F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.099

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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信 ◇◆◇

     No.99;2016.8/3(水)[和暦 文月朔日]発行

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 七夕には短冊に歌や字を書いて書道の上達を祈った「文披月(ふみひ

らきづき)」が文月の語源とのこと。ほかに稲穂が膨らむ「穂含月(ほ

ふみづき)」との説も。

 関東甲信では728日、平年より7日遅く梅雨が明けたかと思うと、7

(日)は立秋を迎えます。

 時の流れを体感するため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と十五

日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は文月朔日の配信

です。



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  F.M.豆知識

  食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、

 あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げ

 ていきます。

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 「食の安全・安心」

 ここ数回にわたり、食の安全や安心について考察してきました。

 アンケート調査結果によると9割以上の消費者が「家庭での取り扱い方」

については「安心」と感じている(No.95)のに対し、現実に食中毒によ

る死者が最も多く発生しているのは家庭であること(No.96)から、

「安全」と「安心」の間にはギャップがあることを示しました。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/52_monitor.pdf

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/53_shokuchudoku.pdf

 

 No.97では、このギャップの背景として、「家庭での取り扱い方」など

自分でコントロール可能なリスクは実際よりも小さく、「輸入食品」

「外食産業」など逆に他人にコントロールされているリスクは実際より

も大きく感じられるというメカニズムがあることを紹介しました。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/54_risk.pdf

 

 さらにNo.98では、リスク認識の程度が一般消費者と専門家との間で大

きく異なるという食品安全委員会事務局の調査結果を紹介しました。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/55_riskninsiki.pdf

 

 今号は、これらのまとめとして、どうすれば食に関する「安心」を得

ることができるかについて考えてみたいと思います。

 

 リンク先の図56の破線内は、内閣府食品安全委員会事務局がある講座

で用いている資料の一部です。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/56_anzenansin.pdf

 

 この資料の結論は「『安全』は『安心』ではない」ということになっ

ています。

 つまり、左上の「安全」は科学的評価により決定されるもので客観的

であるのに対し、下の「安心」は消費者の主観的な心理的判断(主観的)

によるというのです。

 そして「安心」が得られるためには、「安全」は必要条件ではあって

も十分条件ではなく、「安全」に「信頼」(行政、食品事業者による誠

実な姿勢と真剣な取組み、消費者への十分な情報提供)が加わることに

よって、初めて食の「安心」は確保されるとされています。

 

 「安全」=「安心」ではないということは、そのとおりですが、しか

しこれだけでは私は不十分だと考えています。

 専門家が科学的に評価し、行政や事業者が誠実に情報提供等に努めた

としても、これらだけで私たち消費者は「安心」を得ることはできませ

ん。

 私たちが安心を得るためには、消費者自らの努力も不可欠なのです。

 科学ライターの松永和紀さんは、メディアは情報伝達の手段に過ぎず

判断するのは個々の消費者であるとし、「科学の読み書きそろばん力」

(メディア・リテラシー)を身につけることの必要性を主張されていま

す(図の破線の右側に追加した部分です)。

 具体的には、「懐疑主義を貫き、多様な情報を収集して自分で判断す

る」「単純な情報は排除する」「極端な情報はまず、警戒する」等の態

度が重要としています。

 

 「科学」とは面倒くさいものです。だからと言って専門家や事業者、

あるいはメディアやネットの情報を鵜呑みにしていては、本当の安心は

得られません。

 安心とは、自ら学びつつ、つかみ取っていくものなのです。

 

[出典、参考資料等]

 内閣府食品安全委員会事務局「大津市・食品安全リスクコミュニケー

 ター育成講座」(20166月)における説明資料

 https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20160616ik2

 

 松永和紀「リスクコミュニケーションに関する話題提供」

 (「第4回リスクコミュニケーションのあり方に関する勉強会」

  (20149月)資料)

 https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20140924ik1

 

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント 潮目を変える

  食や農の分野について、先進的かつユニークな活動に取り組んでお

 られる方達やトピックスを紹介しています。

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 内閣府安全委員会とは、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正に食

