【メルマガ】F.M.Letter No.140

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.140◇
 2018年3月31日(土)[和暦 如月十五日]発行
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◆ F.M.豆知識 地産地消のCO2削減効果(学校給食)
◆ O. カレント ふくしまサポーターズクラブ2018
◆ ほんのさわり 藤原辰史『稲の大東亜共栄圏』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は如月十五日の配信です。
「ねがはくは花のもとにて春死なむその如月の望月のころ」
 釈迦入滅の日(如月の望月=二月十五日)の頃に死にたいと願った西行は、実際に建久元(1190)年2月16日に没したそうです。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるようなデータをコツコツと紹介していきます。

-地産地消のCO2削減効果(学校給食)-

今回は、地産地消の取組が有する輸送に伴う二酸化炭素の削減効果について、事例に則して紹介します。
 地産地消の取組み(なるべく近くでとれたものを食べる)は、消費者サイドには新鮮で安価な食材の入手や「顔の見える関係」による安心感の確保、生産者サイドには少量多品種生産でも現金収入が得られ地域の活性化にもつながる等のメリットがありますが、さらに、輸送に伴う環境負荷を削減する面でも有益です。

この効果は、フード・マイレージの考え方を応用すると簡単に定量的に試算することができます。
 今回、取り上げるのは学校給食の事例です。近年、食育の一環としても、学校給食に地元産の食材を活用する取組みが盛んになっています。

埼玉県下のある中学校(生徒数約 800人)における1ヶ月間の学校給食に使用された食材のフード・マイレージを計算すると、3,001t・km(トン・キロメートル)と計測されました。宮崎県産豚肉、長崎県産ジャガイモなど遠隔地からの食材がフード・マイレージ全体の3分の1を占めています。

米については全量埼玉県産米が使用されています。このため、重量(571kg)では食材全体の7%を占める米の割合は、フード・マイレージ(6t・km)では0.2%に留まっています。
 そこで、地産地消の取組の効果を具体的に計測するため、仮に市場流通に委ねて調達(埼玉県下において実際に流通している米の産地別構成割合に即して調達)した場合のフード・マイレージを試算すると、133t・km となりました。
 つまり、地産地消の取組により フード・マイレージは5%弱の水準に縮小されているのです(添付先の図94)。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/03/94_FM_kyushoku.pdf

米と野菜の地産地消の取組みにより削減されたフード・マイレージを合計すると140t・kmとなり、排出係数を乗じることで、年間で約300kg(生徒1人当たり400g)の二酸化炭素が削減されたものと試算されるのです。

[参考]
 中田哲也『フード・マイレージ-あなたの食が地球を変える』([新版]2018.1、日本評論社)pp.138~149
 https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7625.html

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。

-ふくしまサポーターズクラブ2018-

NPO法人 福島県有機農業ネットワーク(ふくしま有機ネット)は、福島県内の有機農業に関わる農業者、消費者、研究者、技術者、農業団体や行政などが連携し、有機農業のさらなる発展を目指すネットワークで、有機農業者同士の技術交流、生産者と消費者との交流事業等に取り組んでいます。

そのふくしま有機ネットが 2018 年度から新たにスタートさせる取組が「ふくしまサポーターズクラブ」です。
 これは、ふくしま有機ネットのミッションの一つである福島の農家と消費者がつながる場を一緒に創るサポーターを募集するというもの。年会費 3000円(小ぶろしきコース)から 10000円(大ぶろしきコース)の3種類があり、コースに応じて情報誌、旬の野菜、新米、地酒等の「お返し」があるそうです。
 なお、会費は農家巡りツアー、交流会、情報誌発行などの運営費に充てられるとのこと。

ふくしま有機ネット事務局は「みんなの力で、つながる場を創っていきましょう! 毎年(常時)募集しておりますので、ぜひサポーターになってください」と呼びかけています。

[参考]
 ふくしまサポーターズクラブ2018大募集!
 https://www.facebook.com/FukushimaOrganicAgricultureNetwork/posts/1651616161594188

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。

-藤原辰史『稲の大東亜共栄圏』(2012.9、吉川弘文館)-
 http://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b102877.html

