【ほんのさわり】 鷲田清一/山極寿一『都市と野生の思考』

-鷲田清一/山極寿一『都市と野生の思考』(2017.8、集英社・インターナショナル新書)-
 http://i-shinsho.shueisha-int.co.jp/kikan/013/

 1949年京都生まれの哲学者(元大阪大学総長)と、1952年東京生まれの霊長類学者(京都大学総長)による対談で、大学の本来の使命(多様な価値観の確保)、リーダーのあり方(愛嬌、強運、後姿)、リアルなコミュニケーションの重要性など、多岐にわたるテーマについて語り合っています。

 それぞれのテーマに関連して、食についても多くの言及があります。
 例えば、
 「人と人とがリアルに接して生きた言葉が交わされる。食べることはその最たるもので、『料理とは人と人とを会わせるための場所づくりだ』とする京料理の専門家もいる」(山極先生)
 「京都は町中の住宅街に、必ず仕出し屋と和菓子屋がある。美味しいものを食べながら話をすることは大事やと、昔の人はわかってたんですね」(鷲田先生)

 「祭りのときの大事なごちそうは、みんなで一緒に食べる。ともに食べることで隣人同士のつながりを維持しようとした。共同体の起源には食物が絡んでいる」(山極先生)
 「僕が提唱している臨床哲学とは、日常の食事など家事の感覚」(鷲田先生)

 「人類が700万年大切に育ててきた幸福の原点(たとえば食物を分配すること)を、今、急速に失いつつあるのではないか」(山極先生)

 対談という形式で読みやすく、多くの知的興奮が得られる好著です。

出所:
F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html
No.191、2020年4月23日(木)[和暦 卯月朔日]
(過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/