小川町オーガニックフェス2016

 好天に恵まれた2016年9月10日(土)は、久しぶりに埼玉・小川町へ。
 市民による手作りのイベント「小川町オーガニックフェス2016」の開催日。今年で3回目だそうです(私は初めての参加)。
 東武東上線・小川町で寄居行きに乗り換え、1つめの東武竹沢駅に着いたのが13時15分。
 降りた人は続々と駅前のバスへ(今回の会場には駐車場はありません)。年配の方もいますが若い人も多数。幼児を抱いた家族連れの姿も。大型バスは満席になりました。
 10分ほどで会場の小川元気プラザに到着。
 プラネタリウムやバンガローもある埼玉県立の社会教育施設とのこと。バスで偶然隣り合わせた女性は、子どもの頃に遠足に行った以来と仰っていました。
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 森の中の気持ちのいい坂道を5分ほど登ったところが会場入り口。
 竹で作られたゲートには「有機の里 安全な野菜はおいしい!」との垂れ幕。
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 案内所でパンフ レット(会場マップ等)を頂きました。
 木漏れ日あふれる気持ちのいい会場には多くの出展ブース。大勢の参加者で賑わっています。
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 メインステージのあるAエリアに向かいました。
 ステージ前の広場には多くの観客。地面にシートを敷いて座っている方たちも。
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 回りには有機野菜や食品、雑貨などのPR・ 販売ブースが並んでいます。
 いつも野菜を届けて下さっている横田農場のブースも。その仲立ちを して下さっているUSP(Universal Shell Programming)研究所も出展されていました。
 他にも、東京でのイベントで知り合った農家の方たちも。
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 ステージプログラムは少し進行が遅れているようだったので、地ビールを飲みながら(美味!)他のゾーンを見にいくことに。
 後に社長さんがトークショーにも登壇されるとうふ工房わたなべ(ときがわ町)の軽トラも。小川産有機栽培大豆「青山在来」を使った豆腐などを求めさせて頂きました。
 別のブースではコロッケやドーナツ等も。
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 露里農場のブースの前には8月に生まれたばかりという子猫の姿。子ども達に(大人にも)人気です。
 隣の移住相談コーナーには、多くの人たちが詰めかけています。
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 14時前にステージ前に戻ると、お目当てのトークショー「OGAWA ORGANIC トーク~有機農業からはじまる幸せの循環づくり~」が始まっていました。
 意外と(失礼!)タイムスケジュールに忠実に進行されているようです。
 壇上には、金子美登さん(需里農場)、渡邊一美さん(とうふ工房わたなべ)、山本拓己さん(オクタ)、中山健太郎さん(晴雲酒造)、それにコーディネータ役の高橋優子さん(生活工房・つばさ游)という錚々たる方たちの姿。
 高橋さんはこのフェスの実行委員でもあります。
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 中山さんがマイクを取っておられました(文責・中田)。
  「美味しいお酒を造りたかったし、地元の米を使うのが地元の造り酒屋の使命とも思って金子さんの有機米をキロ600円というで購入し『自然酒』を造り始めた。酒米としては高い価格だが、金子さんが取り組んでいる有機農業を応援することにもつながると思った。
 しかし始めた頃は、正直、なかなか売り切れなかった。お客さんは日本酒の産地やメーカーは気にするが、原料米は山田錦、雄町がいいと思う程度。ようやく最近になって地元の有機米を使っていることの価値を認めてくれるお客さんが増え、完売できるようになってきた」
 渡辺さん
 「大手と同じような商品ではお客さんをつなぎ止められず、ちょうど地元に美味しい大豆はないかと探していた時、ある勉強会をきっかけに知り合った金子さんと取引が始まった。全量引取りという条件は普通のビジネスではあり得ないが、これが結果的には良かった。農家は安心して作ることができるし、買う方も安定的かつ独占的に買うことができる。他の豆腐屋には真似ができない商品ができる。
 その取引が16年続いているが、やはり始めた頃は値段が高く売れなかった。地道に店頭での試食等を続けるうちにブレイクし、黒字に転換できた。今はヒット商品になっている」
 山本さん
  「さいたま市で住宅のリフォーム会社を経営。室内の空気を食べるという意味で住宅は食べものと同じ。2009年1月に金子さんの農場を見学させてもらった時、リーマンショックの煽りで取引先のレストランが閉店し1.8トンのお米が余っているという話を聞いて、その場で全量の引取りを申し出た。社員のうち希望者に給料天引きで買ってもらい、給料の一部をお米で払うようなかたちが今も続いている。
 農作業体験を通じた交流も続いており、この9月には来春の新入社員も含めて稲刈りを予定。貴重な現場教育になっている」
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 高橋さん
  「3人の事業者の方たちのお陰で、この地区は全て有機農業に転換でき、日本初の有機の里が実現した。有機農家は各地にあるが点の存在に留まっているのが実情では。金子さん、いかがですか」
 金子さん
  「まさか私の人生のなかで実現できるとは思っていなかった。自分は基礎作りで終わるものと思っていた。有機農業に取り組み始めて30年目に村が動いた。地域で信頼されている私より16歳も年長の方が私達のことをずっと見てくれていた。品質も収量も良く、何より若い人がたくさん来て楽しそうにやっている様子を見て、他の人たちを説得して地域全体で有機に転換することに舵を切られた。大豆は渡辺さんが全量買い上げてたことから売上も増え、農業をやっていて初めて楽しくなったと言う人もいた。