本欄で藤原先生(京都大人文科学研究所准教授、農業技術史)の著書を紹介するのは、 No.136(2018.1/31)の『戦争と農業』に続いて2冊目です。

本書では、20世紀前半に日本が植民地支配を強めていく過程で、品種改良が植民地統治に重要な役割を果たしたことが明らかにされています。
 現在、主要農作物種子法が廃止されることについて多国籍企業により種子が支配されるのでは等と懸念する声が上がっていますが、その「種子を通じた支配構造」のひな形が戦前の日本にみられるというのです。

その象徴として、寺尾博(農林省農事試験場長、当時)の「我が国においては、稲もまた大和民族なり」という言葉が引用されています。寺尾らによると、日本の稲は高品質だけではなく強靭で、植民地の品種や西欧の小麦に比べて「優越する種族の感じも否めない」とのこと。
 中央集権的な「官営育種」によって生まれた品種である陸羽一三二号(宮沢賢治の詩にも出てきます。)や「農林一号」は、植民地の農村に提供する農業技術のパッケージの先発隊・司令塔としての役割を果たしました。育種学は、日韓併合や大東亜共栄圏の建設に貢献したのです。

また、これら品種は高い耐肥性(施肥量が多いほど収量が増加)という特性を有していました。このため、これら品種の普及を図るために、日窒コンツェルンは朝鮮半島に進出して化学肥料工場を建設しました。
 ちなみに化学肥料の製造工程は火薬製造と共通しており、日窒コンツェルンの中核企業は後に水俣病の原因企業となったチッソです。

著者は、これらの状況を「エコロジカル・インペリアリズム(生態学的帝国主義)」と呼びます。
 そして、その構造は今も変わっていないとし、「種子の一極集中に対して抵抗を続ける人びとに、本書の言葉が一つでも多く届くことを祈りたい」という言葉で本書を締めくくっています。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 坪倉正治先生「震災7年目の相馬地方における健康課題」[3/17]
 http://food-mileage.jp/2018/03/17/blog-89/

○ これからは里山の時代(7年目の3.11)[3/21]
 http://food-mileage.jp/2018/03/21/blog-90/

○「場」のちから(立石マルシェ、神田・なみへい)[3/22]
 http://food-mileage.jp/2018/03/22/blog-91/

○ ふくしま有機ネット交流サロン&同窓会 in 東京[3/24]
 http://food-mileage.jp/2018/03/24/blog-92/

○「中田哲也さんに聞く『フード・マイレージ』と『新版』刊行おめでとうの会」[3/28]
 http://food-mileage.jp/2018/03/28/blog-93/

○ 福島・川内村の地酒「歸宴(かえるのうたげ)」お披露目会[3/29]
 http://food-mileage.jp/2018/03/29/blog-94/

○ おむすび上映会「生きてこそ」[3/30]
 http://food-mileage.jp/2018/03/30/blog-95/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○「Present Tree in ひろの」交流イベントバスツアー
 日時:4月8日(日)7:00新宿駅西口集合
 場所:福島・広野町ほか
 主催:プレゼントツリー
 (詳細、お問合せ等↓)
 http://presenttree.jp/blog/?p=3620

○ 超花見!だれでも参加オーケーへんぼり堂 オープンハウスデイ!
 日時:4月14日(土)10:00~15日(日)14:00
 場所:東京ひのはら村ゲストハウス へんぼり堂
 主催:東京ひのはら村ゲストハウス へんぼり堂
 (詳細、お問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/180590299385279/

○ 都心の農園「スカイファームクラブ」2018年度第1回
 日時:4月15日(日)11:00~14:00
 場所:ちよだプラットフォームスクウェア(東京・神田錦町)屋上
 主催:農商工連携サポートセンター
 (詳細、お問合せ等↓)
 http://blog.canpan.info/noshokorenkei/archive/463

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*今号のコツコツ小咄。
 「今夜、あなたと一緒に見た桜の写真を、お守り代わりに身に付けておきます」
 「そうですか」
 「肌身(花見)離さずに・・・」
 コツコツ小咄は、まとめて拙ウェブサイトにも掲載してあります。
  http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.141は4月16日(月)、[和暦 弥生朔日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  http://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
  http://food-mileage.jp/category/blog/
 発行システム:『まぐまぐ!』
  http://www.mag2.com/