【メルマガ】F.M.Letter No.191

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.191◇
 2020年4月23日(木)[和暦 卯月朔日]発行
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◆ F.M.豆知識  人口密度と感染者数の相関
◆ O.カレント  新たな食料・農業・農村基本計画
◆ ほんのさわり 鷲田清一/山極寿一『都市と野生の思考』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 卯月(うづき)に入りました。季節は移りますが、未だ残念ながら新型コロナウイルス禍に収束の兆しは見られません。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/ 

-人口密度と感染者数の相関-

新型コロナウイルス禍には、未だ収束の兆しは見られません。
 厚生労働省の報道発表資料(2020年4月21日)によると、世界(国外)の感染者数は243万人で16.9万人が死亡。
 国内においては11,119人が感染し186名が死亡しています(空港検疫、チャーター便帰国者を含む。他にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の関係で712人が感染、13人が死亡)。

 国内における感染者数については、地域的に大きな偏りがあります。
 都道府県別にみると、東京における感染者数は3,197人と、全体(空港検疫、チャーター便帰国者を除く10,974人)の実に29.1%に相当し、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、愛知、福岡といった大都市圏の合計では4分の3近く(73.8%)を占めているのです。

 リンク先の図191は、この都道府県別の感染者数(2020年4月21日現在)と、国勢調査による人口密度(2015年10月1日現在)のデータをプロットしたものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2020/04/191_kansensha.pdf

 これによると、感染者数が突出している東京は、人口密度においても群を抜いていることが分かります。また、人口密度の硬い都道府県ほど感染者数も多いという相関が伺われます。

 厚生労働省は、集団感染の共通点は「換気が悪く」「人が密に集まって過ごすような空間」「不特定多数の人が接触するおそれが高い場所」であるとし、いわゆる「三密」の場所を避けるように国民に訴えています。

 東京への人口の一極集中については、これまでも大規模災害時のセキュリティ、都心の過密による生活・通勤環境の悪化、過疎により農地や森林の保全が困難になる地域の増加など様々な問題点が指摘されてきましたが、今回のコロナウイルス禍は、人口一極集中の新たなリスクを顕在化させたとも考えられるのです。

[資料]
 厚生労働省発表資料(2020年4月21日)
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10965.html 
 総務省「国勢調査」(2015年10月1日現在)
  https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/ 

-新たな食料・農業・農村基本計画-

本年3月31日(火)、新たな食料・農業・農村基本計画が閣議決定されました。これは食料・農業・農村基本法に基づき5年ごとに見直されているもので、今後10年間(2030年まで)の農政の指針となります。

 農業・農村は、食料の供給だけではなく、その営みを通じて国土保全等の役割を果たしていますが、現在、農業者の高齢化、農地の減少、人口減少による産業や集落の衰退など多くの課題に直面しています。このため、今回の基本計画の見直しにおいては、農業及び農村地域をいかに維持し、次代に継続していくかが大きな視点となりました。

 今回の計画では、食料自給率の目標(カロリーベース:2018年37%→2030年45%、生産額ベース:同69%→79%)に加えて、新たに輸出目標(同0.9兆円→5兆円)を掲げるなど、国内農業の生産基盤を強化する(農業政策)とともに、車の両輪として、活力ある農村地域の実現(農村政策)に取り組んでいくこととされています。
 食育や地産地消、関係人口の創出・拡大、半農半X、棚田地域の振興等にも触れられています。

 計画本体は長文ですが、ぜひ興味のある部分だけでも拾い読みして頂くことで、改めて多くの方に農業や農村地域の重要性を認識して頂く1つのきっかけとなればと期待しています。

[参考]
 食料・農業・農村基本計画(農林水産省ホームページ)
 https://www.maff.go.jp/j/keikaku/k_aratana/index.html 

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/ 

-鷲田清一/山極寿一『都市と野生の思考』(2017.8、集英社・インターナショナル新書)-
 http://i-shinsho.shueisha-int.co.jp/kikan/013/  

1949年京都生まれの哲学者(元大阪大学総長)と、1952年東京生まれの霊長類学者(京都大学総長)による対談で、大学の本来の使命(多様な価値観の確保)、リーダーのあり方(愛嬌、強運、後姿)、リアルなコミュニケーションの重要性など、多岐にわたるテーマについて語り合っています。

それぞれのテーマに関連して、食についても多くの言及があります。
 例えば、
 「人と人とがリアルに接して生きた言葉が交わされる。食べることはその最たるもので、『料理とは人と人とを会わせるための場所づくりだ』とする京料理の専門家もいる」(山極先生)
 「京都は町中の住宅街に、必ず仕出し屋と和菓子屋がある。美味しいものを食べながら話をすることは大事やと、昔の人はわかってたんですね」(鷲田先生)
 「祭りのときの大事なごちそうは、みんなで一緒に食べる。ともに食べることで隣人同士のつながりを維持しようとした。共同体の起源には食物が絡んでいる」(山極先生)

 「僕が提唱している臨床哲学とは、日常の食事など家事の感覚」(鷲田先生)
 「人類が700万年大切に育ててきた幸福の原点(たとえば食物を分配すること)を、今、急速に失いつつあるのではないか」(山極先生)

 対談という形式で読みやすく、多くの知的興奮が得られる好著です。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

 ▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○「密」とウイルス禍[4/21]
 https://food-mileage.jp/2020/04/21/blog-265/

 ▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ オンライン市民科学講座
 シリーズ「生活のなかの科学技術リスク」(第1期)全13回
 日時:2020年4月23日(木)19:00~最長21:00
    ~7月16日(木)
 場所:ZOOM(オンライン)
 主催:市民科学研究室
(詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/online_csijseminar_2020/ 

○ オンラインきき酒会/第1回 ~瀧自慢と喜楽長~
 日時:2020年5月15日(金)20:00~20:50
 場所:ZOOM(オンライン)
 主催:農業情報総合研究所/農業ビジネス研究会
 (詳細、お問合せ先等は追って紹介します。)

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「旬の食材は、色んな俳句や短歌に歌われているね」
「折々(お料理)の歌ね」

 コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.192は5月7日(木)[和暦 卯月十五日]に配信予定です。どのようなGWになっているでしょうか。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/ 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
 発行者:中田哲也
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