【メルマガ】F.M.Letter No.175

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.175◇
 2019年8月30日(金)[和暦 葉月朔日]発行
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◆ F.M.豆知識  有機農業面積割合の国際比較
◆ O.カレント  小川町オーガニックフェス2019
◆ ほんのさわり 金子美登ほか『有機農業の技術と考え方』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 時候は二十四節気の処暑に入り、朝などめっきり涼しくなりましたが、昼間はまだ蒸し暑い日が続きます。一方で今年も九州等では豪雨も。
 時の流れを体感するため、本メルマガは和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介しています。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/

-有機農業面積割合の国際比較-

近年、世界的に有機農業に対する注目が高まっています。
 世界の有機食品売上は年々増加しており、2016年では1999年の約6倍の約897億ドル(約10兆円)となっています。

 また、世界の有機農業の取組面積は1999年から2016年の間に約5倍に拡大しており、全耕地面積に対する有機農業取組面積割合も年々上昇し、2016年には世界平均で約1.2%となっています。
 ただし、この割合は地域(国)別の差が大きく、イタリア(14.5%)、スペイン(8.7%)、ドイツ(7.5%)など欧州諸国で高くなっている一方、アメリカ(0.6%)や中国(0.4%)では低くなっています(リンク先の図175参照)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2019/08/175_yuuki.pdf

 日本については、0.2%と極めて低い水準にとどまっています。
 なお、これは有機JAS認証を受けている面積の全耕地面積に対する割合であり、認証を受けていない面積を含めると0.5%となります(それでも欧州諸国に比べては非常に低い値です)。

 この背景には、技術体系が確立・普及していないこと、消費者が有機農産物を容易に入手できる店舗等が少ないこと、表示制度の仕組みが分かりにくいこと等があると考えられます。

[出典等]
 農林水産省「有機農業をめぐる事情」(2019年8月)
  http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/attach/pdf/index-120.pdf

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/

-小川町オーガニックフェス2019-

今年の小川町オーガニックフェスは、9月7日(土)の10:00~16:00に開催されます。
 オーガニックな生き方・暮らし方を願う人々が集い、生産者・消費者・企業・団体・行政など、様々な市民の立場から、美味しいものを食べ、飲み、語り合あうというイベントです。

 今年も有名アーティストによるライブ、トークイベント、ジオラマ作成や和紙似顔絵など体験コーナーのほか、地元の生産者の方達によるオーガニックな食事や飲みもの等も出展されます。
 さらに今年は“有機の里”の魅力を五感で感じることもできる「まち歩き」やスタンプラリーも開催されるとのこと。

 メイン会場の埼玉・小川町民会館(リリックおがわ)は東武東上線小川駅から徒歩5分。入場は無料です。
 有機の里で開催されるオーガニックの祭典に、ぜひ足を運んでみて下さい。

[詳しくはこちら]
 https://ogawaorganicfes.com/contents2019/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/

-中島紀一、金子美登、西村和雄 (編集)『有機農業の技術と考え方』(2010.7、コモンズ)-
 http://www.commonsonline.co.jp/books2010/2010/07/08/%E6%9C%89%E6%A9%9F%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E3%81%AE%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%81%A8%E8%80%83%E3%81%88%E6%96%B93%E5%88%B7/

本書は、有機農業推進法の制定(2006)後の有機農業の全体像を整理するとともに、将来の方向性について考察したものです。

 編著者の一人・中島紀一先生(茨城大農学部教授(当時))によると、農薬や化学肥料を使用しないというのは「有機農業の入り口についての部分的な認識」に過ぎないとのこと。
 有機農業とは、自然(田畑と作物の生命力)を基礎に位置づけ、それに人の労働と技術(手入れ)が寄り添い、自然との共生を求めるもの。すなわち、有機農業はJAS規格を取得するための特殊な農法ではなく、農業の本来のあり方にほかないとしています。
 そして、有機農業推進法の制定を経て、今後の有機農業は自然共生型の新しい暮らしや地域づくり等に大きな役割を果たす「第2世紀」に向かうと展望されています。

 また、編著者の一人である金子美登さん(埼玉・小川町)は、現場からの提言として「小利大安の世界を地域に広げる」という文章を寄せられています。
 金子さんは1975年4月、町内の10軒の消費者と会費制による提携を始めましたが、消費者の理解不足や権利意識により行き詰まり、2年ほどで解散されたとのこと。その経験を踏まえ、1977年7月、価格は消費者(東京都内を含む。)に決めてもらう「お礼制」による新たな提携を始められ、現在に至っています。

 「いいものを安くほしい人たちとの関係は切れたが、農業の大切さを理解する消費者とは長く続いている」とのこと。
 金子さんによると、有機農業とは「ふるさとの大地に根を張って生きることで、利益は少なくても大きな安心(小利大安)が得られる」農法だそうです。
 地場産業(日本酒、豆腐、レストラン等)との連携を通じ、「小利大安」を地域全体で実現されている様子も紹介されています。

 以上のように、有機農業とは、単に農薬や肥料を使わない農法ということに留まらず、長期的に自然と共生した社会(暮らし方、生き方、考え方)を実現していくものです。
 そして、その実現のためには、消費者を含む幅広い国民が参加していくことが不可欠です。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

 ▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 邑南町・寺本英仁さん「ビレッジプライド」(霞が関ばたけ156)[8/17]
 https://food-mileage.jp/2019/08/17/blog-210/

○ 47都道府県レストラン・箕と環 がオープンしました。[8/19]
 https://food-mileage.jp/2019/08/19/blog-211/

○ 写真展『パレスチナの ちいさな いとなみ』[8/25]
 https://food-mileage.jp/2019/08/25/blog-212/

 ▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
○ もんぺ製作所展示受注会
 日時:8月30日(金)12:00~9月1日(水)16:00
 場所:東京日本橋ブリッジ新潟(中央区日本橋室町1)
 主催:もんぺ製作所ほか  (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/530210731066633/

○ 小川町オーガニックフェス2019
 日時:9月7日(土)10:00~16:00
 場所:小川町民会館・リリックおがわ(埼玉・小川町大字大塚)ほか
 主催:Ogawa Organic Fes実行委員会
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://ogawaorganicfes.com/contents2019/

○ 霜里農場見学会
 日時:9月8日(日)13:30~16:00
 場所:旧下里分校、霜里農場(埼玉・小川町下里)
 主催:生活工房「つばさ・游」
 (詳細、お問合せ先等↓)
 http://www.shimosato-farm.com/watching2.html

○ 奥沢ブッククラブ第48回(コエーリョ「アルケミスト」)
 日時:9月9日(月)18:30~21:00
 場所:シェア奥沢(東京・世田谷区奥沢2)
 主催:奥沢ブッククラブ
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/2088986124737809/

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*舞麗児忽々の今号のコツコツ小咄。
「世界のリーダーが、自国の利益ばかり声高に主張するのって、どう思う?」
「さあ、みっとも(サミット)ない」

注:コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号 No.176は9月13日(金)[和暦 葉月十五日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
 発行者:中田哲也
  https://archives.mag2.com/0001579997/
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
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