【豆知識】福島県における漁獲量の推移

福島県沖は、親潮と黒潮がぶつかる海域(潮目)であるため豊かな漁場が形成され、そこで獲れる海産物は“常磐もの”と呼ばれ、市場でも高い評価を受けていました。
 ところが、東日本大震災の津波により港湾が被災したことに加え、東京電力福島第一原発の事故により、福島県の漁獲量は大きく減少しています。

リンク先の図109の赤い折れ線グラフは、福島県における海面漁業の漁獲量の推移を示したものです。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/11/109_gyokaku.pdf

これによると、震災前の2010年には約7.9万トンあった漁獲量は2015年には約4.8万トンへと6割の水準にまで落ち込んでいることが分かります。

一方、長期的にみると、福島県の漁獲量のピークは58.3万トン(1987年)から震災前の時点で1割強にまで大きく減少していることが分かります。これは、各国の排他的経済水域の設定(いわゆる「200海里問題」)やマイワシの漁獲量の減少等によるもので、全国の漁獲量(青い折れ線)も同様の傾向を示しているのです。
 このように長期的視点でみると、福島県における漁獲量の減少は大きなトレンドの中にあるもので、震災と原発事故は、この傾向をさらに加速化させたものと見ることもできるのです。

とはいえ、震災と原発事故の影響を軽くみることは決してできません。
 この統計は漁業経営体の所在地に計上されていることから、実際に福島県の港湾に水揚げされた漁獲量は、沿岸漁業を中心に統計数値以上に大幅に減少しています。

現在、福島県では、試験操業を段階的に拡大しながら“常磐もの”の復活に取り組んでいます。
 なお、モニタリング結果によると、2015年以降、基準値を超過した海産物は一検体もありません。

[資料等]
 農林水産省「海面漁業生産統計調査」
 http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kaimen_gyosei/
 福島県「福島県の水産業」
 http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/36035e/suisanka-suisangyo.html

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出典:メルマガ「F.M.Letter」 No.155
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