脱成長ミーティング「置賜自給圏構想」

 めっきりと日も長くなり、春めいてきました。
 桜の季節を先取りし、自宅近くに借りている市民農園の一画はナズナやホトケノザが満開です。
 テントウムシやカメムシ(!)の姿も。昨年はこのカメムシ(ナガメ)に完敗でしたが、今年は何とかリベンジしたいところ。
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 2015年3月21日(土)は春分の日。東京・文京区の江戸川橋に向かいました。
150321_1_convert_20150322103011.png この日、ピープルズ・プラン研究所(PP研)で開催されたのは、第6回「脱成長ミーティング」公開研究会。
 拡がりつつある「脱成長」(=経済成長至上主義からの脱却)をめざす思想・理論や実践から学びつつ、脱成長社会の構想をより魅力的で説得力のあるものに練り上げるために、数カ月に一度、公開の勉強会が開催されています。
 この日のテーマは「地域農業を中心とした地域づくり-置賜自給圏構想を中心に」。
 講師の菅野芳秀(かんの・よしひで)さんは、山形・長井市で農業(水田4ha、養鶏千羽)を営まれつつ、地域づくりのリーダーとして活躍されている方です。
 菅野さんの話は、レインボープランの説明から始まりました。
 レインボープランとは、市民が分別した家庭の生ごみを堆肥化し、農地に還元するという取組。消費者、生産者、行政が「ともに」参加する地域循環の取組が、20年ほど続いているそうです。
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 取組を始める前は、市街地の市民にとって田畑は単なる「景色」だった。生ゴミを資源として活用することで、台所が農地とつながり、農と食と暮らしの新しい豊かな関係が築かれる。これを支える理念が「土はいのちのみなもと」。
 直売所の開設、学校給食への食材供給、買い物困難者への配達など様々な取り組みに発展し、全国あるいは世界から多くの視察者を集めてきましたが、現在、直面する課題も多いとのことです。 
 その発展型が、置賜自給圏構想とのこと。
 置賜(おきたま)地方とは、山形県南部の3市5町からなり、旧米沢藩(上杉氏)の版図とほぼ重なる地域。
 ここで、農業や自然環境と、それを基礎とした新しい人間関係のモデルを築き、広く世界、未来に示していこうとするものが「置賜自給圏構想」とのことです。 
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 構想を立ち上げるに当たって菅野さんが心を砕いたことの一つは、間口をどこまで拡げられるかということだったそうです。
 そして2014年4月、星寛治さん(農民・詩人)、大学の学長、高校の校長先生、旅館の方、生産者団体、生協、旅館関係者、与野党の国会議員等を呼びかけ人に「置賜自給圏構想を考える会」が300人の参加の下に開催され、8月には「一般社団歩人 置賜自給圏推進機構」が発足。
 「食と農」「再生可能エネルギー」「森林と住」「教育と学び」を柱として、8つの分科会が設けられ活動が始まっているそうです。
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 構想に寄せられた「現場の声」も紹介して下さいました。例えば、
 「地域経済の退潮はどうにもならないところまで来ている。置賜は置賜でなんとかすべき」
 「地域だって自分たちが生き残っていく方法を自分達で考えながらやっていくことが大事」
 「日本の食をどうするかなんてわからない。だけど、わが家、地域の食なら何とかできる」
 「いま、農業を守ることは村を守ること、地域、消費者住民の食といのちを守ることと一つのことだ」
 最後に、都会の人たちがこのように議論を続けてくれているこは助けになる。せひ、多くのヒントを頂きたい。
 同時に、勉強ばかりではなく、現場の人々と寄りそい実践とつながっていくことが重要、と訴えられました。
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 後半は、約30名の参加者との間で質疑応答と意見交換。
 東京在住者ばかりではなく、長野から来られた農家の方などもおられます。
150321_6.png なぜ置賜地方でこれら地域づくりの取組が進んでいるのか、と問われた菅野さんは、参加されていた大野和興さん(日刊ベリタ代表・編集長)に話を振られました。菅野さんとも、様々な活動に取り組んでおられる方です。
 大野さんによると、
 「まずは菅野さんの個性。押しが強く弁も立ち、リーダーとしての魅力がある。もうひとつは置賜地方の地域特性。豊かな自然、風土を背景に多くの文学者を輩出するなど『百姓の文化』が花開いている。このような文化の形は地域ごとに違うが、どこにでもある。
 自給圏構想は、自給という国家の概念を地域のものに転換した画期的な取組み。地域主権を考えるための思想、運動であり、『静かな革命』とも言える」とのことです。
 しかし、菅野さんのような優れたリーダーにとっても、地域づくりはおよそ簡単なものではないようで、
 「地域づくりはストレスが多く、徒労感も大きい。その中で新しい教訓を得ていくしかない」と語っておられました。
 見地で起こっていることは、頭で考えているのとは全く異なることが、菅野さんの話からはよく分かりました。
 この日は、本ブログでも紹介できないようなエピソードも率直に語って下さいました。ネット等には乗せられない「ここたけの話」の中にこそ、本当に知りたい真実があります。
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 菅野さんは、ご自身のブログ「ぼくのニワトリは空を飛ぶ」でも積極的に情報発信されていますが、機会があれば、ご本人の話を直接聞かれることをお勧めします。
 私は、菅野さんの講演をお聞きしたのは昨年11月に続いて2回目でしたが、改めて、そのお人柄や迫力(地域づくりにかける気概等)に圧倒される思いでした。
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 この日の研究会は13時から17時までと長丁場でしたが、あっという間に時間は経過。
 菅野さんや大野さんを交え、主催者の皆さん何人かで近くの蕎麦屋に行かれるというので、厚かましくも同席させていただいた次第。
 ちなみに置賜自給圏構想は、現在のところ会員の会費を中心に運営されているとのこと。
 趣旨に賛同される方は、どなたでも入会できるそうです(入会方法はこちら)。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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