品のリスク評価を行う内閣府の機関です。行政機関としては少々ユニー

クな性格と役割をもつこの機関が誕生した背景は、以下のようなもので

した。

 20019月、国内で初めてBSE(牛海綿状脳症、当時は「狂牛病」と呼

ばれていました。)の発生が確認されました。ところが、それ以前から

英国等で被害が広がり国内でも大きく報道されていたにも関わらず、家

畜衛生を所管する農林水産省等には危機意識が欠如しており、発生確認

後の説明も混乱する等の不手際がありました。

 さらには、食品安全と人の健康の確保を所管する厚生労働省との連携

が不十分であることも明らかになりました。

 このようなことから、消費者の間には牛肉に対する大きな不安感と、

食品安全行政に対する深刻な不信感をもたらすこととなったのです。

 

 このような事態に対処するためには、それまでの食品安全行政を根本

的に改めることが不可欠であり、20037月に「食品安全基本法」が施行

渡航されたのです。

 この法律は、食品の安全性の確保のためには国民の健康保護が最も重

要であるとの基本理念の下、リスク評価(食品健康影響評価)とリスク

管理(リスク評価に基づく施策の策定、実施)、リスクコミュニケーショ

ン(関係者間における意見・情報の交換)など、食品の安全性の確保に関

する施策を総合的に推進すること定めました。

 

 そして本法に基づき、内閣府に新たに設置されたのが食品安全委員会

です。

 食品安全委員会は、リスク管理を行う厚生労働省や農林水産省から独

立して、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正にリスク評価を専門的

に行う機関として位置づけられています。

 7名の委員から構成され、その下に12の専門委員会が置かれており、約

200名に及ぶ専門委員(専門家)によって、食品添加物、農薬、微生物、

遺伝子組換え食品など、食の安全に関わるリスク要因について専門的な

審議と評価が行われています。

 これら審議の経緯や結論は、食品安全委員会のホームページにより公

開されています。専門的で、なかなか理解するには難しい内容ですが、

関心のあるリスク要因があれば、マスコミやネットの情報だけではなく、

これら食品安全委員会における議論の内容も参考にして頂きたいと思い

ます。

 

[参考]

 内閣府食品安全委員会ホームページ

 https://www.fsc.go.jp/ 

 

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 (今回はたくさん書きました。)

 チャリティーコンサート“Pray for Kumamoto” (07/18)

  http://food-mileage.jp/2016/07/18/

 立石マルシェ(東京・葛飾区) (07/20)

  http://food-mileage.jp/2016/07/20/

 奥沢ブッククラブ(第10回) (07/21)

  http://food-mileage.jp/2016/07/21/

 早稲田と漱石と熊本、経済統計研究会 (07/23)

  http://food-mileage.jp/2016/07/23/

 江戸東京伝統野菜フェア(寺島なす編) @東京都庁 (07/25)

  http://food-mileage.jp/2016/07/25/

 堀内ゼミ(2) コミュニケーション環境デザイン (07/26)

  http://food-mileage.jp/2016/07/26/

 鎌倉プチ紀行鎌倉大根、葉祥明美術館 (07/27)

  http://food-mileage.jp/2016/07/27/

〇 ふくしまオーガニックコ
ットン ボランティアバス2016(第1回)

 
(07/28)

  http://food-mileage.jp/2016/07/28/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 山のおばあに学ぶ「酒まんじゅう作り」

 日時:87日(日)9:3016:30

 場所:山梨・上野原市西原(さいはら)地区

 主催:やまはた農園

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1832433846991432/

 

 奥沢ブッククラブ第11回(課題図書:坂口安吾「堕落論」)

 日時:818日(木)18:0021:00

 場所:シェア奥沢(東京・世田谷区奥沢2

 主催:奥沢ブッククラブ

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/283229685376406/

 

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* 今号のコツコツ小咄。

「殺虫剤は使っていないので、害虫は手で駆除して下さいね」

「きゃー、怖い! 私には無理!」

「頑張って。有機(勇気)栽培ですから」

 注:「コツコツ小咄」は、拙FBページにて土日祝を除く毎日、絶賛(?)

  投稿中です。

   https://www.facebook.com/tetsuya.nakata.7

 

* 次号No.100(!)は、817日(水)[文月十五日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也

 

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