【ブログ】「空が青いから白をえらんだのです」ライブ&トーク(東京・池袋)

2020年1月10日(金)の終業後は、東京・池袋のWACCAへ。
 戦前から75 年続いた映画館の跡地を再開発した商業施設だそうで、開放的で快適な空間です。

 そのなかにある「もうひとつのdaidokoro」(注:リンク先は音が出ます。)というスペースは、食材と生産者にこだわったランチを提供するほか、夜の時間には様々なイベントの会場ともなっているようですとのこと。

この日19 時から行われたのは、「『空が青いから白をえらんだのです』ライ ブ&トーク」。
 開演前から、50名ほどの参加者でほぼ満席です。

シンガーソングライターの逢坂泰精(おおさか・やすきよ)さん、ゲストで作家の寮美千子(りょう・みちこ)さん、それにギターの橋本勉さんが壇上へ。

 逢坂さんの挨拶の後、寮さんがマイクを取られました。
 「東京生まれ。2005 年に 『楽園の鳥』(中田注:重たい物語です)で泉鏡花文学賞を頂いた後、地方で暮らしたいと思い奈良に移住した。

 「奈良には壮麗な煉瓦造りの少年刑務所がある。
 建物に惹かれて矯正展の一般公開に行った時、展示されていた受刑者の絵や詩の繊細さ、切なさに目を奪われ、刑務所の方と知り合ったのがきっかけとなり、足掛け10年にわたり社会性涵養プログラム『物語の教室』の講師を務めることとなった」

「凶悪な犯罪を犯した者ばかりと聞いて、頼まれた時はとても無理だと思った。
 実際、教室に集まったのは、見たこともないほど内気な子、横柄にふんぞり返った子や、土の塊のように表情のない子ども達」

 「しかし授業を進めるうち、彼らは虐待体験等から犯罪に追い込まれて心の扉を閉じてしまったことを知った。その扉が開いた時、あふれ出たのは優しさだった」

 そして橋本さんのギターをバックに、『地図』という詩を朗読。
 ・・・ぼくが生きていて 母が生きている時間が 十二年  ぼくが生きていて 母が死んでからの時間も 十二年・・・

続いて逢坂さんが登場。
 「たまたま手に取った寮さんの本(奈良少年刑務所詩集)詩集)に衝撃を受けて、曲をつけさせてもらった。奈良少年刑務所の矯正展でもライブを行い、その時は受刑者の皆さんに届くようにと思いながら歌った」

 まず1曲目は『クリスマスプレゼント』。
・・・世界のどっかにママが余っていたら、僕にちょうだい。大事にするから・・・

寮さん
 「授業はアイヌ民話を題材にした絵本『おおかみのこがはしってきて』を、役割分担して朗読することから始めた。アイヌ風の鉢巻等でコスプレして演じると、仲間から拍手をもらった。
 たったそれだけのことで、目の前の彼らが魔法のように変わっていった。奇跡かと思った」

 逢坂さんによる2曲目は『誕生日』。
 ・・・きっとわたしが あなたを親に選んで生まれてきたんだね・・・

寮さん
 「薬物依存の後遺症のあるA君が書いてきたのが、『くも』と題する一行詩。
 ・・・空が青いから白をえらんだのです・・・

 言語不明瞭なA君に何度も読み直してもらい、ようやくみんなの耳に届いたとたん、盛大な拍手が沸いた。するとA君が初めて自分から口を開いた。

 『ぼくのおかあさんは今年で七回忌。いつもお父さんに殴られていたお母さんは、亡くなる前に病院で、つらくなったら空を見てね、わたしはそこにいるから、と言ってくれた』

 それを聞いた仲間達が、次々と手を上げた。
 『ぼくは、Aくんはこの詩を書いただけで親孝行やったと思います』『Aくんのおかあさんは、きっと雲みたいにふわふわでやわらかい、やさしい人だったと思います』

 なんて優しい言葉でしょう。
 どんなに重い罪を犯した人間でも、心の中にあるのはやさしさなんです」

そして逢坂さんが、『空が青いから白をえらんだのです』を朗々と歌い上げられました。
 何度聴いても、目頭が熱くなる曲です。

 寮さん
 「『刑務所はいいところだ』という詩を書いた子は、ネグレクトされ小学校にも行かせてもらえなかったらしく、 「宿題」という言葉も知らなかった。頭には大きな傷跡。彼は加害者になる前に、被害者だったのだ。
 凶悪な犯罪が起こった時、『何が彼をそこまで追い詰めたのだろうか』と加害者のことを考えるようになった」

 他にも寮さんはいくつもかの詩を朗読し、逢坂さんが歌って下さいました(とても紹介し切れません)。
 軽妙なトークの間も、会場には笑いながらも涙を押さえられない人たちの姿。

逢坂さんオリジナルの『はんぶんこ』『うれし泣きをしようよ-2011年3月 東京にて』等も、心に響く歌です。
 ・・・こぼした涙も無駄じゃなかったと/みんなで生きていこう・・・(うれし泣きをしようよ)

 アンコールも含めて、21時過ぎに終演。
 会場は熱い空気に包まれました。寮さん、逢坂さん、橋本さん、素晴らしい時間を有難うございました。

 ところで、逢坂さんが新宿歌舞伎町で経営されているヒナタバー(とても小さな生歌Bar)では、この17、18日、開店1周年感謝祭が行われます。
 気持ちのいい人たちが集まるお店です。