−大和田順子「アグリ・コミュニティビジネス」(2011.2,学芸出版社)−
著者は東京のお生まれ。百貨店、化粧品会社、シンクタンク勤務等を経て2007年から(一社)ロハス・ビジネス・アライアンス共同代表。日本にはじめて LOHAS(ロハス)を紹介された方としても著名です。
その大和田さんの最近の関心事項の1つが「豊かで幸せな地域づくり」。
本書で大和田さんは、経済成長の結果、便利で豊かになったはずの日本が「気がついてみたら生活や社会の基盤である食や農が危うく、砂上の楼閣のような状態に陥っていた」とし、「こうした“危機”を脱するためには“農” をベースにした暮らし方や産業を再創造していかなければならない」と主張されています。
そのキーワードは「アグリ・コミュニティビジネス」。
農林業とコミュニティビジネスを組み合わせた造語ですが、単なる利潤追求ではなく、そこにしかない“農山村力”と、都市生活者と農山村生活者の“交流力”を組み合わせ、地域の課題解決にビジネス(事業経営)の発想で取り組むことを内容とするとのこと。
具体的な事例として、えがおつなげて(山梨・北杜市)、霜里農場(埼玉・小川町)、鳴子の米プロジェクト(宮城・大崎市)、ひぐらし農園(福島・喜多方市)など、実際に地域で展開されている13事例が詳しく紹介されています。
さらに、SWOT分析の活用など、アグリ・コミュニティビジネスのプラン作成の手法についても解説されているなど実践的な内容になっています。
私は大和田さんにお誘い頂いたおかげで、福島・浜通りや宮崎・椎葉村等を訪ねることができ、大和田さんが地域づくりのサポートをされている様子を垣間見る機会も得ました。
現場での大和田さんは、専門的な立場から助言等をされるだけではなく、農作業や料理作りにも積極的かつ自然に参加され、地域の方たちと同じ目線で活動されています。
まさに本書にあるとおり「地域を豊かにしていこうという目標を共有し、その一歩一歩の実現をともにかみしめ、喜び合う関係づくり」を、ご自身も自ら実践されているのです。
本書では、そのような大和田さんの個人的な実践と交流に裏付けられた「豊かで幸せな地域づくり」のためのエッセンスが、余すところなく紹介されています。
地域づくりに取り組んでおられる方や関心のある多くの方に、ぜひ手に取って頂きたい好著です。
【F.M.Letter No.107, 2016.11/29 掲載】
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