F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.080

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信 ◇◆◇

     No.80; 2015.10/27(火)[和暦 長月十五日]発行

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 和暦の長月の半ば。

 長月十三日(1025日)の月は「栗名月」との異名もあるそうです。

秋の味覚が出揃うとともに、日々、肌寒さが増してくる季節になりまし

た。廿七日(118日)は、いよいよ立冬です。

 

 時の流れを体感して頂くため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)

と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は長月十五

日の配信です。

 

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  F.M.豆知識

 食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、

あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げて

いきます。

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 本欄では、ここ数回にわたって総務省『家計調査』結果を基に食料消

費の地域的な特徴を取り上げてきました。まだ紹介したいトピックもあ

るのですが、今回は別の話題を取り上げます。

 

 先日、ある尊敬する東北地方の農家の方が、何ともやりきれないとの

思いをフェイスブックに投稿されていました。その内容は、105日付け

の毎日新聞朝刊の社説に関してです。

 早速、原文を読んでみました。

 http://mainichi.jp/opinion/news/20151005k0000m070099000c.html

 

 「コメの補助金 農業の強化を妨げるな」と題する社説は、今年の新

米が昨年より高い価格で出回り始めたことを取り上げ、「米価の高止ま

りは生産性の低い零細農家の温存につながる」「コメの値段が下がれば

零細農家の退場が促され、出てきた農地を担い手に集約すれば一段の競

争力強化を図れる」とし、「農業強化を図るためには補助金政策の見直

しが必要」と主張しています。

 

 農業(特に稲作)の構造改革や補助金制度の不断の見直しの必要性と

いった結論の是非はともかく、その結論に至る事実認識や理論展開につ

いては、率直に言って粗雑かつステレオタイプと言わざるを得ません。

おそらくは、食料や農業についてきちんと勉強されたことのない方が書

かれたのでしょう。

 本欄では数回に分けて、この社説の問題点を事実関係に照らして明ら

かにしていきたいと思います。

 

 まずは簡単な点からです。

 米の価格については、以前は生産種米価等のかたちで国が決定してい

ましたが、現在は民間ベースの相対の取引に委ねられています(食糧管

理法は1995年に廃止)。

 

 本年9月の新米(2015年産米)の相対取引価格(JA全農等が卸売業者等

に販売する際の取引価格)は、全国・全銘柄平均で13,178円(60kg当た

り)と、前年産米に比べて1,000円ほどが高くなっています。

 

 社説はこのことを捉えて「米価の高止まり」との表現を使っているの

ですが、実際には米価格はどのような水準にあるのでしょうか。

 リンク先の図は、近年の米の相対取引価格の推移を示したものです

(実際には前年産米(いわゆる古米)等も取引されていますが、当該年

産の価格のみを表示しています)。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/38_aitai.pdf

 

 このグラフから明かな通り、2015年産米は前年産米より上昇している

ものの、2013年産米以前の水準までは回復していません。2014年産米の

価格は史上もっとも低い水準で推移し、生産者の方々の深刻な悩みと

なっていました。

 それから若干上がったからといって、あたかも米価が「高止まり」し

ているかのような表現は、読者に誤解を与える恐れがあるものです。

 これでは、心ある生産者の方が怒りを覚えるのも当然です。

 

 なお、米価は短期的な需給事情により変動しているものの、長期的に

は下落傾向にあることも事実です。この背景には、米の消費量が一貫し

て減少し続けているという構造的な要因があります。

 次回に続きます。

 

[出典等]

 農林水産省「米穀の取引に関する報告」

 (農林水産省ホームページ「米の相対取引価格・数量、契約・販売状

 況、民間在庫の推移等」)

  http://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/aitaikakaku.html

 

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント 潮目を変える

  食や農の分野について、先進的かつユニークな活動に取り組んでお

 られる方達を紹介させて頂いています。

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 鈴木亮(すずき・りょう)さんは1972年、鎌倉の生まれ。

 国際環境保護学を学ぶためにニュージーランドに留学中に1992年の地

球環境サミット(リオ・サミット)に触発され、帰国後の98年に国際青

年環境NGO A SEED JAPANで「経済をエコロジーに」キャンペーンや「エ

コ貯金プロジェクト」に参画。

 さらに2012年には同NGO理事として「未来生活nowプロジェクト」を立

ち上げるとともに、国連
持続可能な開発会議(リオ+20)にも参加され

ました。

 また、この間、(特非)全国有機農業推進協議会等の活動にも参画さ

れています。

 

 このように、環境や持続可能性をキーワードにした様々な活動に取り

組んで来られた鈴木さんは、201210月に福島市に移住。現在は東日本

大震災支援全国ネットワーク(JCN)の福島担当として、被災地・被災者

を支援している団体間の連携を促し、支援活動を続けるうえで抱える課

題を共に考える場「現地会議 in 福島」の企画・運営等に取り組んでお

られます。

 また、(特非)福島県有機農業ネットワークの活動にもボランティア

として参加されています。

 

