都市農業は、消費者に近いという利点を生かし、新鮮な農山物の供給、農業体験・交流活動を通じた都市住民の農業への理解の醸成、心安らぐ緑地空間の提供など多面的な役割を果たしています。
特に東日本大震災等を契機として、都市農地(農業)がもつ防災機能に対する関心が高まっています。
本年4月、(株)日本政策投資銀行から興味深いレポートが公表されました。農地を含む都市緑地が有する防災機能(雨水流出防止・貯留機能)が定量的に計測されているです。
具体的には、東京の神田川上流地域(善福寺川との合流地点までの約23平方km)を対象地域として、緑地が減少または創出された場合のシナリオ毎に、10年に1回おこる可能性のある集中豪雨が発生した時の被害状況がどのように変化するかについて、シミュレーション分析を行っています。
その結果は次のようなものでした。
緑地が減少するシナリオ(生産緑地や屋敷林の宅地化、建ぺい率の引き上げ等)では、地域全体の 2.0%の建築物が新たに浸水被害を受けるとともに、浸水被害額は現況を90億円上回りました(リンク先の図74)。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2017/05/74_ryokuka2.pdf
逆に緑地創出シナリオ(宅地や屋上の緑化、グラウンドの芝生化など)の場合は、浸水被害を受ける建築物は 2.3%減少するとともに、浸水被害額は現況より45億円減少するものと試算されたのです。
レポートではこのような機能のある緑地を「グリーンインフラ」と呼び、緑地創出のための投資額も試算して、費用対効果が1を上回ることも明らかにしています。
このように、都市農業(農地)は農業生産面だけではなく、今後の災害に備えて都市空間の質を高めるという観点からも一定の役割を果たすことが期待されるのです。
[参考]
(株)日本政策投資銀行「都市の骨格を創りかえるグリーンインフラ-緑地への投資効果を探る-」
http://www.dbj.jp/ja/topics/region/industry/files/0000027136_file2.pdf
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-F.M.豆知識」
http://food-mileage.jp/category/mame/
【F.M.Letter No.119, 2017.5/26】掲載