【ブログ】映画『あん』上映会&ハンセン病体験者講演会

2017年1月21日(土)。
快晴ながら北風が冷たい日は、久しぶりに東京・東久留米へ。
以前しばらく住んでいたのですが、西武新宿線の駅舎も駅前の町並みもすっかり様変わりです。
北口から徒歩5分ほどの成美教育文化会館へ。
入り口脇には、すぐ隣を流れる黒目川の生き物の水槽が置かれています。
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ここで13時30分から開催されたのは、「映画『あん』上映会 & ハンセン病体験者講演会」。
主催者である清瀬東久留米社会福祉士会の武田会長から
「1996年のらい予防法廃止と2001年の熊本地裁の判決により、ハンセン病問題は基本的に終了したかのように思われているが、この映画は、今なお残る差別と偏見、元患者の高齢化など多くの問題があることを訴えている。上映後の講演会も含め、ハンセン病について考えるきっかけにして頂きたい」等の挨拶。
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早速、『あん』の上映が始まりました(監督・脚本:河瀨直美、原作:ドリアン助川)。
満開の桜の下、千太郎(永瀬正敏)が雇われ店長をしているどら焼き屋(どら春)を手の不自由な徳江(樹木希林)が訪ねてきて、働かせてくれと自作の餡を置いていきます。あまりの美味しさに雇ったところ、大評判で行列ができる店に。
170121_an_convert_20170122120118.jpg ところが徳江が元ハンセン病患者だったという噂が広がり、客足は途絶え、徳江は店を辞めてしまいます。徳江を守れなかったと苦悩する千太郎は、店の常連の中学生・ワカナ(内田伽羅)に誘われ、徳江を療養所に訪ねて行くというストーリー。

地元・東村山市が舞台でロケも行わたこともあり、身近な光景もたくさん出てきました。

上映会に続き、ハンセン病体験者の森元美代治さんの講演が行われました。
森元さんは多磨全生園に入所されている元患者の方で、国家賠償請求原告団にも名前を連ねられ、ハンセン病の患者・回復者との支援や啓発活動に取り組むNGO・IDEAジャパンの理事長も務めておられます。

1938年、鹿児島県・奄美に生まれ、小学生の時にハンセン病と診断され瀬戸内の療養所に入園、その後、大学進学を目指して多磨全生園に転園し、主治医等に反対されつつ病歴を隠したまま慶應義塾大・法学部に入学・卒業、信用金庫に入社するものの、1970年にはハンセン病が再発し多磨全生園に再入園。新薬の後遺症等に苦しんだそうです。
福祉関係のコンサート会場でドリアン助川さんと知り合い、ハンセン病をテーマにした小説を書きたいので話を聞かせてほしいとの求めに応じて体験談を語ったところ意気投合、今回の映画の原作ができたとのこと。主演の樹木希林さんが「今までハンセン病のことを知らなかった自分が恥ずかしい」と話されていたエピソード等を紹介して下さいました。
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そして最後に、「世の中は変わり、ハンセン病に対する理解も深まってきた。しかし、今も家族や故郷に受け入れてもらっていない元患者も多い。一人ひとりが世の中を変えていくしかない。いい映画に関われたことを誇りに思っている」等と話されました。

講演会終了後、少々重い心を抱えて駅の富士見テラスへ。夕焼けの中、富士の稜線がくっきりと望まれました。

しばし、映画を反芻。
実は一番印象に残ったシーンは、餡を焚いている間、鍋に顔を近づけじっとしている徳江の姿。千太郎に聞かれて徳江は「小豆の声を聞いているの」と答えます。
それは「小豆が見てきた雨の日や晴れの日を想像すること。どんな風に吹かれて小豆がここまでやってきたのか、旅の話を聞いてあげること。この世にあるものはすべて、言葉を持っているんだと私は信じています」。
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映画をみている時は、このシーンは本筋とは少し外れて食べものや食材を大切にする場面かと思ったのですが、富士を見ながら、突然、これは徳江自身にも生まれてから入園し、園の中で過ごした長い日々があったことをの暗喩だと気付いたのです。
徳江は、自分の生き様を誰かに耳を澄ませて聞いてもらいたいと、ずっと思っていたのです。

映画は悲しい結末を迎えます。
しかし千太郎は、満開の桜の下、徳江から引き継いだ餡を使って新しいチャレンジを始めるのでした。心に残るラストシーンでした。

翌1月22日(日)も好天。
ロケ地を自転車で回ってみました(近くばかりです)。
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「どら春」があった地は、住宅地や事務所が並ぶ、どちらかといえば殺風景な場所でした。それでも春には見事と思われる桜並木の下です。
千太郎とワカナが入った蕎麦屋。ワカナが男の子に絵本を読んであげる「くめがわ電車図書館」(ここは初めて来ました)。
いま、自分が住んでいる町で素晴らしい映画ができたことを誇らしく思いました。

遅ればせながら、ハンセン病について勉強もしていきたいと思っています。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室

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