【ブログ】日米CSAの課題とこれから(霞ヶ関ばたけ)

2000年1月15日(水)、東京・大手町で、食や一次産業を中心とした朝の勉強会・「霞ヶ関ばたけ」が開催されました。
 今回(第166回)のテーマは、「日米CSAの課題から見えた、これからの自律分散型フードシステム」です。

 会場の3×3 Lab Future(さんさんらぼフューチャー)内には、LED照明と自動灌水システムによる緑豊かな「中庭」もあります。

定刻の7時30分、主催者の松尾真奈さんから開会挨拶と「霞が関ばたけ」の紹介。

 続いて、エコッツェリア協会の村上孝憲さんから33ラボの紹介(環境、社会、 経済の3分野で新たな価値を生み出すサードプレイスとのこと)。
 2月からは、ここでCSAの取組(宮崎の生産者の方のトマト)を実験的に始められる計画もとのことです。

まずはテーブルの4名ずつ程度でお互いに自己紹介。
 私のグループは不動産関係、医薬品会社、 農水省職員と、それぞれ食や農に関心を持ち、あるいは実践もされている方達。
 他にも生産者、メガバンクの職員、弁護士など多彩な方達が参加されています。

 7時50分頃から、本日のゲストである石川凜さんの説明が始まりました。

 石川さんは1996年仙台市生まれ。京都大農学部、アメリカ・ケンタッキー大でCSAについて実践的な研究をされ、現在はポケットマルシェ坂ノ途中クックパッドで「複」業中という方(以下、文責・中田)。

「CSA(Community Supported Agriculture)とは、生産者と消費者(会員)との間で、 代金を前払いする等によりリスクの共有と対等な関係性を実現する取組」

 「アメリカ留学中に実習したのは4~5haあるオーガニック農場で、会員は大学関係者のみ。実習の授業を選択した学生は200時間以上この農場で働くことが義務づけられている。
 日本のCSAは野菜中心だが、休止しているものも多いようだ」

「CSAの消費者にとっての課題は、ハードルの高さ。
 生活スタイルを変える必要があること、ピックアップの手間、選べない多種類の野菜を料理するスキルなど。
 また、CSAの農場は比較的都市近郊に偏っている面も」

 「生産者にとっての課題は、満足度・継続率の低さ。
 マーケティング、集金、 分配等の作業が多く生産に集中できず、労働コストに対する収益性も低い。意識の高い生産者ほど自己を犠牲にする傾向も」

「これら課題を乗り越えるためにどうすればいいか。
 消費者の課題については、例えばオフィスに届けてもらうことでピックアップの手間を削減、中身をある程度カスタマイズ可能に、スライディングスケール(差額制)の導入、オンラインでの遠隔地とのコミュニティづくり等があるのでは」

 「一方、生産面での課題については、ある程度の規模拡大(あるいはグループ化)による効率化、マーケティングやマネジメント作業の外部化、梱包しないマーケットスタイル型の採用による省力化等が考えられる」

「しかし、いずれにしても全ての作業を農家が行うことは困難で、消費者(会員)との直接的な関係性を保ちつつ、やりとりを支える調整機能を分化していくことが必要。
 インターネットの発達等により個と個がつながりやすくなっている。これらを活用することによって、自律分散型のフードシステムの実現が可能ではないか」

 「『CSAそのもの』ではなく『CSAのコンセプト』を広めたい。形式にとらわれず、時代や環境に合わせた最適な方法で関係を作っていくための研究を続けていきたい。
 また、ツイッター等による情報発信にも力を入れていきたい」

8時20分頃からは各テーブルで、さらには全員で感想等のシェア。
 「オフィスに届けてもらって社内で分配した時には、大いに盛り上がった経験がある」
 「CSAには売れ残りや食品ロス削減の効果もあるのでは」
 「調理や課金などシステムで解決できる余地もあるのでは」等の感想。

 会場には、茨城・土浦市で有機農業を営む久松達央さん(久松農園)の姿もあり、松尾さんに指名され、
 「5haで直販という現在の姿にするまで20年かかった。これだけの規模は少ないし、なかなかヨコ展開できないのが現実。形式ではなくCSA的なあり方を広めていくという考えには大いに賛同」等と、報告を高く評価するコメントをされました。

引き続き、会場との質疑応答/意見交換。
 メガバンク勤務の女性からの「レストランなど既存の流通とマージしていく可能性があるのでは」との質問には、
 石川さん「青山のカフェでピックアップしている事例はある。生産者 と直接コミュニケーションが取れるような取組を始めている大手デパートも」等の回答。

 都心でレストランを始めるという男性からは、自らもCSAの拠点づくりに取り組んでみたいとの発言。

 京都・京丹後市から来られたという男性は「野菜よりも、その生産者を好きになるこ とが大事では」といった発言も。

最後に石川さんから、
 「様々な知識や情報、ノウハウをシェアすることで、各地でCSA的な動きが広がっていくことを期待したい。そのために自分も研究や実践を続けていきたい」等と決意表明があり、9時前に終了。
 石川さん始め何人かの方と名刺交換をさせて頂いて、職場に急ぎました。分かりやすく、得ることの多かったセミナーでした。

 さて、その日の夕刻は、早速「CSA的取組み」に参加。
 東京・自由が丘で開催された共奏キッチンです。

みんなで料理を作って食べ、語り合うというイベントで、誰でも参加でき、月1回のペースで開催されています(今回で99回目!)。

 この日の食材は、茨城の農家の方の野菜、新潟・大賀の米などです(いずれも存じ上げている生産者の方のもの)。

新年最初の会らしく、食卓にはお餅も(馬場シェフ考案の磯辺焼きの餡かけ。美味!)。
 他にも野菜を中心とした大皿や鍋が並びました。いずれも美味!

 久しぶりにお目にかかれた懐かしい方も見えられ、楽しい時間を過ごすことができました。
 「食」には、間違いなく人と人とをつなぐ力があります。