 福島と東京をつなぐことも、鈴木さんの活動の大きな柱の一つです。

 鈴木さんが主宰する「すずめの未来市(みらいち)」では、(特非)

元気になろう福島と共催し、毎月11日(東日本大震災の月命日)、新宿

の「小料理・結」等を会場に新宿と福島を結ぶカフェイベント「結イレ

ブン」を継続的に開催しています。

 

 また、去る1011日(日)には、この「結イレブン」の取組を兼ねて、

東京・西日暮里の自然派カフェ「フロマエカフェ」で「福島復興!今だ

からこそ大交流会『ほんとの幸』〜農業・避難・子ども・支援
それぞれ

の今を分かち合う交流会〜」が開催されました。

 元気になろう福島、福島県有機農業ネットワーク等と共催したこのイ

ベントでは、復興活動に取り組んでおられる現地の方、東京から支援活

動を継続されている方達の報告を伺い、都市での暮らし方の振り返り等

のために積極的な意見交換等が行われました。

 

 このように精力的かつ献身的に幅広い活動に取り組んでいる鈴木さん

は、公共交通機関と自転車を駆使して、今日もフットワーク軽く福島や

東京を飛び回っておられます。

 ちなみに最近、結婚もされ、私生活面でも一層充実されているようで

す。

 

 [参考]

 東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN

  http://www.jpn-civil.net/

 復興カフェ「結イレブン」と東京有機マルシェ

 「すずめの未来市(みらいち)

  http://ameblo.jp/suzumenomiraichi/

 

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 おしゃれ交流会・サロンコンサート @ 広尾 (10/12)

  http://food-mileage.jp/2015/10/12/

 

 福島復興!今だからこそ大交流会「ほんとの幸」 @ フロマエカフェ

 (西日暮里) (10/15)

  http://food-mileage.jp/2015/10/15/

 

 蔦谷栄一先生「地域資源活用で中山間イノベーション!」 (10/20)

  http://food-mileage.jp/2015/10/20/

 

 緊急座談会!自衛隊の実態を知っていますか? @ 新宿 Naked Loft

  (10/21)

  http://food-mileage.jp/2015/10/21/

 

 古民家再生ワークショップ @さいはら(第2回) (10/23)

  http://food-mileage.jp/2015/10/23/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 ご近所ラボ新橋 全体カイギ #1(ここはどこ?)

 日時:1028日(水)19:00

 場所:ご近所ラボ新橋(港区新橋6-4-2

 主催:ご近所ラボ新橋

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/945423002182570/

 

 福島応援企画
in
東京「東京で出会う会津・山都の人と食」

 日時:1031日(土)11:0013:30

 場所:生活クラブ館クッキングスタジオBELLE(小田急・経堂駅3分)

 主催:CSまちデザイン

 (詳細、お問合せ等

  http://cs-machi.com/?p=2585

 

 土と平和の祭典

 日時:111日(日) 9:3016:30

 場所:日比谷公園

 主催:種まき大作戦
実行委員会

 (詳細、お問合せ等

  http://www.tanemaki.jp/saiten2015/

 

 おっさん牧場だらだらまつり〜つくる・たべる・まなぶ〜

 日時:113日(火・祝)11001600(出入り自由)

 場所:ユギムラ牧場(八王子市堀之内900-1

 主催:八王子市民のがっこう<まなび・つなぐ広場>

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1522347194741361/

 

 民主主義をつくるお金40回アドボカシーカフェ

 日時:114日(水)18302100

 場所:文京シビックセンター(丸ノ内線・後楽園駅1分)

 主催:ソーシャル・ジャスティス基金

 (詳細、お問合せ等

  http://socialjustice.jp/p/20151104/

 

 農家と巡る中通りツアー 二本松市旧東和町の農家で大豆収穫体験

 日時:117日(土)〜8日(日)

 場所:福島・二本松市旧東和町

 主催:福島県有機農業ネットワーク

 (詳細、お問合せ等

  http://fukushima-yuuki.net/yotei.php

 

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* 今号のコツコツ小咄。

 「本当に美味しい秋刀魚を食べるには、いつまでも親の家に居候して

ちゃダメよ」

 「えっ、そうなの?」

 「スダチ(巣立ち)が欠かせないもの」

 

 注:「コツコツ小咄」は、拙FBページにて土日祝を除く毎日、絶賛

  (?)投稿中です。

  https://www.facebook.com/tetsuya.nakata.7

 

* 次号No.811112日(木)[神無月朔日]の配信予定予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也

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