F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.077

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信 ◇◆◇

     No.77; 2015.9/13(土)[和暦 葉月朔日]発行

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 今日は和暦の葉月朔日(八朔)。新穂の実りの感謝を神に捧げる節

句です。

 ところが関東・東北地方では、今回の豪雨と洪水により農作物にも

甚大な被害が発生。それよりも、濁流に住宅や自動車が流されるニュ

ース映像には言葉を失います。

 被災された皆さまにお見舞いを申し上げます。

 

 本メルマガは、時の流れを体感して頂くために和暦の毎月一日(朔

日=新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信していますが、自然

の猛威の前での人間の無力さを見せつけられることが多くなっている

ように思われます

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  F.M.豆知識

 食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、

あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げ

ていきます。

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 前回は、「主食」(米、パン、カップめん等)に対する消費額につ

いて、北海道や沖縄では米が多いこと、米どころであるはずの東北で

は米に対する支出額は少なく、カップめん等に対する支出額が多く

なっていること、また、近畿ではパンに対する支出額が多いことなど、

主食だけ取り上げても、地域によって消費パターンに大きな差(特色)

があることを紹介しました。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/34_Shushoku.pdf

 

 今回は、地域をさらにブレークダウンして、都道府県庁所在地ごと

の主食の消費パターンをみてみます。

 

 リンク先の図35は、米、パン及びカップめん等(カップめん及び即

席めん)に対する世帯員1人当たり支出額(全国平均=1)の、上位及び

下位5都市を示したものです。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/35_todoufuken.pdf

 

 これによると、ちょっと意外だったのが、米の消費額が最も多いの

は静岡市ということです(購入量も都道府県庁所在地の中で1位です)。

 パンについては、やはり京都、神戸、奈良など近畿地方での消費が

全国水準を大きく上回っています。

 カップめん等については、秋田、山形など東北地方の都市で多く消

費されています。

 

 このように、「主食」に対する消費パターンは都道府県別にみても

特徴がみられます。

 なぜ静岡の米消費が多いのか、静岡在住で食育に熱心に取り組んで

おられる方に聞いてみると、外食やパン屋さんが少ないからかな、と

いうお話でした。

 次回以降も、食生活パターンの地域的な特徴を取り上げていきたい

と思います。

 

[出典等]

 総務省「平成26年家計調査」(都市階級・地方・都道府県庁所在市

 別1世帯当たり支出金額、入数量及び平均価格)(2人以上の世帯)

  http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001129409

 

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント 潮目を変える

  食や農の分野について、先進的かつユニークな活動に取り組んでお

 られる方達を紹介させて頂いています。

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 京王堀之内駅(東京・八王子市)を降りて北に15分ほど歩くと、左手

の住宅団地と幹線道路一本を挟んだ反対側には、昔ながらの農地や里山

が広がっているのが目に入ってきます。大規模住宅地に隣接してこのよ

うな懐かしい風景が残っていることは、奇跡のようにさえ感じられます。

 その中にあるのがユギムラ牧場。旧・由木村(1964年に八王子市に編

入・合併)が名前の由来です。

 

 この一帯は、もともと都内でも有数の酷農地帯でした。

 ところが1960年代、経済の高度成長に伴って急増する東京圏の住宅需

要に対応するため、多摩ニュータウン建設構想が持ち上がり、当初、こ

の地域も開発区域に含まれていたのです。

 

 これに対して、この地域を守るために立ち上がったのが、ユギムラ牧

場の現当主・鈴木亨さんのご父君たち。「農ある町(アグリ・ニュータ

ウン)」構想を提言し、20年近くに及ぶ公団や都との粘り強い市民運動

を経た結果、現在の農村地域の風景が守られているのです。

 「奇跡」は、決して偶然の賜物ではなかったのです。

 

 鈴木亨さんも最近まで酷農を営んでおられましたが、体調を悪くされ

て廃業。ただし、現在も近隣の酷農家のたい肥作りを請け負いつつ、障

がい者の就労支援、農業体験の受け入れ等に取り組んでこられました。

 ちなみに、たい肥舎の屋根には太陽光発電のためのパネルが設置され

ています。

 

 そして、この地域の農業や環境の新しい担い手が表れました。

 大学卒業後、新規就農を目指していた20歳代の舩木翔平さんを受け入

れ、2012年には、舩木さん達3名の頭文字を会社名にした株式会社フィオ

FIO)の事務所が、ここユギムラ牧場に置かれたのです。

 

 鈴木さんや舩木さん達は、世代を越えて協働し、都市住民等との交流

活動に本格的に取り組み始めました。

 木造鉄骨2階建ての牛舎は100人規模のイベントが開催できるスペース

に改装されました。クラウドファンディングを活用して「ヤギ牧場」を

開設し、また、農業体験農園も始めました。

 さらに、野菜やハチミツの収穫体験、婚活、バーベキュー、映画上映

やコンサートなど、様々なイベントを積極的に開催しています。

 

 これらに取り組むことで、子ども達を含めて都市住民の方に農業に興

味を持ってもらうきっかけをつくり、身近な場所にある環境(農地や里

山)を活かした地域づくりに取り組んでいるのです。

 

 現在、日本の社会と経済は成熟し、ゆとりや自然との触れ合いを求め

るニーズが大きく高まっています。そのようなニーズに応えるため、奇

跡のように残されたこの地で、若い新規就農者も加わって様々な交流活

動に取り組んでいる様子は、東京の農業のみならず、これからの日本社

会全体の一つのモデルを指し示しているようにも思われます。

 

[参考]

 NPO YUGI

 http://yugimura.com/

 

 多摩丘陵の牧場のおっさんの環境福祉(鈴木亨さんブログ)

 http://ossan2.tamaliver.jp/

 

 株式会社フィオ(FIO):農をもっと手元に

 http://fio8.com/

 

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 若手野菜農家×若手八百屋 対談
(08/29)

  http://food-mileage.jp/2015/08/29/

 

 みんな集まれ!-FIOを味わう食事会
(09/01)

  http://food-mileage.jp/2015/09/01/

 

 たべるはたけ部 遠足の下見 @共奏ファーム
(09/02)

  http://food-mileage.jp/2015/09/02/

 

 「永続敗戦論」
(09/07)

  http://food-mileage.jp/2015/09/07/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 八王子の伝統野菜 八王子ショウガを知って味わう

 日時:917日(木)13:3016:30

 場所:子安市民センター(東京都八王子市)

 主催:八王子市民のがっこう<まなび・つなぐ広場>

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/930052423731695/

 

 はじめての福島学 in 駒場 3rd

 日時:925日(金) 19:0021:00

 場所:番來舎(東京・目黒区駒場1-28-1

 主催:番場 さち子さん

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1664664087104744/

 

 「東京ゴマ01in 檜原村 大収穫祭

 日時:927日(日)10:30 JR武蔵五日市駅集合

 場所:東京・檜原村

 主催:グリーンスマイル

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/453487518193155/

 

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* 今号のコツコツ小咄。

「自然農とは格好いい。まるで昔の航空レース映画みたいですね」

「えっ、何て映画?」

「素晴らしきフコーキ(不耕起)野郎」

 

* 今回は、発行システムのメンテナンスの関係でこの時間の配信とな

 りました(通常は午前7時)。

  次号No.78927日(日)[葉月十五日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也

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