SJFアドボカシーカフェ「難民と生きる」

 2016年10月18日(火)の終業後は文京シビックセンター(東京・文京区春日)へ。
 ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)が主催するアドボカシーカフェ(第46回)のテーマは、「難民と生きる-ヨルダンと日本の支援現場から-」。
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 開始時間に遅れて18時45分頃に到着すると、1人目のゲスト・内海旬子さんの話の途中です。
 内海さんは日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)海外事業担当、地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)理事等を務められている方。
 ヨルダンにおけるシリア難民の負傷者・障がい者支援事業担当としてヨルダンと東京を行き来されている方です。
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内海さん(以下、文責•中田)
 「シリア難民は急増し、現在480万人。ヨルダン国境には7万人が待機中」
 「シリアをめぐる懸念は、米ロを含め関わるプレイヤーが多数おり政治的解決が困難になっていること、もともと絆社会で助け合っていたのがバラバラになっていること、学校に行けず教育を受けていない世代(「喪われた世代」)が出現していること」
161018_9_convert_20161020225404.jpg 「避難民は2つの壁に直面している。すなわち周辺国の国境封鎖と、国際社会が沈黙していること」
 「ヨルダンのザアタリ難民キャンプには約8万人の難民が暮らしている。爆撃の犠牲となった重度障がい者も多い。
 必要な支援額の40~50%しか満たされていない結果、ヨルダンのシリア難民の86%は1日3.2ドルの貧困線以下の生活。児童労働や低年齢での結婚が増加し、コミュニティも疲弊している」
 「そのようななか、JIM-NETは障がい者の病院・治療へのアクセス支援、難民キャンプや在宅でのリハビリテーション、障がい者の社会参加活動への支援(居場所づくり)等に取り組んでいる」
 「米国大統領選では排他的な主張をする候補者がいる一方で、カナダでは全10州が難民受け入れに賛成しておりトルドー首相も多様性のある社会づくりを明確な目標にしている。私たち日本は、どのような社会を目指すのでしょうか」
 そして最後に内海さんは、アメリカの思想家・エマーソンの言葉を紹介されました。
 「『恐怖は常に無知から生じる』。恐怖を作り出しているのは自分の想像であり、必要以上に恐れることは良くない」
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 2人目のゲストは鶴木由美子さん。
 難民支援協会(JAM)の定住支援部・コミュニティ支援担当で、日本における移民の子どもたちを含む児童福祉業界の人材支援・経営支援に従事されている方です。
 鶴木さん
 「『難民(Refugee)』とはもともと『避難する人』の意味だが、『難民』という言葉にはマイナスイメージがある(ネットカフェ難民など)。
 しかし、難民とは可哀想なばかりの人ではない。自分のプロフィール写真は、元難民のプロカメラマンがプロボノ活動の一環で撮影してくれたもの」
 「先日の新聞には『難民6000万人時代』との見出し。ヨーロッパ等には大勢の難民が押し寄せ、日本にも7,586人が申請しているが認定されたのは27名に留まっている。日本でできることは何かと自問しながら活動している」
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 「難民支援協会は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の事業実施契約パートナーとして様々な活動を行っている。
 フリーダイヤルの相談電話は鳴りっ放し。日本社会についての勉強会、2〜3ケ月のトレーニングクラス、クライアント企業とのジ ョブフェア等を開催。地域の祭り等への参加も支援している」
 「地域の女性達による縫い物サークル、多文化共生まちあるき、医療機関での分かりやす い単語帳の作成、技能伝習のためのマニュアル作成など、様々な取組が行われている地域もある」
161018_10_convert_20161020225424.jpg 「日本にいる難民の多くは、望んで日本に来た訳ではない。ゼロから始める日本での生活の目処が立たず、かといって故郷にも帰れず、多くの人が 板挟みになっているのが現状。
 あるアフリカ出身の女性は、10代の頃に民族紛争で家族が殺害され兄とともに出国。カナダに行った兄と別れ、たまたまビザが取れた日本に来たが、関西の公園でホームレス状態だったのを教会のシスターが見つけ、自分たちの団体に連絡してきた」
 「協会のパンフレットに掲載されている男性(難民申請中)は、『先輩難民』として頑張っている人。
 東日本大震災の直後に電話がかかってきて、 ぜひ被災地に行って支援したいと申し出られた。逃れざるを得なかった人の気持ちがよく分かると。ともすれば難民とは助けられる側の人という認識があるが、改められた」
 続いて4人ずつ位のテーブルで話し合い。
 内海さん、鶴木さんも順に回ってこられ、様々な質問に答えてくれます。
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 私と同じテーブルには、難民支援協会のセミナー等に参加されマンスリーサポーターにもな っているという男性会社員の方と、子ども達に教えるべきことは多いことが分かったと語られる元教員の女性の方。
161018_5_convert_20161020225125.jpg 進行役の大河内さん(SJF理事、僧侶)は、これまでインドシナやパレスチナ難民の支援にも力を尽くしてこられた方です。
  「あるパレスチナ難民の方が『死ぬまでに一度大相撲をみたい』と言うので国技館にお連れした時、隅田川沿いのテントをみて何かと聞くので『ホームレス』と教えると驚いていた。ところが、その次の言葉にはこちらが驚かされた。『自分に何かできることはないか』と。
 彼らには、周りに困っている人がいたら助けるのが当然という感覚がある。日本では、人助けはボランティアなど奇特な人、あるいはお上がやることだという認識。助け合いの感覚が希薄では」と のコメント。
 内海さんからは
 「困っている人を助けるのはイスラム教の教えでもある。助け合いの精神が1400年前から根付いている」 との補足。
 最後に、各テーブルから話し合いの結果について報告。
 「自分ごととしてどう捉えていくかが 重要」「日本人には優しさや親切心が無いわけではないが、それらが及ぶ範囲が限定的」「身近に難民の人がいることを知れば意識も変わっていくのでは」等の感想が述べられました。
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 最後に内海さんから、シリア人とヨルダン人双方の障がい者が一緒に社会参加活動をする取組、ダイエットをテーマとしたガザとイスラエルの女性交流の成果等について報告がありました。
 また、本気でシリアの戦争をやめさせたいと関係団体とともにネットワークを作り活動しておられるとのこと。
 鶴木さんからは、「難民と地域の方たちとが WIN-WIN の関係を構築できるよう、橋渡しをしていきたい」との話がありました。
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 21時過ぎに終了。お2人の講師、大河内さんも交えての懇親会に参加させて頂きました。
 現在の世界を覆う最大の懸念とも言える難民問題には、私自身、ともすれば絶望や恐怖さえ感じることもあります。しかし、深刻な状況の中でも明るく屈託なく活動されているお2人の女性や大河内さんの姿には、大いに心励まされるものがありました。
 私自身、知らないことが多すぎます。「恐怖は無知から生じる」という言葉を胸に刻みたいと思います。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 (プロバイダ側の都合で本年1月以降更新できなくなっていることから、現在、移行作業中です。)
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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