F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.063

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇

     No.63; 2015.2/19(木)[和暦 元旦]発行

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 明けましておめでとうございます。和暦でも新年を迎えました。

 睦月(むつき)とは、睦み合い、和する心をともに確認する月という

意味だそうです。また、今日は二十四節気の「雨水」(うすい)。雪が

雨に変わり、氷が溶け始め、農耕の準備が始まります。

 

 時の流れを体感するため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と十五

日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は睦月朔日(元旦)

の配信です。

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  F.M.豆知識

 食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、

あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げて

いきます。

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 今回は、再びお米を取り上げます。

 主食と呼ばれるお米ですが、1人当たりで1年間にお米に対して支出し

ている金額はどの位でしょうか。

 今回は、消費量と価格に分けて、その推移をみてみます。

 

 年間1人当たりの米消費量(供給純食料)は、1962年の117kgをピーク

に減少傾向で推移しており、1978年の時点では82kgでした。それが2010

年には60kg弱にまで減少しています

(下記リンク先のグラフの1番上の緑の折れ線)。

 

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/21_hituyoujikan.pdf

 

 一方、米の小売物価(2kg当たり)は、1978年の806円から上昇基調に

ありましたが、前年が戦後最悪の不作であった1994年(1232円)をピー

クに低下傾向に転じ、やはり不作の影響を受けた1993年にはいったん上

昇(921円)したものの、2010年は696円まで低下しています

2番目の青色の折れ線)。

 

 その結果、年間1人当たりの米に対する支出額(量×価格)も、この間、

ほぼ一貫して減少傾向で推移しており、1978年の65,770円から2010年に

41,388円へとなりました(オレンジ色の折れ線)。

 

 次に、この米を買うために必要な労働時間を計算してみます。

 赤い折れ線が最低賃金です(1時間当たり、全国加重平均)。1978年の

時点では315円だったのが一貫して上昇しており、2010年は730円となり

ました。

 

 そして、水色の棒グラフが、米を購入するために必要となる年間労働

時間(米に対する年間消費額÷最低賃金)です。1978年の時点では209

間(約26日)だったのが、2010年には57時間(約7日)へと、約4分の1

減少しているのです。

 

 もっとも、今回のグラフをもって、働く人にとって食生活に対する負

担が減少していると、単純に一言えるものではありません。

 米の消費が減少した分、肉類や油脂、あるいはそう菜や弁当(いわゆ

る「中食」)に対する支出額は増加しています。また、そもそも最低賃

金の水準自体が適正かどうかという議論もあることにも、留意が必要で

す。

 

[参考]

 農林水産省「食料需給表」

  http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/zyukyu/index.html

 総務省「小売物価統計」

  http://www.stat.go.jp/data/kouri/doukou/3.htm

 厚生労働省 最低賃金関係資料

  http://pc.saiteichingin.info/

  http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/09/s0921-8g.html

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の分野について、先進的かつユニークな活動に取り組んでお

  られる方達を紹介させて頂いています。

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 浅見彰宏(あさみあきひろ)さんは1969年千葉県の生まれ。

 大学を卒業し大手鉄鋼メーカーに就職、主に鋼材の輸出業務に携わっ

ておられましたが、次第に農業に対する関心が強くなり、消費型ライフ

スタイルへの疑問も高まって退社されました。

 埼玉・小川町の有機農家・金子美登さん(霜里農場)の下で1年間研修

した後、1996年、福島・喜多方市山都町に移住し新規就農されました

(ひぐらし農園を主宰)。

 

 以来、地域の自然循環に重視する有機農業(稲作、野菜、採卵鶏の小

規模有畜複合経営)を経営されているほか、農閑期の冬季は地元の酒蔵

で働いておられ、また、NPO法人福島県有機農業ネットワークの理事

(事務局長)も務めておられます。

 

 浅見さんが就農された地区には、本木上堰(もときうわぜき)という

水路があります。

 江戸時代の中期に12年かけて開削された延長6kmに及ぶ素掘りの水路で、

地域の農業生産のみならず、棚田等の景観や、生物多様性を含む環境を

維持するために不可欠な水を供給し続けてきました。

 

 ところが、過疎と高齢化が進行する中、この維持管理が次第に困難に

なりつつありました。そこで浅見さんは、地域の方達と協力して、もっ

とも重労働である春の堰さらいのためのボランティアを募ることとした

のです。

 初年度は7名だったのが、15年を経て最近は毎年50名ほどが参加してい

るとのこと。

 

 このような交流活動は、都会の人に中山間農村の現状を理解してもら

うだけではなく、逆に、地域の宝を都会の人から教えてもらうという効

果もあるそうです。

 

