図58 供給熱量及びその構成比等の推移


◆ F.M.豆知識
  食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回コツコツと具体的なデータに即して紹介していきます。
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 「食生活の変貌−栄養面から」
 私たち日本人の食生活は、戦後、経済の高度成長期等を経て大きく変貌しました。
 その一つが「外部化・簡便化」です。ライフスタイルの変化に伴い、外食や中食(持ち帰り弁当やそう菜など)の消費が大きく増加しました。
同時に食料消費の内容そのものも大きく変化し、米の消費量が半減する一方で畜産物や油脂等の消費が数倍に増加しました(「食の欧米化」)。

 今回は、この食生活の変貌を栄養面から捉えてみます。
 リンク先の図58の折れ線グラフは、国民1人・1日当たりの供給熱量、供給たんぱく質及び供給脂質の量を、1960年を100とした指数で表したものです。

 まず、供給熱量(緑色の折れ線)は1960年には2,291kcal(1人・1日当たり、以下同じ。)だったのが、1990年代半ばには2,670kcal程度にまで増加(1960年比17%増)し、その後は減少に転じ、最近は2,415kcal(同5%増)と1960年に近い水準となっています。
 供給たんぱく質(青)は1960年の69.8gから1990年代半ばには88g程度にまで増加(同27%増)し、その後は横ばいないし減少傾向となり、最近は79g程度(同12%増)となっています。
 これらに対して供給脂質(赤)は、1990年代半ばには3.5倍への水準まで大きく増加し、その後はいったん減少に転じましたが、最近は横ばいとなっています。1960年に比べると2.7倍の水準であり、日本人の栄養面での食生活の変貌を特徴づけるものは、脂質の大幅増加と言えます。

 円グラフは、供給熱量に占めるたんぱく質、脂質、糖質(炭水化物)の割合を示したものです。前述した摂取量の推移の結果、脂質の割合は1965年度の16.2%から85年度には26.1%、2014年度には28.9%とほぼ一貫して上昇し、逆に炭水化物の割合は同時期に71.6%、61.2%、58.0%と低下し続けています。
 これらの結果、栄養バランスが崩れ、脂質(F)が摂取過多となる一方、炭水化物(C)は適正水準を下回って推移している結果、肥満が増加しているという状況にあります。

 ところでこの間、たんぱく質(P)の割合は13%前後とほぼ一定です。このように変動が小さいこともあって、これまで本メルマガでもたんぱく質にはあまり注目してきませんでした。
 しかしながら、最近はたんぱく質の摂取不足が基礎代謝量の低下(肥満の増加)や子どもや高齢者の体力低下に関係していると問題視されています。さらには、最近のたんぱく質摂取量の減少は失業率の上昇と関係していると指摘する人もいます。
 本稿ではこのような観点を含め、今後数回にわたり、たんぱく質摂取量について取り上げていく予定でする。

(注)
 供給量とは消費者等に到達した食料等の量(言わば食卓に並べられた量)であって、実際に摂取された量(言わば口に入れた量)とは異なることに留意が必要です。

[出典、参考資料等]
 農林水産省「食料需給表」
  http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html
 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

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