【ブログ】共感資本社会を生きる

2019 年11月21日(木)の終業後は東京・銀座へ。
 久しぶりに足を運ぶと、すっかり年の瀬の装い。若者に人気の衣料店の前にはブラックフライデーの特別セールの大行列。

 静かな通りに面した文祥堂ビル6Fのスペースで19 時から開催されたのは、「『共感資本社会を生きる』刊行記念クロストーク」と題するイベントです。
 参加費は事前に支払い済みで、受付で本と1000 eumo(ユーモ)を受け取りました。

登壇者は、本書の共著者である新井和宏さん((株)eumo 代表取締役)と、高橋博之氏((株)ポケットマルシェ代表取締役 CEO)。

 新井さんは1968年生まれ。外資系の資産運用会社勤務を経て鎌倉投信(株)を創業、「いい会社」だけを対象とした投資信託 「結い2101」を運用するプロの金融マン。

 一方、高橋さんは1974年岩手・花巻市生まれ。岩手県議会議員を務めた後、『東北食べる通信』を創刊し(一社)「日本食べる通信リーグ」を創設。 さらにスマホアプリ「ポケットマルシェ」 を開発された方。

 私は高橋さんには何度かお目に掛かったことはありますが、新井さんの話を伺うのは今回が初めてです。
 なお、お2人とも、この日の朝7時から渋谷で開催 された「車座座談会」(686回目!)に続くダブルヘッダーとのこと。

参加者は 100 名ほど。
 寛いだ雰囲気のなか、新井さんがマイクを取られました(文責・中田)。

  「共感資本社会とは、共感という見えない、貨幣換算できない価値を大切に育み、それを基礎(資本)として活動していける社会のこと。
 価値の軸は多様。行きすぎた資本主義を修正するもの」

 「お金は貯められるから所有の意識が生まれ、格差にもつながる。
 eumo には期限があり(貯められない)、現地に行かないと使えないなど、既存の電子通貨のような経済メリ ットはない。
 果たして共感だけでお金が循環するか、2ヶ月間の実証実験中」

高橋さん
  「eumo の記者発表会に行ったが、質疑は全く噛み合っていなかった。これまでの市場優先の資本主義に代わる新しい土俵を作ろうとしていることを、記者には理解できなかったようだ」

 新井さん
 「生産者と消費者をつなぐ高橋さんの活動と同じ。私たちは同じ山に登ろうとしている。手段が違う だけ」

 「現地を訪問し、お互いの顔をみることによってリアルにつながることができる。
 例えば、奈良から札幌まで足を運んで eumo で名刺を買った人がいる。京都・宮津の醸造店が棚田米で作っているプレ ミアムの赤酢は、現地で eumo でしか買えない。宮崎の地場産にこだわったビールも、地元に行かないと飲めない」 

高橋さん
 「巨大ITグループの会長が飢餓撲滅のために野菜工場の普及を提言していることには、違和感を覚える。人間はロボットではない。風土に根付いた食生活が重要で、生産性向上というモノサシだけでは駄目」

 「『食べる通信』や『ポケマル』とは、特定多数を相手にする物語づくり。eumo はもっと土俵をずらそうとしている」

 新井さん
 「多様な選択肢がある社会に変えていきたい。
 生産者がお金を選べるようになれば、生産者が強くなる。善意で出すお金が社会を変えていくような仕組みを作りたい」 

20時20分頃からは会場との間で質疑応答。
 「生産者は eumo で支払われても使い勝手が悪いのでは、設備投資にはまとまったお金が必要では」等の質問には、新井さんから、

 「今日紹介したのは一部。eumo には何種類かあって様々な目的に対応できる。いずれも、まだ実証実験中で、これがベストとは考えていない。提案することで代替案も出てくる。行動しなければ社会は動かない」等のコメント。

 20時40分頃からはサイン会に。新井さんにサインを頂きながら
 「現地に行かなくても、 例えばポケマルで購入する時に eumo を使えるようにできないか」と質問してみました。
 新井さんは現地を訪問するこを重視されているようで、色々と仕掛け作りも進めておられるようです。

自由な市場取引にを基礎とする資本主義のパラダイムの変革につながる可能性が感じられるイベントでした。

 もっとも「共感」(Sympathy)そのものは、18世紀に「経済学の父」アダム・スミスが既に強調していたことを思い起こすと、本来の経済の姿を取り戻そうとする動きと捉えられるのかも知れません。