◇フード・マイレージ資料室 通信 No.139◇
2018年3月17日(土)[和暦 如月朔日]発行
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◆ F.M.豆知識 食料輸送に伴う二酸化炭素排出量の推計
◆ O. カレント なみへい、たまTSUKI、番來舎
◆ ほんのさわり 大和田新『大和田ノート』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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東日本大震災から7年目の「節目」が過ぎました。復興が進んでいる面がある一方、現在も7万人以上が避難生活を送っているのも事実があります。
時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は如月朔日の配信です。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にとって考えるヒントになるようなデータを、コツコツと紹介していきます。
-食料輸送に伴う二酸化炭素排出量の推計-
これまで数回にわたって紹介してきた日本の輸入食料のフード・マイレージの大きさに表れているとおり、私たちの食は、遠隔地から輸入した大量の食料により成り立っています。
(例:輸入食料のフード・マイレージ(総量)の国際比較)
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/01/89_FM.pdf
遠隔地からの大量の食料輸入は、その輸送の過程で二酸化炭素を排出し、地球環境に負荷を与えています。今回は、その大きさの定量的な把握を試みます。
まず、日本国内における食料輸送(輸入食料の国内輸送分を含む。)に伴い排出される二酸化炭素の量は、部門別の二酸化炭素排出量、国内の貨物流動量に占める食料のシェア等から試算すると、約900万トンと試算されます(リンク先の図 93 参照)。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/03/93_CO2.pdf
一方、輸入の過程(輸出国の産地から輸出港を経て、輸入港(東京港)まで)で排出される二酸化炭素の量を、輸送手段ごとの二酸化炭素排出係数(1トンの貨物を1km運ぶ際に排出される二酸化炭素の量)等から試算すると、約1700万トンとなりました。これは、上記の国内における食料輸送に伴う排出量の1.9倍に相当します。
様々な仮定に基づく以上の試算は、おおまかな傾向を把握できたに過ぎませんが、日本が行っている大量かつ長距離の食料輸入が地球環境に対して相当程度の負荷を与えているという事実は、確認できたといえます。
[参考]
中田哲也『フード・マイレージ-あなたの食が地球を変える』([新版]2018.1、日本評論社)pp.120~127
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7625.html
◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
-なみへい、たまTSUKI、番來舎-
今月一杯で、私にとって大切だった3ヶ所の「場」が閉じられます。
まずは、全国うまいもの交流サロン・なみへい(東京・神田)。
川野真理子さんが「東京から故郷おこし」をコンセプトに2008年7月にオープンした飲食店で、美味しい月替わりの特選コース料理や地酒を何度も堪能しました。
4月以降は、この場は地域PRイベント等の拠点として活用するとともに、川野さんご自身も積極的に地域に足を運ばれる予定とのことで、現在、セカンドステージに向けて「なみへい応援団」の会員募集中です。
3月29日(木)と31日(土)にはイベント「なみへい感謝のラストラン」が予定されています。川野オーナーや山本料理長、スタッフの皆さまに感謝の気持ちを伝えるための多くの人で、賑わうものと思われます。
2ヶ所目は東京・池袋の「たまにはTSUKIでも眺めましょ」。
30歳で大手企業を退職した高坂 勝(こうさか・まさる)さん(「高」の字は正確にはハシゴダカ)が、2004年にオープンしたオーガニックバー。独特の暖かい雰囲気で、毎夜(といっても週休3日制でしたが)、高坂さんの生き方と人柄を慕う多くの人が集いました。競争社会に傷ついた人たちにとっては、シェルターな役割も果たしていたようです。
この場は4月以降も「たまTSUKI」のエッセンスとともにレンタルスペースとして残るそうですが、高坂さんご自身は、かねて米と大豆の自給と、多くの人の移住とナリワイ作りを支援してきた千葉・匝瑳(そうさ)に活動の拠点を移されるとのこと。
経済成長至上主義から脱した新しい社会の実現に向けて、自ら範を示して下さるようです。
最後は、東京・駒場の「ママ応援サロン & 学び舎・番來舎(ばんらいしゃ)」。
福島・南相馬市で学習塾を経営される番場さち子さんが、震災・原発事故からの避難者の方々を支援するための首都圏における拠点として、2004年11月に開設された場です。
避難されている方々の相談に乗るだけではなく、多くのイベントや学習会を開催することで、首都圏在住者に対して被災地の現状等を伝えてきました。自ら被災された方も含め、様々な活動に取り組んでいる研究者、医師、NPOの方たちの生の声を直接伺うことができる貴重な場でした。
月末までに何回かイベントも予定されていますが、いずれも既に満席になっているとのこと。
経済的な面も含め個人で相当な負担をされながら場を続けてこられた番場さんに、改めて感謝申し上げたいと思います。
3人の方々の今後のご健勝と、ますますのご活躍をお祈りします。
私自身も引き続き学ばせて頂きたいと思っていますので、これからもよろしくお願いします。
[参考]
全国うまいもの交流サロン・なみへい
http://www.namihei5963.com/
たまにはTSUKIでも眺めましょ
https://ameblo.jp/smile-moonset/
ママ応援サロン & 学び舎・番來舎
http://www.banraisha.com/
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
