F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.069

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信 ◇◆◇

     No.69; 2015.5/18(月)[和暦 卯月朔日]発行

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 和暦では卯月(うづき)に入りました。

 21日(木)は二十四節季の「小満」(しょうまん)。立夏から半月が

過ぎ、草木の勢いが増すなど、陽気が天地に満ち満ちてくる季節です。

 先日は季節外れの台風が日本に接近。箱根の火山活動などもあり、自

然のリズムが崩れ始めているのかと不安感が高まります。

 

 時の流れを体感するため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と十五

日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は卯月朔日の配信

です。

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  F.M.豆知識

 食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、

あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げて

いきます。

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 本コーナーでは、ここ数回にわたり、近年、エンゲル係数(消費支出

に占める食料費支出の割合)が上昇しつつある状況についてフォローし

てきています。

 そしてこれまで、その背景には、デフレの影響下で家計の消費支出全

体が伸び悩んでいる中で食料費に対する支出が増加していること、また、

輸入に依存している食料品の価格が上昇している状況等を紹介してきま

した。

 

 さらに前回は、エンゲル係数上昇の背景には、私たちの食生活パター

ンの変化があるのでは、という問題を提起しました。

 つまり、食生活の「欧米化」(米や魚介類への支出減、肉類や油脂へ

の支出増)と「外部化」(調理食品や外食への支出増)です。

 

 今回は、このような食生活パターンの変化が、どのような世代で起こっ

ているかという観点からアプローチします。

 

 エンゲル係数がこの年を底に上昇に転じた2005年と、直近年(2014

年との間で、家計(2人以上の世帯)における品目別の支出額がどのよう

に増減したかを、世帯主の年齢階層別にみたグラフが図27(リンク先)

です。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/27_nenrei.pdf

 

 なお、これは世帯主年齢別のデータであり、年齢階層別の食料消費支

出と全く同じではないのですが、下に参考としてつけた年齢階層別の世

帯人員数のグラフを見ると、世帯主の年齢が若いほど家族も若く、世帯

主が高齢であるほど家族も高齢者である割合が多くなっています。

 

 さて、品目別の増減率(図の上半分)です。

 食生活の「欧米化」「外部化」は、比較的若い世代を中心に進んでい

るのではないかと想像していたのですが、このグラフは、むしろ高齢者

世帯において、肉類や油脂、調理食品や外食に対する支出増が大きく増

加していることを示しています。

(もっとも肉類等は、高齢者世帯ではもともとの支出額が小さかったた

めに増加率が大きくなっているという事情はあります)。

 

 なお、米に対する支出額は全ての世代において減少しています(以前

に説明した米価格の低下が背景にあります。)が、魚介類については、

高齢者世帯では減少の程度は小さくなっています。

 

 以上のように、食生活の欧米化・外部化は、高齢世帯においてより大

きく進んでいるのです

 このことは、高齢化が進む将来の食料消費の姿を予測する上で(需要

に対応した農業生産を実験していくという面でも)大きな示唆を含んで

いると思われます。

 

[参考]

 総務省『家計調査(家計収支編)』(2人以上の世帯、詳細結果表、

 2014年)

  http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001129409

 

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント 潮目を変える

  食や農の分野について、先進的かつユニークな活動に取り組んでお

 られる方達を紹介させて頂いています。

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 都心から20分ほど、閑静な住宅地が広がる小金井市は、江戸東京野菜

で町づくりに取り組むなど、多彩な都市農業が行われている地域として

も有名です。

 また、この地にある都立小金井公園や玉川上水は、いずれも古くから

の桜の名所ですが、この間に、東西に通じるさほど広くない生活道路が

あります。近隣には江戸時代から続く農家も多く、11か所もの直売所が

軒を連ねています。

 

 ここを「小金井
江戸の農家みち」と名付け、地場野菜等の地産地消を

進め、屋敷林や蔵など昔ながらの風景を残し情報発信していくことで、

この地域の素晴らしさを多くの人たちに知ってもらいたいと活動されて

いるのが「小金井
江戸の農家みちの会」の方達です。

 

 会では、その日の直売所に並んでいる野菜の種類、季節の風景、近隣

で行われるイベント等の情報をフェイスブックで発信されているほか、

地域の生産者をはじめ、飲食店、お菓子屋さん、アーティスト等と連携

しつつ、様々なイベントを企画・実施されています。

 

 去る510日(日)には、その一つ、「物語屋と歩く農家みちツアー」

に参加させて頂きました。

 初夏の好天の下、江戸の面影をしのびつつ農家みちを歩き、野菜の収

穫体験を楽しみ、最後はお洒落なカフェで、見てきたばかりのお稲荷さ

んや屋敷林が登場する「物語」を聞かせて頂きました。

 

 また、524日(日)までの間は、小金井の野菜をより多くの人に食べ

てもらいたいと「農家みちバーガーフェスティバル」を実施中です。

農家みちの野菜を使ったオリジナルのハンバーガーを、連携している市

内の飲食店で頂くことができます。

 

 「小金井 農家みちの会」の中心となって活動されているのは、木版画

家と、料理教室等を通じて江戸東京野菜の普及に努めておられる2人の女

性。

 お2人のみずみずしい感性に基づく新しいタイプの地産地消と地域づく

りの取組に、これからも注目していきたいと思います。

 

[参考]

 今日の直売所の野菜たち【小金井
江戸の農家みち】

 https://www.facebook.com/koganei.edononoukamichi

 

 農家みちバーガーフェスティバル(59日(土)〜24日(日))

 https://www.facebook.com/events/400593633447001/

 

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 いざ!開墾!檜原村の東京ゴマ01畑へ行こう! (05/01)

  http://food-mileage.jp/2015/05/01/hino/

 

「身の丈の経済」について (05/03)

  http://food-mileage.jp/2015/05/03/

 

 新酒(自然酒)を楽しむ会 @ 埼玉・小川町 (05/07)

  http://food-mileage.jp/2015/05/07/

 

 5th スローマーケットきよせ (05/09))

  http://food-mileage.jp/2015/05/09/

 

 ご近所ラボ新橋「オープン・ラボ2015 (05/10)

  http://food-mileage.jp/2015/05/10/

 

 物語屋と歩く農家みちツアー @ 東京・小金井 (05/14)

  http://food-mileage.jp/2015/05/14/

 

 20155月の「結イレブン」@ 新宿 (05/15)

  http://food-mileage.jp/2015/05/15/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 ジャガイモ畑の土寄せ、大豆の種まき&川掃除

 日時:523日(土)9:2024日(日)17:20

 場所:山梨・上野原市西原(さいはら)

 主催:しごと塾さいはら

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/910455139011449/

 

 第22回全快野菜ちゃん

 日時:523日(土)10:0015:00

 場所:品川寺(品川区南品川3丁目5-17

 主催:グリーンスマイル

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1401356740190300/

 

 2015年度 日本フードシステム学会大会

 日時:530日(土)〜31日(日)

 場所:東京農業大学(東京都世田谷区)

 主催:日本フードシステム学会

 (詳細、お問合せ等

  https://www.fsraj.org/taikai/2015/

 

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* 今号のコツコツ小咄。

「無事に台風が過ぎたね」

「サザエさんを思い出すわ」

「えっ、何で?」

「一過(一家)の様子に、ほっとするもの」

 

* 次号No.70は、61日(月)[卯月十五日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也