【ブログ】戦後73年目の対話(新橋・対話ラボ)

2018年8月15日(水)は73回目の、そして平成最後の終戦記念日。

この日19時から、きらきらプラザ新橋(東京・港区)で開催されたのは、「戦後73年。いま感じていることを持ち寄り対話しませんか」と題するイベント。

主催は「ご近所イノベーション」実践を応援する実験室・ご近所ラボ新橋です。

フェイスブックページの開催趣旨には、
 「戦争は一人ひとりの体験として正面から語られる機会は少なく、むしろそれが避けられてきたように感じます。わたしたちは、本当に話し合うべきことを話し合えているでしょうか。それぞれ立場や受け止め方を尊重しつつ、 一人ひとりのいまそこにある違和感に迫って行きたい」等とあります。

定刻を回り、進行役の一人・Aさんからの「今日は1日、どうしていましたか」との語りかけで開会。
 Aさんは息子さんと戦争について話してから、靖国神社に参拝してこられたそうです。

参加者は男性が多く、年齢は20~60 歳代位。20名ほどで、昨年よりも大人数です。

その参加者一人ひとりから自己紹介(文責・中田)。

「バブル時代も知らない自分には、戦争は遠い世界」と言う若い女性。
 「若い頃は戦争のことなどあまり考えたことはなかったが、年齢を重ねるに連れてきちんと捉えたいと思うようになった」と話された女性。

「政治家の発言に、現在が戦前・戦中とつながりつつあるという危機感を覚える」という男性。
 ワークショップのファシリテータをされているという男性からは「このような重い テーマでどんな対話ができるかに関心がある」との発言も。

毎月最終水曜日に開催されている「夜の対話カフェ」の常連の方も多いようです。

Aさんから、対話を始める前に簡単なワークをとの提案。

2人1組で並んで立ち、左側にいた人が2~3呼吸の後に相手の右側に移動、さらに後、前へと移動。同じ動作を交代して行い、感じたことを話し合うという内容。
 「何のためにやるのかと思うだろうけど、やってみて下さい」と。

パートナーになってくれた方は「右側に立った方が安心感があった。また、前に立つと後からのエネルギーを感じた」等と感想を話さして下さいました。

19時40分頃から2グループに分かれて対話スタート。
 私は、もう1人の進行役・Fさんが担当される9名のグループに参加。

まずFさんから「どのような話を期待しているか」との問いかけに対して、
 「伝えなければいけないのは戦争の悲惨さ。知らなければ次代に引き継いでいくこともできない。上層部の利益のために多くの兵を餓死させた日本軍の体質は、今のブラック企業にも引き継がれているのでは」

「今日の全国戦没者追悼式の参列者も世代交代が進んでいる。これからは戦争の苦しみや平和の尊さを、戦争を体験していない人が体験していない人に伝えていくことになるが、 どうすればいいのだろう」
 「仕事で昼過ぎに九段下に行くと、車椅子の高齢の方が倒れて救急隊員に保護されていた。暑い中、そこまでして参列しようとする理由は何なのだろうか」等の発言。
 「他の国にも終戦記念日のような日はあるのかな」というつぶやきも。

Fさんからの「インタビューや映像を事実としてそのまま伝えれば足りるのでは」との問いかけには、
 「ニュアンスや行間を伝える介在者が必要では」
 「疑問などを質問できることが大切」
 「身近な人から直接伝えられる話は重さが違うでは」等の意見。

ある女性は「戦争体験者の祖母から直接話を聞くことができた。祖母は、戦後、自分の子ども達を絶対に守ると決意したという。その強い祖母のおかげで私が今ここにいる。祖母の話を聞いて、私は絶対に生きなければと思った」と語られました。

また、「あまり悲惨過ぎる経験は口にするのも憚られるのでは」との意見には、
 「加害者としての体験はさらに伝えられない」「それでも勇気を持って証言されている方もいる」といったコメントも。

後半、ある男性から「戦争のどこが良くないのか」との問いかけが出されました。
 「単純に、人を殺すことは良くない」
 「良くないより嫌だという感覚。同調圧力の下で自分が存在しないものにされてしまっていたのでは」等の回答。

活発な発言が続き、気が付くと予定の時間に。あえてFさんは議論はまとめず、時間どおりにグループでの対話は終了。

再び全員が集まり、感想などをシェア。
 「今まで口にしてはいけないと思っていたことを話すことができて良かった」という女性。

「自分としての持論はあるが、他の方の色んな意見を聞いて取り込んでいくなど、柔軟性の大切さを感じた」という男性。
 「最近の大学スポーツの不祥事にも通じるところがあるのでは。対岸の火事ではなく、もし自分であればというリアルな問題として捉えていきたい」との感想も出されました。

最後にAさんから謎のワークの種明かし。
 「人は相手の右か左のどちらかに立つことに馴れている。逆の位置に立つことで感覚が違ってくる。今回は頭で考えがちなテーマだったからこそ、身体で感じる感覚を持ってもらいたかった」とのこと。

終了後は、有志6名ほどで会場近くの中華料理屋さんで懇親会。
 他のグループでの様子も伺うことができました。深く活発な対話が行われたようです。

「戦後70年」からスタートしたこの企画も4回目になるそうです。私は前回に続いて2 回目の参加でしたが、今回も自分の中に深い「何か」を受け止めることができたイベントでした。

ちなみに下のグラフは、拙メルマガの最新刊(No.149)で紹介したもの。

戦中・戦後の深刻な食糧不足は、育ち盛りであったはずの児童の体格を、実に30~40年ほども逆行させてしまったのです。
 戦争は、食や農の歴史にも大きな影響を及ぼしています。