【ブログ】作り手と暮らし手が今より近い未来(やまとわ、霞ヶ関ばたけ)

2019年9月18日(水)は早起きして、東京・大手町のサードプレイス・3×3 Lab Futureへ。
 ビルの谷間にはユリの花が咲いていました。

 7時30分から開催されたのは、食や農林水産業 を主なテーマとする若手中心の勉強会・霞ヶ関ばたけ(第158 回)です。

冒頭、いつも通り霞ヶ関ばたけの簡単な説明と参加者同士で自己紹介をしているうち、 今朝早く(深夜に)長野を出られたゲストの奥田悠史さんが到着。

 この日のテーマは「『やまとわ』から学ぶ、作り手と暮らし手が今より近い未来」。

 奥田さんは三重出身、長野・伊那市で木工業や林業を営む(株)やまとわの取締役/企画室長。

 他にデザイン事務所の理事、三重ではマルシェを主宰するなど様々な活動をされていますが、その共通する思いは、「生産者(作り手)と生活者(暮らし手)の距離が、より近い未来を作りたい」ということのようです。

スライドを用いての説明が始まりました(文責・中田)。

 「今の生活者には、誰が作っているか、どのように作られているかという想像力が失われている。その結果、完璧な製品、例えば無農薬で虫喰いのない野菜など、作り手への要求ばかりが高まっている」

  「想像力のない社会は、作り手と暮らし手を分断していく。分断された社会は、さらに 想像力を失っていく」

「作り手と暮らし手をつなぎ直すためには、想像力に裏打ちされた『創造力』が必要」

  「三重で毎週開催しているマルシェ『ハラペコ里の市』は、『何を買うか』から 『誰から買うか』を選べる町づくりを目指すもの。
 デザイン事務所(○と(まると)編集社)では『つなぐ編集室』の室長をしている」 

「やまとわ(山杜環)の企業理念は、『森をつくる暮らしをつくる』」。

  「かつて森は暮らしの近くにあり、食、エネルギーなどを恵んでくれる資産だった。それが長期的な木材価格の下落もあって負債化しつつある」

 「やまとわには、農と森事業部、森事業部、木工事業部、暮らし事業部があり、『森・山』を資源として捉え直して、まちの人が森に遊びにいく機会の創造や、まちの中で森を感じられるような仕組みづくり等に取り組んでいる」

「企業や行政には地域材の使用を提案している」

 「アカマツをパイオニアプランツとしてブランド化する取組みも。針葉樹は軽いため、持ち運べる家具等を製品化している。
 また、経木(きょうぎ)はプラスチックに代わる新しい包装材として注目さ れており、加工の手間も掛からない」

「先日刊行した tent は、『森と人の、ちょっと未来のカンケイに出会うフリーペーパー。 森の未来をつくっている人たち(点と点)をつないでいきたいという思いを込めている」

「林業家と環境保護運動家が議論すると、いつも平行線になる。
 生産性と環境保護は交わらないように思われるが、20~30 年後に生態学的な視点も含めてどういう森を作るかについて、コンセンサスを得ることはできる」

 「森林と暮らし手の間をつ なぐことで、暮らし手の中に『こういう暮らし方がいいよね』という価値観が生まれてくれば、 それが『森をつくる』ことにもつながっていく。
 様々な視点から様々なチャンネルをつくることで、森の都合と人の都合との接地面を見出していきたい」

最後に、現在、やまとわでは「森を面白くしてくれる」職人やディレクターを募集中であることを紹介されて、奥田さんの説明は終了。
 完結で分かりやすい内容でした。

 引き続き、質疑応答と意見交換。長野・伊那との縁については、
 「地元で消費者と生産者をつなぐ活動をしようとしたが実現できず、一度あきらめていた時、伊那で森をあきらめていない大人に出会ったのがきっかけ」とのこと。

無関心層へのアプローチについては、
  「例えばキャンプに来るなど接点が近い人にリソースを重点配分。一方、森は地球の生態系とつながっていること等を子ども達に伝えていくことも必要。
 ゲストを招いてのトークイベント (キノマチ座談会)を定期的に開催し『森×デザイン』『森×IT』といった掛け算で、コンテクストを共有できる人を増やしていきたい」等の回答。

 日本は世界有数の森林国でありながら、林業の担い手は減少し、木材自給率は36% (2017)にとどまっています。
 やまとわのような、従来にない柔軟な発想と実行力に支えられた取組みに、大いに期待したいと思います。