図27 食料への支出額の増減率(世帯主年齢別)


◆ F.M.豆知識
 食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げていきます。
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 本コーナーでは、ここ数回にわたり、近年、エンゲル係数(消費支出に占める食料費支出の割合)が上昇しつつある状況についてフォローしてきています。
 そしてこれまで、その背景には、デフレの影響下で家計の消費支出全体が伸び悩んでいる中で食料費に対する支出が増加していること、また、輸入に依存している食料品の価格が上昇している状況等を紹介してきました。

 さらに前回は、エンゲル係数上昇の背景には、私たちの食生活パターンの変化があるのでは、という問題を提起しました。
 つまり、食生活の「欧米化」(米や魚介類への支出減、肉類や油脂への支出増)と「外部化」(調理食品や外食への支出増)です。

 今回は、このような食生活パターンの変化が、どのような世代で起こっているかという観点からアプローチします。

 エンゲル係数がこの年を底に上昇に転じた2005年と、直近年(2014)年との間で、家計(2人以上の世帯)における品目別の支出額がどのように増減したかを、世帯主の年齢階層別にみたグラフが図27(リンク先)です。

 なお、これは世帯主年齢別のデータであり、年齢階層別の食料消費支出と全く同じではないのですが、下に参考としてつけた年齢階層別の世帯人員数のグラフを見ると、世帯主の年齢が若いほど家族も若く、世帯主が高齢であるほど家族も高齢者である割合が多くなっています。

 さて、品目別の増減率(図の上半分)です。
 食生活の「欧米化」「外部化」は、比較的若い世代を中心に進んでいるのではないかと想像していたのですが、このグラフは、むしろ高齢者世帯において、肉類や油脂、調理食品や外食に対する支出増が大きく増加していることを示しています。
(もっとも肉類等は、高齢者世帯ではもともとの支出額が小さかったために増加率が大きくなっているという事情はあります)。

 なお、米に対する支出額は全ての世代において減少しています(以前に説明した米価格の低下が背景にあります。)が、魚介類については、高齢者世帯では減少の程度は小さくなっています。

 以上のように、食生活の欧米化・外部化は、高齢世帯においてより大きく進んでいるのです
 このことは、高齢化が進む将来の食料消費の姿を予測する上で(需要に対応した農業生産を実験していくという面でも)大きな示唆を含んでいると思われます。

[参考]
 総務省『家計調査(家計収支編)』(2人以上の世帯、詳細結果表、 2014年)
  http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001129409

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

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