【F.M.Letter No.107】

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信 ◇◆◇

     No.107; 2016.11/29(火)[和暦 霜月朔日]発行

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 和暦では霜月に入りました。職場近くの日比谷公園の紅(黄)葉が見

頃になったと思うと、先日には11月としては54年ぶりの初雪、史上初の

積雪が東京地方で観察されました。

 カレンダーは間もなく12月。7日(霜月九日)は二十四気の大雪(たい

せつ)です。

 本メルマガは時の流れを体感して頂くため、和暦の朔日(新月の日)

と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

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  F.M.豆知識

  食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるい

 は考えるヒントになるような話題を毎回コツコツと紹介していきます。

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 所得水準と肥満等

 本コーナーでは、しばらく経済情勢と食生活との関連について述べて

きています。

 まず、最近の経済情勢の悪化(失業率の上昇)と栄養(特にたんばく

質)摂取量との間には相関があることを紹介しました。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/60_situgyo.pdf

 

 前回は、所得水準と食生活(食品群別の摂取量)の関連について、低

所得層(世帯所得200万円未満の世帯員)では高所得層(同600万円以上

の世帯員)よりも穀類の摂取量は多く、逆に野菜類や肉類の摂取量は少

なくなっていること等を説明しました。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/62_shokuhingun.pdf

 

 さて、同じ厚生労働省の調査では所得と生活習慣等の関連についても

調査されています。リンク先の図63によると、肥満者の割合は男女とも

低所得層の方が高所得層に比較して高くなっており、これには前回みた

食品群別の摂取量の差を反映している可能性があります。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/63_himantou.pdf

 

 また、健診等の未受診者の割合は低所得者層では高所得者層よりも低

くなっています。

 さらに、現在習慣的に喫煙している者の割合は低所得層の方が高所得

層よりも高くなっている一方、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒し

ている者の割合については、それほど明かな差はみられません。

 

 経済情勢と食生活との関連について、引き続き次回も考察します。

 

 資料:厚生労働省「平成26
国民健康・栄養調査」(p.56) 

  http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000117311.pdf

 

 出典:FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 (プロバイダ側の都合で本年1月以降更新できなくなっており、現在、

  移行作業中です。)

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  オーシャン・カレント 潮目を変える

  食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおら

 れる方達や、トピックスを紹介していきます。

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 番場さち子さん(ベテランママの会、番來舎)

 

 福島・南相馬市出身の番場さち子さんは、大学卒業後、故郷に戻り書

道教室や学習塾を運営されていました。生徒や保護者の相談にじっくり

耳を傾ける人気の塾だったそうです。

 そこに東日本大震災が発生。事故を起こした福島第一原発から約20km

の位置にあった学習塾の生徒達は避難を強いられ、一人もいなくなって

しまいました。

 

 また、かつて経験したことのない原発事故に見舞われた地元では、多

くの人が放射能に対する強い不安を抱いていました。そこで震災直後の

20114月、若い母親や子ども、高齢者たちを精神的にサポートするため

に、番場さんは高校の同級生ら4人と任意団体「ベテランママの会」立ち

上げ、地域の専門医師を招いての市民向けの勉強会・相談会の開催、放

射能に関する分かりやすい冊子の作成(英語版も)のほか、編み物サー

クル等のサロン活動にも取り組んでいます。

 

 さらに、首都圏に進学した元教え子から「放射能がうつる」等と揶揄

されたという話を聞いた番場さんは、201511月、学習塾であるととも

に、首都圏に住む福島からの避難者等の相談窓口やたまり場でもあるサ

ロン「番來舎(ばんらいしゃ)」を東京・駒場に開設されました。

 明治の初め、志を共にする人たちが自由に懇談し交流を深めるために

福沢諭吉がつくった社交クラブ「萬來舎」にあやかったという名前の通

り、ここでは福島の復興等に関わる様々なゲストをお呼びしてのトーク

ショーやセミナー等も定期的に開催されています。

 例えば南相馬病院の坪倉正治医師、『福島学』の開沼博先生(元福島

大学、現在は立命館大学)、原発作業員の支援と被災地の地域づくりに

尽力されている吉川彰浩さん(AFW)など、多彩な方の話をここで聞くこ

とができるのです。

 

 先日(1111日)は、津波による行方不明者捜索活動のリーダーであ

る上野敬幸さん(福興浜団、南相馬市)と、東京電力・福島復興本社の

石崎芳行代表による対談が行われました。

 全く立場の違うお2人ですが、被災地の復興のために懸命に取り組む思

いには共通する部分もあると感じました。

 

 原発事故の直接の被災地である福島・浜通り地方は、復興が進捗して

いる面もある一方、まだまだ多くの困難な課題が残され、さらに地域住

民等の間には分断も生じています。

 そのような難しい状況の中で、様々な立場の方達が意見を交わし、そ

れを周りの人に伝えるための場作り等に献身的に活動されている番場さ

んに、心から敬意を表するとともに、今後の取組みにも期待したいとと

思います。

 

[参考] 

 ベテランママの会

  http://veteran-mama.com/

 一般社団法人 番來舎

  http://www.banraisha.com/

 

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  ほんのさわり

  食や農の分野について、考えるヒントとなるような本の「さわり」

 だけを紹介します。

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大和田順子「アグリ・コミュニティビジネス」(2011.2,学芸出版社)−

 