 そして、この取組が15年間続いてきたのは、地域の担い手、都会のボ

ランティアなど、目的と価値観を共有するコミュニティが創られている

ため、と浅見さんは分析されています。

 

 また、4年前の東日本大震災と原発事故は、改めて、福島で農業を続け

ることの意味は何かという問いを突き付けたそうです。

 浅見さんによると、農家は耕し続けることで、農地だけではなく、地

域社会や周囲の環境を未来の世代に引き継いでいく。農業には、社会の

基盤そのものを作り上げていくという社会的役割があるとのことです。

 

 浅見さんのご著書『ぼくが百姓になった理由』(2012、コモンズ)の最

後には、ひぐらし農園の信条が以下のように掲げられています。

 

 「ひぐらし農園のめざす農業は『未来を拓く農業』でありたい。その

ためには、社会性があり、永続的であり、科学的であり、誠実であるこ

と。そして、排他的であってはならない」

 

(参考)

 ひぐらし農園のその日暮らし通信(浅見彰宏さんブログ)

 http://white.ap.teacup.com/higurasi/

 

 浅見彰宏さん著『ぼくが百姓になった理由−山村でめざす自給知足』

 http://www.commonsonline.co.jp/bokugahyakusyou.html

 

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 菌ちゃん食育セミナー「おいしい元気を食べよう育てよう」(02/01)

  http://food-mileage.jp/2015/02/01/

 

 オーガニックな食と思想−フード左翼とフード右翼− (02/06)

  http://food-mileage.jp/2015/02/06/

 

 浅見彰宏さん「『選べる豊かさ』から『責任をもつ生き方』へ」 (02/08)

  http://food-mileage.jp/2015/02/08/

 

 「みんな独り」な東京で、動き出した、ゆるやかな解決 (02/13)

  http://food-mileage.jp/2015/02/13/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 会津留学・冬の会津を体験するツアー

 日時:2015221日(土)〜22日(日)(希望により延長可)

    13:40 JR磐越西線山都駅集合

 場所:会津留学・上藤沢ゲストハウス(福島県喜多方市山都町)

 主催:あいづ耕人会

 (詳細、お問合せ等

  http://white.ap.teacup.com/higurasi/html/wv.pdf

 

 ボランティアの始め方 誰かのためにあなたが出来ること!

 日時:2015221日(土)14:0016:00

 場所:SOL BIANCA(渋谷区桜丘町8-17 シャレー渋谷 A 2F 203

 主催:SOL BIANCA

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/897275160322649/

 

 杉本鉞子『武士の娘』を手掛かりに異文化交流を考える会(第2回)

 日時:222日(日)15:0017:00

 場所:東京都・JR田町駅近く

   (参加を希望される方は前日までにメールで連絡下さい。)

 主催:中田哲也

 (参考)

  http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480027825/

 

 「福島第一原子力発電所」視察講演会

 日時:228日(土)13:0015:30

 場所:両国回向院
念仏堂1階(墨田区両国2丁目8-10

 主催:AFWAppreciate FUKUSHIMA WorKers

 (詳細、お問合せ等

  http://a-f-w.org/

 

 新酒と郷土料理を楽しむ会

 日時:228日(土)15:3018:00

 場所:吉川スカイトピア遊ランド(新潟県上越市吉川区坪野1458

 主催:吉川観光協会

 (詳細、お問合せ等

  http://yuuland.jp/archives/3211

 

 たねと食のおいしい祭り Vol.3

 日時:31日(日)12:00

 場所:カフェスロー(東京・国分寺市東元町2-20-10

 主催:たねと食のおいしい祭実行委員会

 (詳細、お問合せ等)

  http://www.cafeslow.com/tane/

 

 福島で農地の放射能汚染と取り組む野中昌法氏の報告

 日時:31日(日)13:30 16:40

 場所:東京ボランティア・市民活動センター(JR飯田橋駅徒歩2分)

 講師:野中昌法教授(新潟大学大学院技術経営研究科)

 主催:現代技術史研究会 M分科会

 (詳細、お問合せ等)

  http://www.commonsonline.co.jp/column-event.html

 

 東日本大震災を忘れない311のつどい

 日時:311日(水)18:45

 場所:新宿区立新宿文化センター小ホール(新宿区新宿6-14-1

 主催:「東日本大震災を忘れない311のつどい」実行委員会(根本二郎委員長)

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/photo.php?fbid=786342811437207&set=a.786342708103884.1073741954.100001844867647&type=3&theater

 

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* 「2015年が始まったと思ったら、和暦でも、あっという間に元旦ね」

  「旧(急)正月だからね」

 

* 次号No.64は、35日(木)[睦月十五日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997

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  発行者:中田哲也