【ブログ】おしどりマコ・ケンの新春おはなしライブ

2018年1月13日(土)13時30分から、東京・東村山市(私の地元)の市民センターで「おしどりマコ・ケンの新春おはなしライブ」が開催されました。

主催はこどものごはん委員会。参加者は90名ほどです。
 主催者の方の開会挨拶によると、この日は東日本大震災からちょうど2500日目に当たるとのこと。

そして、おしどりのお二人(マコさん、ケンさん)が登壇。
 吉本興業に所属する「芸人」でありながら、原発問題について独自に取材し、ポータルサイト等で詳細な情報発信を続けておられる方。
 お二人(ご夫妻)の掛け合いによる話はテンポが良く(マコさんご自身も言っていましたが、ちょっと早口)、笑いが途絶えることもありません。まるで漫才です(失礼。プロの漫才師でした)。

しかし、笑いに包まれつつも、話の内容はとても明るいものとは言えません。
 以下のように話題は多岐にわたり、かつ、高度に専門的(マコさんによると「マニアック」)でもあります(以下、文責中田。ただし理解が追いついていない部分あり)。

東日本大震災と原発事故が起こった時は東京にいて、避難する芸人仲間もいる中、親子連れ向けのイベントの仕事をしながら、不安で複雑な気持ちだったこと。

なかなか傍聴させてもらえなかった福島県「県民健康調査」検討委員会
 甲状腺がん等症例の判定結果には通常診療分が含まれていなかったこと。予算はあるにもかかわらず事故後に生まれた子どもは検査対象外となっていること。
 重要な結果が発表されるはずだった28回検討委員会の日程が、なぜか総選挙投開票の翌日(2017年11月23日)に変更されたため参加できない記者が多くいたこと。

週2回の東電の記者会見には、現在も毎回参加しているものの、記者や傍聴者は減っておりカメラが1台も入ってなかったことも。
 記者も東電の担当者も人事異動でどんどん変わり、過去の経緯を知らない人が増えていること。

鉄骨の一部が破断している福島第一原発1/2号機排気筒については、国会で山本太郎議員が取り上げたことで原子力規制庁の指示もあり、解体されることが決まったものの、リスク評価等についての東電の説明は不十分であること。

現在も汚染水対策は大きな課題であり、特に旧タイプ(フランジタンク)の解体作業が、現在、作業員にとって最大の被ばくリスクとなっていること。

風評被害についての議論はあっても、農家の方たちの安全確保の視点が不十分であること。
 自営業者であるとして電離放射線障害防止規則(電離則)の対象外になっており、取材した説明会の途中で怒って退席する農家の人もいたこと。

福島県で中間貯蔵される除染廃棄物は、30年以内に県外に搬出し最終処分することが法律で決まっているが、中間貯蔵施設の面積は東京・中野区に相当するほど広大。処理量を減らすために環境省は8000 Bq(ベクレル)/kg以下の除染廃棄物については公共事業(堤防、緑地等)で再利用する基本方針を決定したこと。
 安全だからということではなく、県外での処理量を減らす観点から基準が決められており、現に南相馬市で行われている実証実験では3000 Bqまでのものが使用されていること。
 あまり注目されていないが、今、もっとも気になっている問題の一つとのことです。

ドイツを訪問した際、原発について大学等で意見交換した。
 授業で教えているわけではないそうだが、非常に関心が高く、多くの専門的な質問が出された。ほとんどの学生が手を挙げる。ドイツではナチスの歴史的経験を踏まえて、最後の一人になっても意見を言うというスタンスが徹底している。日本とは大きく異なる。
 脱原発を達成したドイツは、今は隣国・ベルギーの原発廃止を政府、市民団体ともに働きかけていること。

休憩を挟んで会場との質疑応答。マイクを持ってケンさんが走ります(漫才と同じパターンです)。

「ネットで再臨界のニュースが流れていた。おしどりさんは避難は考えていないのか」との質問(女性)に対しては、
 「再臨界という事態は生じていないと考えている。ただ現時点でも放射能が放出されており、気にしなくて良いというレベルではないものの、今は避難は考えていない」との回答。

また、「使用済み燃料棒を取り出す作業にはリスクがあるのではないか。廃炉作業は順調に進むのか」との質問には、
 「使用済み燃料棒については、爆発して強度が劣化している建屋に置いておくよりは、取り出して共用プールに移動した方が安全。4号機は既に取出しに成功。優れたオペレータがいて、実際に話も聞いた。3号機ではクレーンゲームのようなドームを建設中。
 一方、デブリの取り出しについては、中長期ロードマップに定められているものの現実味は乏しい印象」

さらに「話を聞いていて、高齢の自分はともかく、孫のことを思うと気持ちは真っ暗になった」との女性の訴えには、

「確かに取材していてもネガティブな話ばかり。震災直後は、自分も日本が終わるのではという強い不安があった。不安と闘うためには、徹底的に自分で調べるしかない」

「今も、私たちが怖がりすぎるのは無知だからと馬鹿にする学者等もいる。私たちをあきらめさせようとする力を感じることもある。情報開示制度等も活用するなど『想定外の知りたがり」になることが相手へのプレッシャーになる」

「地下水が流入しているドイツの最終処分施設を訪ねた時、担当の方に『これからどうなるのか』と聞くと、民主主義のことが分かっているのか』と怒られた。全員で考え、議論し、答を探していくのが民主主義ではないか、と。」

最新の、しかも実際に取材した豊富なデータに基づく貴重なお話でした。
 マコさんも話したいことがたくさんあった様子で、終了予定時間をだいぶオーバーしてしまいました。

寄席等での舞台をこなしながら(アコーディオンと針金細工という、楽しい漫才です。)、週2回の東電の記者会見を含め、福島県の検討会や各種学会、さらには海外にまで情報収集に歩かれているお二人。
 その姿は大いに見習う必要があると、改めて感じさせて下さった講演でした。