 著者は東京のお生まれ。百貨店、化粧品会社、シンクタンク勤務等を

経て2007年から(一社)ロハス・ビジネス・アライアンス共同代表。

日本にはじめて LOHAS(ロハス)を紹介された方としても著名です。

 

 その大和田さんの最近の関心事項の1つが「豊かで幸せな地域づくり」。

 本書で大和田さんは、経済成長の結果、便利で豊かになったはずの日

本が「気がついてみたら生活や社会の基盤である食や農が危うく、砂上

の楼閣のような状態に陥っていた」とし、「こうした危機を脱する

ためにはをベースにした暮らし方や産業を再創造していかなけれ

ばならない」と主張されています。

 

 そのキーワードは「アグリ・コミュニティビジネス」。

 農林業とコミュニティビジネスを組み合わせた造語ですが、単なる利

潤追求ではなく、そこにしかない農山村力と、都市生活者と農山村

生活者の交流力を組み合わせ、地域の課題解決にビジネス(事業経

営)の発想で取り組むことを内容とするとのこと。

 具体的な事例として、えがおつなげて(山梨・北杜市)、霜里農場(埼

玉・小川町)、鳴子の米プロジェクト(宮城・大崎市)、ひぐらし農園

(福島・喜多方市)など、実際に地域で展開されている13事例が詳しく

紹介されています。

 さらに、SWOT分析の活用など、アグリ・コミュニティビジネスのプラン

作成の手法についても解説されているなど実践的な内容になっています。

 

 私は大和田さんにお誘い頂いたおかげで、福島・浜通りや宮崎・椎葉村

等を訪ねることができ、大和田さんが地域づくりのサポートをされてい

る様子を垣間見る機会も得ました。

 現場での大和田さんは、専門的な立場から助言等をされるだけではな

く、農作業や料理作りにも積極的かつ自然に参加され、地域の方たちと

同じ目線で活動されています。

 まさに本書にあるとおり「地域を豊かにしていこうという目標を共有

し、その一歩一歩の実現をともにかみしめ、喜び合う関係づくり」を、

ご自身も自ら実践されているのです。

 

 本書では、そのような大和田さんの個人的な実践と交流に裏付けられ

た「豊かで幸せな地域づくり」のためのエッセンスが、余すところなく

紹介されています。

 地域づくりに取り組んでおられる方や関心のある多くの方に、ぜひ手

に取って頂きたい好著です。

 

 大和田順子「アグリ・コミュニティビジネス

  農山村力×交流力でつむぐ幸せな社会(2011.2、学芸出版社)

  http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1280-4.htm

 

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 福島県沿岸の有機農業生産者を訪ねる旅(前編、後編) (11/1416)

  http://food-mileage.jp/2016/11/14/

  http://food-mileage.jp/2016/11/16/

 

 「あの日から58ヶ月を迎える月命日に〜二人は何を語る?〜」

  (@東京駒場・番來社) (11/20)

  http://food-mileage.jp/2016/11/20/ban/

 

 江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座総合コース(第6期、最終日)

  (11/20)

  http://food-mileage.jp/2016/11/20/edo/

 

 奥沢ブッククラブ(第14回) (11/21)

  http://food-mileage.jp/2016/11/21/

 

 冨澤ファーム(東京・三鷹市)見学会 (11/25)

  http://food-mileage.jp/2016/11/25/

 

 酒部(西日暮里)、浅草漫才(千葉・鎌ヶ谷)、なみへい(神田)

  (11/26)

  http://food-mileage.jp/2016/11/26/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 東京朝市 アースデイマーケット

 日時:124日(日)10:0016:00

 場所:代々木公園けやき並木(JR渋谷駅、原宿駅から徒歩10分)

 主催:アースデイマーケット実行委員会

 (詳細、お問合せ等

  http://www.earthdaymarket.com/

 

 あなたにとってのほんとのふるさとは?(結イレブンvol.36)

 日時:1211日(日)14001630

 場所:Ao Mo Link〜赤坂〜あおもり地域ビジネス交流センター

   (東京・港区赤坂3丁目)

 主催:ASEED JAPAN、すずめの未来市、元気になろう福島

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/718801388295435/

 

 9回 森の読書会

 日時:1211日(日)15001700

   (引き続きクリスマスパーティを開催予定)

 場所:森の食卓(東京・三鷹市井の頭)

 主催:森の食卓

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/157574178043521/

 

 高倉ダイコンを知り尽くそう!ツアー

 日時:1217日(土)10:0015:00

 場所:東京・八王子市

 主催:多摩・八王子江戸東京野菜研究会

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/767883516702467/

 

 オーガニックコットン収穫祭とプレゼントツリー交流会

 日時:1217日(土)7:0018日(日)20:00

   (JR新宿駅西口集合・解散)

 場所:福島・広野町

 旅行企画・実施:有限会社リボーン<エコツーリズムネットワーク>

 ボランティア活動主催:いわきおてんとSUN企業組合

 (詳細、お問合せ等

  http://www.iwaki-otentosun.jp/otentosun/news/2016/11/post_53.php

 

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*今夜のコツコツ小咄。

 「長生きしたければ、ジビエがいいそうですよ」

 「えっ、そうなんですか?」

 「鳥獣(長寿)肉ですから」

 注:「コツコツ小咄」は、拙FBページにて土日祝を除く毎日、

  絶賛(?)投稿中です。

  https://www.facebook.com/tetsuya.nakata.7

 

* 次号No.108は、1213日(火)[霜月十五日]の配信予定です。

  より有用な情報の発信に努めていきたいと改めて考えています。

 読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也