【メルマガ】F.M.Letter No.177

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.177◇
 2019年9月29日(日)[和暦 長月朔日]発行
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◆ F.M.豆知識  世界の夏の平均気温の推移
◆ O.カレント  地球温暖化と食(IPCC特別報告書)
◆ ほんのさわり 横山祐典『地球46億年 気候大変動』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 日ごとに夜が長くなり、冷え込む空に月が輝く長月。
 彼岸も過ぎ、悲願のクライマックスシリーズにも何とか進出を決めました。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は地球環境の特集です。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/

-世界の夏の平均気温の推移-

去る9月23日、ニューヨークの国連本部で「気候行動サミット」が開催され、60以上の国の首脳らが気候変動対策の具体策を表明しました。また、スウェーデンの環境活動家・、グレタ・トゥンベリさん(16歳)の演説は多くの人に強い印象を残しました。
 一方で、地球は温暖化していない、あるいは温暖化していてもその原因は人為的な温室効果ガスではないと主張する「懐疑派」の人たちもいますが(超大国の指導者も?)、事実はどうなのでしょうか。

 日本の気象庁も、世界及び日本の気温や降水量の経年変化を監視しています。
 リンク先の図177は、世界の夏(6~8月)の平均気温偏差の経年変化を表したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2019/09/177_ondanka.pdf

 これによると、2019 年の夏(6~8月)の世界の平均気温は、基準値(1981~2010年の平均値)と比較して0.44℃(速報値)も高く、1891年の統計開始以降で最も高い値となりました。
 今年の日本や欧州の猛暑は、データからも裏付けられているのです。

 世界の夏の平均気温は、変動を繰り返しながらも長期的には上昇傾向で推移(100年で0.7℃)していることは、この図からも明らかです。

[出典等]
気象庁「世界の季節平均気温」
 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/sum_wld.html.

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/

-地球温暖化と食(IPCC特別報告書)-

世界の科学者から構成されるIPCC (Inter governmental Panel on Climate Change、国連の気候変動に関する政府間パネル)は、本年8月、「土地関係特別報告書」を公表しました。
 気候変動とフードシステムとの関わりに焦点を当てた本報告書の内容を紹介します(本体は英文で膨大なものですが、概要は農林水産省、環境省のホームページに仮訳が掲載されています)。

 世界の気温は、産業業革命以前と比べて特に陸域において大きく上昇しており、豪雨や熱波などの極端な気象現象の発生、砂漠化や土地劣化等をもたらし、世界の食料の安全保障に悪影響を及ぼしています。

 その一方で、グローバルなフードシステム (食料の生産、加工、流通、調理、消費等)に起因する温室効果ガス排出量は、世界全体の人為的な排出量の最大4割弱を占めると推定しており、この背景には、流通の広域化や肉の消費量の増加等があると分析しています。

 排出量の削減のためには、まず生産面では、農業や畜産を持続可能な生産方法に変えること(土壌の有機物を増やす、家畜排せつ物管理を改善する等)、また、森林の減少あるいは森林の劣化を食い止めることが有効としています。

 さらに、消費面では、食生活パターンを畜産物や油脂を多く消費するものから穀物や豆類を中心としたものにシフトしていくこと、食品ロスや廃棄物を削減すること等が、持続可能な食料供給に貢献するとしています。

 このように、世界のフードシステムは地球温暖化の脅威を受けていると同時に、現在の食生活パターンや広域流通は地球環境に大きな負荷を与えています。
 その少なくとも一部は、私たちが食生活を見直すことで改善・緩和することが可能なのです。

[参考]
 IPCC“Climate Change and Land”(英文)
  https://www.ipcc.ch/report/srccl/
 農林水産省「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)『土地関係特別報告書』の公表(第50回総会の結果)について」
  http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/190809.html

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/

-横山祐典『地球46億年 気候大変動』(2018.10、講談社ブルーバックス)-
 http://bookclub.kodansha.co.jp/title?code=1000033315

「懐疑派」の人たちの主張の一つが、地球は過去にはもっと温暖な期間もあったし、産業革命以降たかだか数百年の気候変動など、長い地球の歴史においては取るに足らない、というものです。

 本書の著者は熊本市出身の古気候学者。
 南極の氷床コアから得られたデータによると、地球は約10万年周期で氷期(全球氷結という時期もあったとのこと)と間氷期(温暖期)を5回以上繰り返したことが分かるそうです。
 現在は間氷期にあるそうですが、恐竜がいた中世期白亜紀の平均気温は現在より10℃以上高かったとのこと(「懐疑派」の主張の通りです)。

 地球が誕生して以来、気候は大きく変動してきました。
 例えば、暗い太陽のパラドックス(地球史最大のミステリーとのこと)、2度わたる大酸化イベント(大気中の酸素濃度の急上昇)、白亜紀の火山活動による二酸化炭素濃度の急上昇と温暖化、大陸漂流による寒冷化、気候変動のペースメーカー・ミランコビッチサイクル、温室効果ガスを深海に隔離する炭素ハイウェイなど、今まで聞いたこともなかった言葉について、研究者のエピソードも含めて分かりやすく解説されています。
 読み物としても、大いに知的興奮をそそられます。

 著者によると、これら46億年の気候大変動を踏まえると、現在の安定している気候は「極めて絶妙なバランス」のもとで成り立っており、その状態(システム)に混乱をきたせば、急な寒冷化や温暖化がごく短期間に起こる可能性があるのだそうです。
 「気候変動のリスクは間違いなく高まっている。未知なるステージに踏み込みつつある」というのが、著者の結論です。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 霜里農場見学会(埼玉・小川町)[9/15]
 https://food-mileage.jp/2019/09/15/blog-216/

○ 「IPRC勧告草案にパブコメを書いてみる」(市民研学習会)[9/17]
 https://food-mileage.jp/2019/09/17/blog-217/

○ ぶらり川越史跡めぐり[9/21]
 https://food-mileage.jp/2019/09/21/blog-218/

○ 作り手と暮らし手が今より近い未来(やまとわ、霞ヶ関ばたけ)[9/22]
 https://food-mileage.jp/2019/09/22/blog-219/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ ちよだプラットフォームスクウェア創立15周年記念講演会
 日時:10月4日(金)15:30~18:20(引き続き懇親会)
 場所:ちよだプラットフォームスクウェア(東京・千代田区神田錦町3)
 講師:奥田正行氏、寺本英仁氏、丑田俊輔氏
 主催:ちよだプラットフォームスクウェア
 (詳細、お問合せ先等↓)
 http://blog.canpan.info/noshokorenkei/archive/529 

○ 枝豆とBeer
 日時:10月13日(日)10:30~16:30
 場所:横田農場(埼玉・小川町青山)
 主催:横田農場
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/2357075377839282/ 

○ 奥沢ブッククラブ第48回  コエーリョ「アルケミスト」
 日時:10月14日(月・祝)18:30~21:00
 場所:シェア奥沢(東京・世田谷区奥沢2)
 主催:奥沢ブッククラブ
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/445795676033179/
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*舞麗児忽々のCO2CO2(コツコツ)小咄。
「地球環境問題は、熊野観光と似ているね」
「えっ、どういうこと?」
「古道(行動)が欠かせませんから」

 コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.178は10月13日(日)[和暦 長日十五日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
 発行者:中田哲也

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