F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.074

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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信 ◇◆◇

     No.74; 2015.7/30(木)[和暦 水無月十五日]発行

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 大暑の候、気温の高い日が続きます。

 しかし間もなく、水無月廿四日(88日)は早くも立秋。少しは暑さ

も和らぐことを期待したいところです。

 

  水無月の蟻おびたゞし石の陰 子規 

 

 時の流れを体感して頂くため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と

十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は水無月十五

日の配信です。

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  F.M.豆知識

 食や農について(特に私たち消費者にとって)、ちょっと役に立つ、

あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げて

いきます。

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 本稿では、近年、エンゲル係数が上昇に転じている状況について、主

として総務省「家計調査」のデータを基に紹介してきました。

 

 家計調査といえば、2年ほど前、パンの消費が米を上回るという記事が

注目されました。

 確かに2人以上の世帯についてみると、米(リンク先の図の橙色の折れ

線)に対する支出額が下落傾向で推移する一方、パン(緑色の折れ線)

に対する支出額がゆるやかな上昇傾向で推移してきた結果、2010年当た

りからグラフはほぼ重なるようなり、2014年においては、米に対する1

帯当たり年間消費支出額が25,108円であるのに対して、パンに対する支

出額が29,210円と、完全に逆転しています)。

 

http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/32_kometopan.pdf

 

 それでは、主食の地位が米からパンに移行したのかというと、そうい

うことでもないようです。

 農林水産省「食料需給表」によると、2013年の1人当たり年間供給量

(食べ残し等を含む消費量)は、米が56.9kg、小麦(めん用等も含みま

す。)が32.7kgと、依然として米の方がかなり多くなっています。

 

 このように2つの調査が相反するような結果となっているのは、家計

調査が金額ベースの調査であること、米を消費する外食や弁当は別の

項目として調査していることといった理由があります。

 

[出典等]

 総務省「家計調査」(2人以上の世帯)

  http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001135068

 農林水産省「食料需給表」

  http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント 潮目を変える

  食や農の分野について、先進的かつユニークな活動に取り組んでお

 られる方達を紹介させて頂いています。

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 福島・喜多方市山都町(やまとまち)の山あいに、等高線に沿うよう

に山腹を流れる水路があります。この全長約6kmにわたる木上堰(もとき

うわぜき)が開削されたのは江戸時代の延享年間のこと。

 それから約270年の間、本木、早稲谷地区の棚田に水を供給し続けてき

ました。

 

 約半分は土水路のまま残されている堰を守っていくのは重労働です。

 この辺りは豪雪地帯であるため、冬の間に倒木や枯れ木、落ち葉、土

砂などが水路を埋めてしまいます。そこで代かき前にこれらを取り除く

とともに、壊れたところを修繕する必要があるのです。

 

 これら作業は、長年にわたって主として地域の稲作農家により担われ

てきました。しかし、かつて50戸程あった農家は5分の1に減少し、残っ

た農家も急速に高齢化が進行してきました。

 このままでは歴史的遺産とも言える堰の維持・管理ができなくなり、

そうなると地域の農業生産が困難となるだけではなく、里山の環境や生

物多様性までが失われるという危機に直面しつつあったのです。

 

 そこで20005月、移住・就農された方を含む地域の方達は、大型連休

の時期に首都圏から7名のボランティアを招き、協力して堰の泥上げ(水

路掃除)を実施しました。

 2005年には、ボランティアの受入れをよりスムーズにするために「本

木・早稲谷 堰と里山を守る会」が設立され、現在は毎年50名ほどのボラ

ンティアが参加しています。

 

 「守る会」では、ボランティア受入れの際に農家との交流会や周辺散

策ツアーを実施ししているほか、堰の歴史や周辺の動植物についての調

査と記録誌の作成、小学生による「生きもの調査」等の里山でのフィー

ルド学習等に取り組むとともに、地元で収穫された「上堰米」等の直販、

喜多方市の酒造店に委託しての上堰米を使った日本酒の醸造と直販も行っ

ています。

 さらに201212月には、同様の問題を抱える他の地域と連携するきっ

かけ作りのためのシンポジウム「中山間地の水利について考える」も開

催しました。

 

 「守る会」のフェイスブックページには、以下のように会の趣旨等が

整理されています。

 「棚田を中心に広がる里山は先人が長い年月をかけてつくりあげてき

た自然と人間の調和の究極の形です。その命を支えているのは豊かな水

であり、その水をもたらしているのが堰と呼ばれる山腹水路です。私た

ちは会津地方の飯豊山麓において、この堰を守ることを基軸にして、棚

田を、里山を、中山間地農業を守るために活動しています。」

 

[参考]

 FBページ「本木・早稲谷 堰と里山を守る会」

  https://www.facebook.com/sekitosatoyama

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 JKSK
車座交流会 in 福島・広野町(1) (07/16)

  http://food-mileage.jp/2015/07/16/

 

 同(2)(07/20

  http://food-mileage.jp/2015/07/20/

 

 CSまちデザイン主催「会津・山都を丸ごと味わう」(1)

 (07/23)

  http://food-mileage.jp/2015/07/23/

 

 同(2)(07/28

  http://food-mileage.jp/2015/07/28/

 

 筆者が説明者として参加予定のイベントです。

 (HPによると満席のようです。)

 

 第10回 US.Peaceシェフズテーブル

 日時:82日(日)11301500

 場所:銀座「Bouchon
d’Or
ブジョン・ドール」(中央区銀座5-9-5

 主催:US.Peace

 (詳細、お問合せ等

  http://www.uspeace.jp/user_data/event.php

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 今週もやりますよ

 「そうだ!檜原村のゴマ畑に行こう!〜元気なゴマちゃん応援し隊〜」

 日時:81日(土)8:50 JR武蔵五日市駅集合

 場所:東京・檜原村 へんぼり堂近く

 主催:檜原村の東京ゴマ01を応援し隊!

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/379551288908364/

 

 脱成長ミーティング 7 公開研究会

   「脱成長と社会保障〜脱成長の下で税収と福祉はどうなるのか」

 日時:82日(日)13:3017:00

 場所:ピープルズ・プラン研究所(有楽町線「江戸川橋」徒歩5分)

 主催:脱成長ミーティング

 (詳細、お問合せ等

  http://umininaru.raindrop.jp/datsuseichou/tuo_cheng_zhangmitingu/ci_hui_kai_cui_jiang_zuo.html

 

 東北大震災から5年目 原発事故被災地と福島第一原発の今

 日時:82日(日)110:3012:30214:0016:00

   (1部、2部の内容は同じです。)

 場所:両国回向院 念仏堂(墨田区両国2-8-10

 主催:一般社団法人AFW

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1578647305734032/

 

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* 今号のコツコツ小咄。

 「相馬野馬追の甲冑や旗差物は色とりどりだね。オレンジ色ばかりか

 と思ってた」

 「えっ、何で?」

 「橙(だいだい=代々)のものって聞いてたから」

 

* 次号No.75は、814日(木)[文月朔日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也