【ブログ】問いの思考塾(話題提供:入江杏さん)

2019年6月19日(水)の終業後は、東京・港区の ご近所ラボ新橋へ。
 「ご近所イノベーション」をテーマに、身近なところから地域や社会をちょっとよくできそうな研究や実験が行われている「場」です。

毎週水曜日の夜は「対話ラボ」。
 この日は、6月の「問いの思考塾(対話ゼミ実践編)」が開催されました。
 「質問(問い)をつくる筋肉を鍛えるワークショップ」と銘打たれています。

 2月の会で、話題提供させて頂いて以来の参加です。

 今回の質問のテーマ(焦点)は、 「人は大きな喪失に伴う悲しみや絶望の中から、生きるための光を見出す力を持っている」。

 話題提供して下さるのは、入江 杏(いりえ・あん)さん。

 「世田谷一家事件」(2000年12月)の犠牲となった妹さんご一家を追悼するための「ミシュカの森」を毎年、開催するなど、グリーフケアを実践しておられる方。
 上智大学グリーフケア研究所非常勤講師、世田谷区グリーフサポート検討委員等も務め、「悲しみを生きる力に~被害者遺族からあなたへ」(岩波書店)等の著書もあります。

19 時過ぎ、進行役の「みずか」さんにより開会(みすかさんは、「対話ラボ」マスター のほか多彩な分野で活躍されている方です)。

 20名ほどの参加者から一言ずつ簡単な自己紹介が行われた後、入江さんの話題提供が始まりま した(文責・中田)。
 なお、冒頭、入江さんからは、最近のネットメディアの記事も紹介して下さいました。

 「世田谷事件後、生き残った自分への罪悪感に苦しみ、外出もできない日々が続いたが、6年位たってようやく事件について人前で話すことができるようになった。
 亡く なった妹一家にも輝く人生があった。一緒に過ごした素晴らしい時間があった。それらを語ることは、私自身の生き方と向き合い、人生を立て直すことでもあった」

 「グリーフケアとは、新たに人生を紡ぎ直すこと。亡くなった人との出会い直しでもある」

「立ち直れるきっかけになったのは、姪(当時8歳)の一枚の絵。モンゴルの民話『スーホの白い馬』の一場面に、原作にはない少女が描かれていた。姪の自画像だった。事件の直前、バンダナを巻いて大掃除の手伝いをしていた姿そのまま。
 それを見て、自分も前を向いて生きなくてはという強い思 いが湧き上がってきた」

 「人は、悲しみを生きる力に変えていける。 現代社会は効率的で経済優先となり、家族や周囲の人との関係が希薄になった。
 悲しみや弱さは誰にもある。悲しみは『愛しみ』とも書くように、マイナスのイメージばかりではない。SOS が発信できる社会、悲しむことができる、悲しんでも大丈夫という 社会にしていくことが必要では」

 心に残る内容でした。

続いて5~6人ずつのグループに分かれ、まずは心に浮かんだ「問い」をどんどん書き出していきます。ただし話題提供者に対する質問ではなく、話を聞いてた自分自身の中に生まれた「問い」です。

 私が参加したグループでは、10分ほどで 30以上の問いのリストが出来上がりました。

続いて、これらを「閉じた問い」(Yes、No など数語で答えられるもの)と「開いた問い」(答えを自由に話せる発展性のあるもの)に分け、さらに「閉じた問い」を一つずつ「開い」ていきます。

 そして最後に、この場で他の人とも議論したいと思う問いを選びます。

ここで、みずかさん達が準備して下さったお茶やコーヒー、果物や野菜でブレイクタイム。
 手作りの巻き寿司(イカや春菊)を差し入れて下さった方も。(ご馳走様でした。)

後半がスタート。4つのグループから提示された問いは以下のとおりです。
 「A 悲しみは誰にでも話していいのか、誰に話したらいいのか?」
 「B どうすれば悲しみを人に伝えることができるのか?」
 「C 悲しみとは、本当はどのくらい悲しいのか?」
 「D 悲しむことをなくしたら、どうなってしまうのか?」

 各自、関心の高いテーマのテーブルに移動して話し合い。
 私が参加したBグループでは、伝えることの難しさ、聞く方の心構え、共感の必要性等について話し合われました。

21 時近くになって、最後に一人ずつから振り返りの言葉。色々な感想が述べられました。
 最後に入江さんからは、
「悲しみはマイナスばかりをもたらすわけではない。悲しみを分かち合い、心通わせることで、支え合っていける潤いのある社会になればと思う。
 今日、リラックスして話せたのは『場』の力のおかげ。みずかさんの優しい進行にも感謝したい」等の言葉。

 この日は、実際に悲嘆のなかにある方から切実な話も出されました。
 率直な意見や考えを交換し、大切な時間を共有することができました。みずかさんに感謝したいと思います。

 ちなみに延長戦は、いつもの(?)近くの台湾料理屋さんへ。