 自覚した消費者や地場産業・企業の方達が農業を支えてくれているという小川町の姿は、日本の将来のモデルになるのでは」
 高橋さん
 「山本さんがお米を全量買うと言われた時、その場にいたが、正直、社交辞令かと思った。提携の3原則は『全量を』『現金で』『再生産可能な価格で』。消費者が買い続けられるという視点も大事で、キロ400円に設定した。これらの取組が美しい田園風景を守ることにも繋がっている」
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 金子さん
  「山本さんは米を買ってくれているだけではなく、売上の1%をこの地区に寄付してくれている。そのことで私たちは誇りを持って農業や地域活動にいそしむことができ、草刈りの実施等で村がどんどん美しくなっ ている。ホタルなど生物多様性も復活しつつある」
 山本さん
 「企業活動が必ず環境にダメージを与えるのであれば、せめて1%は環境保全のために寄付しようというのが『1% for the Planet』という運動。所得ではなく売上の1%だから、赤字でも寄付する。寄付する先は公的な機関ではなく民間に限定。関心をもって頂きたいと思いTシャツも作った」
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渡辺さん
  「最近、小規模でも地域の人たちを相手にするというローカルビジネスが注目されているが、考えてみると戦前は全てがそうだった。地域の人が地域のお店を支えていた。農業だけではなく工業や商業も同じ。小さな商店が地域にあることが、地域の幸せに繋がると考えている」
中山さん
  「全く共感。私は40歳位でまだまだ若年だが、地域の人たちの営みがあって初めて安心 して暮らせる。都会にいて震災が起こった時、誰が家族を助けてくれるか。笑顔が溢れる町になっていくため、地元の人に愛してもらえる企業にしていきたい」
 山本さん
  「2011年3月の大震災直後、食料がスーパーやコンビニから無くなった。ところが17日に小川町からお米が届いた。たとえ全国規模の流通が途絶しても、地元の農家と提携してれば何と心強いことか。今日のフェスにも若い人たちの姿が多く、このようなスタイルに共感する人が増えている、時代が変わり始めていることを実感している」
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高橋さん
  「私は一主婦として24年間小川で暮らしているが、この町は本当に素晴らしい。母親にとって安心 して暮らせる最高の環境と思っている。
 今日は、ぜひ野菜など、安心できる食べものを食べていって下さい」と、トークを締めくくられました。
 素晴らしい内容でした。それぞれの方から個別にお話を聞く機会はこれまでにもあったのですが、まさに「有機の里」を支えておられる方たちが一同に会してのトークは、迫力あるものでした。
 キッズコーナーにあるオクタのブースに行ってみました。
 端材から作ったエコな積み木「つみきっず」の体験ゾーンでは、たくさんの子ども達が遊んでいます。
 若い女性の方に「給料の一部が現物支給なんて、大変な会社ですね」と声をかけてみると、「もともと希望者だけだし、自分のような独身者には届けてらえるのが嬉しいです。しかも有機米を安い価格で、有難いです」と笑顔で答えておられました。
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 「虫くんと生き物色々!? コーナー」にも多くの子ども達。無心にケースの中に見入っているのを隣から覗いてみると、クワガタやカマキリなど。
 これらの昆虫は、先ほどの(野菜を届けて下さっている)横田農場の協力で集めたものだそうです。自然農法にこだわる横田さんの農場だからこそ、多くの生き物が生息しているようです。
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 好天に恵まれた今年の小川町オーガニックフェスタ(昨年は大雨だったそうです)。
 15時を回っても優しい木漏れ日は降り注ぎ、その中で、ステージではヒップホップの男性グループによる演奏が続いています。
 多くの人が思い思いのスタイルで、ゆったりとした時間を過ごしています。
160910_15_convert_20160915070316.jpg 都心から1時間強とはいえ、今年は駐車場もなく、必ずしも便利とは言えない会場に、小さな子どもをおぶったりベビーカーを押すなどした若いご家族を含めて本当にたくさんの方が集まっておられました。
 金子さんが強調されていたように、農業者、事業者・企業、消費者、それぞれがともに支えあって作り出している地域の姿は、将来の日本の、ひいては世界のモデルになるのかもしれません。
 有機農業とは、単に農薬や化学肥料を使わないだけの農法を指すのではなく、リアルな人と人との有機的なつながりによって紡ぎ出されるものであることが、この日のトークを聞いて実感することができました。
 その小川町とつながる手段はいくらでもあります。
 そのきっかけとして、例えば、私もお世話になっている先ほどのUSP(Universal Shell Programming)研究所では、定期的な農業体験会を開催しており、小川町の有機野菜の宅配「美味しい野菜届け隊」の募集等もされています。
 小川町の素晴らしさを、多くの方に知って頂きたいと思います。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 (プロバイダ側の都合で1月12日以降更新できなくなっていることから、現在、移行作業を検討中です。)
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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