【ブログ】飢餓のない世界を目指して(WFPの取組み)

2019年10月2日(水)の終業後。
 すっかり暗くなったなか、職場至近の千代田区立日比谷図書文化館へ。

 ここでは「日比谷カレッジ」として、多彩なテーマでセミナーやワークショップ等が開催されています。
 この日19時から開催されたのは、「飢餓のない世界を目指して~WFP 広報官が伝える飢餓の今、支援の今」。

3回の特設コーナーには、世界と日本の「食」に関する展示が行われていました。
 おっと、拙著も並べて下さっています(感謝!)。

講師の上野きよりさんがマイクを取られました。

 ジャーナリスト(日米の新聞・通信社の記者)を経て、国連WFPではローマ本部及び食糧支援の現場(エチオピア、ネパール、ナイジェリア)での勤務の後、2018年から日本事務所の広報官をされている方です(文責・中田)。

WFP(World Food Programme、世界食糧計画)は、国連で唯一、食料支援を行っている組織。世界83カ国、9000万人に支援を行っている。
 同じ国連の組織の中で、UNICEF(国連児童基金)やUNHCR (国連難民高等弁務官)に比べると、知名度が低いのは残念(笑)」

SDGs(持続可能な開発目標)とは、2001年に、世界が一丸となって2030 年に達成すべきとして、2015年に国連が定めた17 の目標。その2番目が“Zero Hunger(飢餓をゼロに)」

 「ところが、世界の飢餓人口は10年間減少していたが、2016年以降、3年連続で増加している。現在の世界の飢餓人口は8億2,100万人、実に9人に1人が必要な栄養が摂れていない。
 世界は確実に豊かになっているはずなのに、なぜ飢餓が増えているか分かりますか」

出典:WFP “The State of Food Security and Nutrition in the World 2019”

上野さんからの問いかけに、会場からは「紛争」「気候変動」等といった答え。

  「その通り。2018年、国連安保理は『食料安全保障は世界の紛争の結果でもあり要因で もある』とする歴史的な決議を行った。
 人が飢餓を作り出している(“Men-made”)。紛争を防 ぐことができれば飢餓を減らすことができる」

「さらに、近年、アフリカやアジアは気候変動にさらされている。本年4月にはモザン ビークで大きなサイクロン被害があった。サヘル地域では砂漠化が進行している。
 ニジェールでは、地元住民による三日月型灌漑施設の整備を支援するなど、自立支援を重視している」

 スライドの合間には現地の様子を映した動画が上映され、現地の実態をう かがい知ることができます。

「お配りしたハンガーマップは、世界の飢餓状況を、栄養不足人口の割合により国ごとに5段階で色分けして表現したもの。
 濃い赤色に分類 された国では、全人口の 35パーセント以上の人びとが栄養不足の状態にある」

「WFPが行っているのは、紛争・災害発生地帯に対する緊急食料支援、母子栄養支援、学校給食支援等。他の機関の支援物資も併せて輸送している」

 「支援する食料は国際的に買い付けているが、なるべく地元で調達するようにしてい る。その方がコストも安く、地元経済にも貢献する。

 「また、マーケットが機能している地域では現金や引換券で支給している。 自分で食材を選んで料理できるのが嬉しいと好評。支援される側の人権に配慮することにもつながる」

上野さんが携わられた、ネパールでの学校給食支援の様子も紹介して下さいました。

 「農村部では農業機械をみることはなく、農 作業はほとんどが人力。民家の1階には家畜がいて、2階に人が住んでい る。
 集落の山の上に学校がある。WFP は学校に食糧を届けるまでで、この日は雇われた地元の男性が調理していた。豆や米のおかゆは美味しかった」

 給食をほおばる子ども達の姿を映した動画も映写されました。

「貧しい国では子ども達は労働力。母国語の読み書きや簡単な計算もできない子ども達も多くショックを受けた。
 学校給食の実施が、子ども達を学校に通わせる理由になる。一ヶ月学校に通った子どもには持ち帰りできる食糧を配るプログラムもある。親の意識や行動も変わってくる」

 スライドの中の子ども達の様子を、優しく見守るような上野さんのまなざしが印象的でした。

 その後は会場との間で、WFPの組織や職員数、支援する国の選び方(当該国から要請があることが基本)等について質疑応答。

最後に、全国の映画館で上映されている1分30 秒の動画(シネアド)を上映して下さいました。
 がれきとなったシリアの街で、「私たちの声が聞こえますか」と歌う難民の子ども達の姿が、一人ひとり消えていくという印象的な映像と音楽です。

 地球には十分な食料があるはずなのに、9人に1人が飢えているという世界の現実。
 頭(数字)では理解しているつもりでも今ひとつ実感が伴っていなかったのが、実際に現地で活動されてきた方の話を伺うことで、少しは想像できるようになりました。

 ちなみに2016年の日本の食品ロスの量は643万トン
 WFPによる食料支援量の約1.6 倍に相当するそうです。