2015年7月11日(土)。福島・広野町でのJKSK 車座交流会の2日目も、快晴です。
遠藤町長さんは6時過ぎ、私たちに丁寧に声を掛けて下さってから県内出張に出掛けられました。
改めて明るい日の中で見ると、大きなお屋敷です。庭には一匹の飼い犬。
奥さまと奥さまのお母様が、メヒカリの唐揚げ、タコの刺身、ご自宅の菜園から摘んでこられた野菜のサラダ等の朝食を準備して下さいました。ご馳走様でした。
集合場所の総合体育館まで奥さまに送って頂きました。民泊明けの参加者の皆さん、それぞれのお宅で貴重な時間を過ごされたようです。
バスに乗り込みます。この日の午前中のプログラムは、広野町内における復興や街づくりの現場の見学ツアーです。
町議の門馬まりえさんがマイクを取って案内して下さいます。長く保健士として活動され、現在も帰町された高齢者の支援活動等を続けられている方です。
最初に訪ねたのは、ふくしま浜街道・桜プロジェクトの活動現場。
除草作業のため、企業や行政の方たちがボランティアで集まっておられます。
昨夕も報告して下さった代表の西本由美子さんが、改めてプロジェクトの概要について紹介して下さいました。浜街道(いわき市から新地町まで)の区間に、地域住民や避難者によって桜の苗木を植樹しており、維持管理のために全国から桜の木オーナーを募集しているとのこと。
続いて向かったのはオーガニックコットンの栽培地。JKSK主催のボラバスで、私も何度も訪問し作業している畑です。
改めて堤防上の道路から望むと、かつて津波被害を受けた水田には青々とした稲が植えられていました。
昨日、見学させてもらった避難指示区域内の風景とは全く異なります。普通に農作物を作付け、栽培できることの幸せを痛感せざるを得ません。
その向こうには、新たに建設された復興公営住宅が並んでいます。さらにその向こうには、東京電力広野火力発電所の排気筒。原発が止まった今も、浜通りは首都圏に電力を供給し続けています。
畑で待っていて下さったのは、いわきおてんとSUN企業組合代表(オーガニックコットン担当)の吉田美恵子さん。
津波と原発事故で被災し、いわゆる風評被害に苦しむこの地域の農業を復活させるため、首都圏の市民や企業等と連携しつつ、口に入らないコットンの栽培と製品化を続けて来られた経緯等を説明して下さいました。。
6月13日(土)のボラバスの際、みんなでポットから移植した苗は、無事に大きく育っていました。
この日は参加者全員で摘芯を行いました。枝の先端を摘み取って側枝の成長を促進させ、綿の収穫量を増やすための作業です。
コットン畑の脇の道路を、ひっきりなしにダンプカーが通過します。防災緑地の建設工事が進められているのです。
続く見学地は、その現場です。
福島県 富岡土木事務所の方が事業の概要について説明して下さいました。ちなみにこの土木事務所も、原発事故後、本来の所在地である富岡町から数度の移転を経て現在の場所(広野町)にあります。
広野町の防災緑地は、津波被害の防止のみならず、地域活性化やレクリエーション等を目的として、来年3月に完成する予定とのこと。土木事務所はサポーターズクラブを設け、町民の方たちと協働しつつ事業を実施しており、来年3月には植樹祭も予定されているそうです。
続いてバスは西へ。山間に田んぼが広がっています。
着いたところは新妻有機農園。昨日の報告会でも新妻さんご自身から紹介して頂きましたが、「アヒル農法」(有機農業)で水稲等を生産されている農園です。全量を直売(全国に配送)されているとのこと(原発事故後は、契約数量は減ったそうです)。
奥さまが餌を持って現われると、田んぼ脇の小屋から20羽近いアヒル達がガアガアと出てきました。
田んぼの脇には、直径20ミリ近くあろうかという大きなブルーベリーが、たわわに実っていました(もう一軒の新妻さん宅です)。
そのまま摘んで頂いたものも美味でしたが、冷凍しておいて下さったたものは、シャーベットのようで絶品でした。
その後は、二ツ沼総合公園へ。
まずは直売所。野菜や加工品が豊富に並べられていました。
続いて、オリーブ植栽地の見学。
温暖な広野町では、復興のシンボルとして、市民の有志の方たちによるオリーブが栽培されいます。
全国各地にサポーターもおられるそうです。直径5ミリほどの小さな実がついていました。
高くなったところから北を望むと、楢葉遠隔技術開発センターの原子炉実物大模型が望めました。
公園内で昼食のお弁当。
傍らでは、ふくしまオーガニックコットンプロジェクトの「ふくしま潮目-SIOME-」の製品が販売されていました。
どれも素敵なデザインです。この日は手ぬぐいとタオルハンカチを求めさせて頂きました。
その後は総合体育館内の会議室へ。「車座交流会」本体のワークショップです。
最初に大和田理事長から進め方等について説明。目的は広野町の魅力を発信するためのアイディアを出し合うことです。
グループでの対話に入る前に、まず、鈴木敦子さんからプレゼントツリー(首都圏から里親を募り、広野町民と共にぼ歳緑地に苗木を育てていくというプロジェクト)の説明。防災緑地でも取り組む予定となっています。
続いて、島村守彦さんから二ツ沼総合公園を舞台に開催されるパークフェスについて(5月にも開催されました)。
さらに、「ふるさとの夢をかたちに」を企業理念とするさとゆめについて嶋田俊平さん、ふくしまオーガニックコットンの吉田さん、広野わいわいプロジェクトの事務局を務めるバリューフロンティア(株)の梅原由美子さんからも説明。
その後、「プレゼントツリー」、「賑わい、安全・安心」、「広野ブランド」の各テーマ2組ずつ(計6テーブル)に分かれてのワークショップがスタート。進行役は「さとゆめ」の嶋田さんです。
一定の時間対話した後、まとめ役を残して他のメンバーはテーブルを移動するというワールドカフェ形式です。
模造紙は、みるみる多くの付箋(アイディア)で埋まっていきました。
各テーマの議論の概要について、まとめ役の方達(AGRI Holdings・北川寛人さん、プレゼントツリーの平沢真実子さん、ふくしまオーガニックコットンプロジェクトの吉田恵美子さん)から報告。
町内の人達の集いの場となるコミュニティカフェの設置、エゴマ(じゅうねん)の製品化・ブランド化、防災緑地とパークフェスを連携させたイベントなど、様々な具体的な提案がなされました。
最後に大和田理事長から、拙コツコツ小咄も話の中に織り込んで下さりつつ、「主役は町民の皆さん。私たちは東京に戻っても忘れることはない。これからもご縁を絶やすことなく、お手伝いしていきたい」等とまとめの挨拶。
地元の門馬さん、根本さん達からもご挨拶を頂きました。
13時過ぎからスタートした車座交流会(ワークショップ)は16時過ぎに終了。3時間の長丁場でしたが、あっという間に時間が過ぎました。
バスに乗った私たちを、地元の方たちが、ちぎれんばかりに手を振って見送って下さいました。
首都圏の私たちと広野町の方達との間で、一人ひとりがお互いの顔の見えるかたちで、より強くつながることができたと実感できた瞬間でした。
(おまけのコツコツ小咄)
「車座に参加して、福島からもらってきた綿の芽が出た時のことを思い出したわ」
「えっ、何で?」
「双葉の未来を想像して、わくわくしたもの」
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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