2018年1月18日(木)の終業後は、JR四谷駅にほど近い某所へ。
この日19時から「河合弘之弁護士が語る!『中国残留孤児、フィリピン残留孤児そして脱原発と自然エネルギー』」と題する講演会が開催されました。
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)の会員・サポーター限定の企画です(私はこれに参加したいために賛助会員になりました)。
定刻にHRN事務局長の伊藤和子弁護士から、
「河合弘之先生は昨年12月には画期的な伊方原発3号機の運転差し止め判決を勝ち取られ、年明け早々には2人の元総理大臣とともに原自連として『原発ゼロ・自然エネルギー基本法案』について記者会見を行うなど、エネルギッシュな活動を続けておられる。今日は、ぜひパワーをチャージしてもらいたい」との開会挨拶。
なお、私は河合先生の話を伺うのは、昨年11月に東京・大久保の教会で開催されたイベント以来2回目です。
河合先生の話が始まりました。冗談も交えながらの洒脱なお話ぶりです。
なお、私は先生の話を伺うのは昨年11月に東京・大久保の教会で開催されたイベント以来2回目です。
(以下、文責・中田)
「今は映画監督の方が有名になり、町を歩いていると女性から声をかけられる。こんなことは今までなかった(笑)」
「これまで色んな種類の運動に取り組んできたが、決して私は清く正しいばかりの弁護士だったわけではない。バブルの時代は企業弁護士として、企業買収等にも関わっていた。
ダイナミックで面白かったしお金も稼げたが、そのうち、こんなことしてていいのかなと思い始めた。もっとも反省して企業弁護の活動をやめたわけではなく、今も30名の弁護士を抱える事務所を経営している」
「私は1944年に満州で生まれ終戦の1年後に命からがら引き揚げてきた。4人兄弟の3番目だが、この時に末弟を栄養失調で亡くした。自分も残留孤児になっていたかも知れない。そのようなこともあり、中国残留孤児の日本国籍取得や日本への帰国支援の活動を行っている。東京・御徒町にある『中国残留孤児の家』の活動も支援。
フィリピン残留日本人2世の戸籍の取得(就籍)や身元捜し等の活動も支援している」
「これらも大事だが、心血を注ぐべきは環境問題。そして一番深刻な環境問題が原発。
原発が絶対に許されない理由の1つ目は、重大事故が起こると国が滅びること。2つめは後世に危険と負担を押しつける倫理的犯罪であること。これらは人類全体にとって最も普遍的な問題」
「20年ほど前から原発訴訟に関わるようになったが、連戦連敗。勝てない理由ははっきりしていて、国民全体が原発必要・安全キャンペーンに洗脳されていること。
さすがに疲れ果てて、そろそろ手を引こうかと思い始めていた時に東日本大震災と福島原発の事故が起こった。この時、神様に襟首をつかまれ『逃げるな、最後までやれ』と言われたような気がして、迷わず残りの人生の全てを脱原発に賭ける決意をした。脱原発弁護団全国連絡会も組織した」
「現在、本訴と仮処分あわせて30件以上の原発裁判が係争中。
以前は本訴主体だったが仮処分が増えてきている。本訴では控訴されると止まらない一方、仮処分には即時執行力があり、勝てば翌日から止めることができる。
経済的恩恵のない隣接県でも提訴。伊方原発についても、今回、差し止めを勝ち取った広島だけではなく大分、山口、愛媛でも申し立てるなど分厚い闘いをしている。一つでも勝てば止めることができる」
「東電福島原発事故の責任もきちんと追求しなければならない。刑事では2回の不起訴と検察審査会による差し戻しで強制起訴になり、公判中。民事では株主代表訴訟で20兆円を元役員に請求中。間違いなく世界最大の民事訴訟。
被害額は事故直後からどんどん膨らんでおり、先日の日本経済研究所の見積もりだと50~70兆円。これは日本の国家予算(100兆)、税収(50兆)に匹敵する額」
「飯舘村では、村民3000人超を代理してADR訴訟。3.11甲状腺がん子ども基金も設立。数十倍のオーダーで発見されるというのは、スクリーニング効果では説明できないのではないか」
「このように様々な活動していてもなかなか国民に浸透しないため、映画を作ることとした。
『日本と原発・4年後』には、原発問題の全てを鳥職図のように詰め込んである。これを観ずに原発運動をしようとすると必ず道に迷う。全国1700カ所以上で自主上映され、続編の『再生』も600回上映されている」
「普通、弁護士は依頼を受けて活動を始めるものだが、私は自ら出かけて市民運動に働きかける。出しゃばりと批判されることもあるが、住民から問題意識が上がってくるのを待っては手遅れになりかねない。
原発裁判の法廷は敵意と憎悪に包まれる。原発ムラ(原子力利用共同体)は国民の6割位、遠慮・忖度する人を含めると9割位に浸透しているのではないか。これと闘う精神的消耗度、緊張度は大変なものがある」
「ここにきて、脱原発を実現できそうな感じになってきた。世界は自然エネルギーの大きな潮流に飲み込まれつつある。安くて安全な電気が劇的に台頭しつつある。日本で進まないのは、電線につながせない、何年もかかる環境アセスなどの妨害があるから。これらがなくなれば、日本はあっという間に間違いなく自然エネ大国になる。経済的な地殻変動が起こる」
「5〜10年後には絶対に勝つのは分かっているが、その間に事故が起こる可能性もある。座して待つのではなく徹底的に闘うことが必要」
最後に「アドボカシーにとどまらないHRNの活動を高く評価する」とまとめられ、河合先生の話は終了。
いくつかの質疑応答も行われました。公害裁判に取り組んでおられる弁護士の方からの専門的な質問も。
引き続き立食の懇親会に。
伊藤事務局長の音頭で乾杯。参加者の何人かからのスピーチ。河合先生の「盟友」のような高名の弁護士の方も多数参加されていました。
河合先生は、懇談の合間にもDVDや書籍を販売。気安くサインにも応じて下さいます(『日本と再生』を求めさせて頂きました)。
あわせてHRNの卓上カレンダーも求めさせて頂きました。フォトジャーナリストの渋谷敦志さんが撮影したミャンマー、カンボジア、スーダン、ザンビアなど世界各地の子ども達の生活の様子を垣間見ることができます。
昨年に続いて今年も一年、このカレンダーを眺めながら過ごします。私にとってささやかな世界への窓です。