、種を譲り受け、区内の学校や福祉施設等に無料で配布し、校舎

の屋上や商店街の道路脇のプランター等で品川蕪の栽培を広げる活動を

続けらてこられました。

 学校等にはご自身で足を運び、栽培の指導もされてきたそうです。

 また、地元商店等と連携して、品川蕪を使ったお菓子等を商品化した

り、レストランの食材として使用する取組も進められています。

 

 その品川蕪が地域ですっかり定着し、大きく盛り上がっていることを

実感したのは、20141221日(日)、品川神社の境内で開催された

「第3回品川蕪品評会」に参加した時でした。

 来賓の副区長、国会議員から子ども達まで200名以上で境内は一杯で

す。

 幼稚園、小中学校、児童センター、福祉関連施設、市民農園利用者な

26団体・個人から、形も大きさも様々な品川蕪が出品。文京区や北区

の学校からの出品もありました。

 

 品評会を主催した地域の有志グループ(東海道品川宿なすびの花)代

表でもある大塚さんは、

「品川蕪の種を配って子ども達に育ててもらう取組は6年目になる。せっ

かくなので、みんなで大きな収穫祭をしようと品評会を始めた。順位づ

けが目的ではなく、野菜を育てることの楽しさ、食べ物への感謝の気持

ちを伝えていきたい」とご挨拶。

 

 始終子ども達に囲まれ、本当に嬉しそうな大塚さんの笑顔が印象的で

した。

 

 品川では、大塚さんと仲間の皆さんが播いた種によって、伝統野菜を

通じた地域づくりや食育の取組が拡がっています。

 

(参考)

 マルダイ大塚好雄商店

 http://kitahon.jp/shops/ms/128/

 

 野菜をめぐる新しい動き・伝統野菜の実力(農林水産省広報)

 http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1002/spe2_02.html

 

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 「共奏キッチン50th スペシャル
(01/20)

  http://food-mileage.jp/2015/01/20/

 

 本屋さんで聴く民謡の夕べ−「百姓一揆」コンサート− (01/22)

  http://food-mileage.jp/2015/01/22/

 

 銀座農業政策塾・第4期がスタートします。 (01/23)

  http://food-mileage.jp/2015/01/23/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

「選べる豊かさ」から「責任をもつ生き方」へ

 日時:201527日(土)13301530

 場所:ふくしまオルガン堂
下北沢(京王井の頭線下北沢駅下車徒歩12分)

 講師:浅見彰宏さん

 (喜多方市在住、ひぐらし農園主宰、福島県有機農業ネットワーク理事)

 主催:NPO法人コミュニティスクール・まちデザイン

  http://cs-machi.com/?p=1786

 

 うおこう寄席「文菊の会」

 日時:29日(月)19:00

 出演:古今亭文菊さん

 場所:うおこう(杉並区高円寺北2-22-8

 主催:魚料理うおこう

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1398624020438624/

 

 しごと塾さいはら「わらじづくり&味噌作り」

 日時:27日(土)10:10 JR上野原駅集合〜8日(日)

 場所:山梨・上野原市西原地区

 主催:しごと塾さいはら

 (詳細、お問合せ等)

  http://shigotojyuku-saihara.jimdo.com/

 

 新宿と福島を結ぶカフェイベント「結イレブン」

 −東京×福島・次の一歩〜アースデイ東京2015で集まろう−

 日時:211日(水・祝)18:0020:30

 場所:A SEED JAPAN(新宿区新宿5-4-23

 主催:ゆうき
ひろがる

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1545972298998502/

 

 第13回も・の・が・た・り展−テーマ「ビ————-ム」

 日時:211日(水)〜15日(日)

 場所:目黒区美術館
区民ギャラリー(JR目黒駅から徒歩10分)

 主催:NPO法人
子ども未来研究所

 (詳細、お問合せ等

  http://www.cof.or.jp/event.html

 

 南相馬EXPO×首都圏学生ツアー

 日時:214日(土)7:0015日(日)19:00、東京発着

 場所:福島県南相馬市

 (大学生であれば、どなたでも参加できます。)

 主催:ランドブレイン株式会社(南相馬市事業受託者)

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1401358606827678/

 

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*「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない。」

  宮沢賢治(けんじ)『農民芸術概論綱要』にある一文です。

  フリージャーナリスト・後藤健二(けんじ)さんの志にも通じると

 ころがあるかも知れません。自分なりに引き継いでいきます。

  I am Kenji.

 

* 次号No.63は、219日(木)[睦月朔日]の配信予定です。

  和暦でも、いよいよ年が明けます。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997

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  発行者:中田哲也