-大和田新『大和田ノート-伝えることの大切さ 伝わることのすばらしさ』(2016.8、福島民報社)-
https://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E5%92%8C%E7%94%B0%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88-%E5%A4%A7%E5%92%8C%E7%94%B0-%E6%96%B0/dp/4904834348
「東日本・津波・原発事故大震災」(注:大和田さんは東日本大震災をこのように呼ばれます。)から、丸7年が過ぎました。
しかし、被災された方々に節目はないそうです。震災から3ヶ月後の日に被災者の方にインタビューした大和田さんは、「震災から何ヶ月、何年という区切りはマスコミが勝手に作っているだけ。あなたは恥ずかしくないか」と言われたそうです。
著者は神奈川県出身、中央大法学部を卒業後にラジオ福島に入社。現在はフリーとして活躍されています。震災から7年の間、現場に足を運んで取材し、被災地の現状や被災者の方々の思いをラジオで伝えてこられました。
震災が発生した日は、午後6時から翌朝6時まで、不安な気持ちを抱えるリスナーに対して「一緒に朝を迎えましょう」と励まし続けられました。
ところが3週間後、「がんばろう福島!」と語り続ける大和田さんに、リスナーから長い手紙が届きました。そこには浜通りの壮絶な実情がつづられ、最後には「現場を見てから物を言え!」とあったそうです。衝撃を受けた大和田さんは、翌週から被災地に自ら足を運んでの取材を始められました。
ぎりぎりまで避難を呼びかけパトカーごと津波に流された若い警察官。身体の不自由なお年寄りを高台に誘導した後で自分の祖父母を探しに行き、犠牲となった高校生。避難先の埼玉県から福島市に戻り、被災地に向かう自衛隊や警察の復興支援車両に手を振り続けた小学生の姉弟。本書の副題(伝えることの大切さ 伝わることのすばらしさ)は、担当番組が優秀賞を受賞した際に、この2人から贈られた手作りの盾にあった言葉だそうです。
本書には、被災者の方たちの生の声が多くの写真とともに収録されています。大震災の教訓を忘れないためにも、時折り開いて読み返したい本です。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○『カタツムリの知恵と脱成長』出版記念エキシビション[3/3]
http://food-mileage.jp/2018/03/03/blog-86/
○ 東京・新宿ゴールデン街での出会い[3/6]
http://food-mileage.jp/2018/03/06/blog-87/
○ 伝えることの大切さ 伝わることのすばらしさ(大和田 新氏)[3/11]
http://food-mileage.jp/2018/03/11/blog-88/
▼ 筆者がスピーカーを務めます。知人が企画して下さいました。有難いことです。
○ 「フード・マイレージ」のお話と「新版」刊行おめでとうの会【満員御礼】
日時:3月21日(水)16:00~20:00
場所:森の食卓(東京・三鷹市井の頭)
主催:森の食卓
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/413555082402039/
▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
○ 共奏キッチン♪@自由が丘シェア奥沢
日時:3月19日(月)18:00~22:00(出入り自由)
場所:シェア奥沢(東京・世田谷区奥沢 2)
主催:共奏キッチン
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/825430784308674/
○ 大槌復興支援マルシェ(3/22~23)、スプリングマルシェ(3/24~25)
日時:3月22日(木)~25日(土)
場所:JR有楽町駅前広場
主催:ちよだフードバレーネットワーク
(詳細、お問合せ等↓)
http://blog.canpan.info/noshokorenkei/archive/462
○ 10年間ありがとう!なみへい感謝のラストラン!
日時:3月31日(土)13:00~16:00、17:00~22:00(2部制)
場所:なみへい-全国うまいもの交流サロン(神田)
主催:なみへい-全国うまいもの交流サロン(神田)
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/436868296747131/
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*今号のコツコツ小咄。
「これからの人生は、ダウンシフトを基本にしようと思います」
「原則(減速)を決めたのですね」
コツコツ小咄は、まとめて拙ウェブサイトにも掲載してあります。
http://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.140は3月31日(土)、[和暦 如月十五日]の配信予定。いよいよ年度も押し詰まります。
より役立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
いつもありがとうございます。
http://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
http://food-mileage.jp/ ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
http://food-mileage.jp/category/blog/
発行システム:『まぐまぐ!』
http://www.mag2.com/
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【F.M.Letter No.139、2018.3/17[和暦 如月朔日]掲載】
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