◇フード・マイレージ資料室 通信 No.206◇
2020年11月29日(日)[和暦 神無月十五日]
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◆ F.M.豆知識 米の1人当たり消費量の推移
◆ O.カレント 鳥インフルエンザ
◆ ほんのさわり 宮内泰介、上田昌文『実践 自分で調べる技術』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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カレンダーは11月も末。ここにきて新型コロナウイルス感染が再び拡大しており、何とも不安な年の瀬を迎えつつあります。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さった読者の皆様に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
(過去の記事はこちらにも掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−米の1人当たり消費量の推移−

国民1人・1年当たりの米の消費量は、1960年代前半には120kg近くあったのをピークに、2000年頃までに半減しました。これは、経済の高度成長と所得の増大に伴い、食生活のパターンが、それまでの米を中心とするものから、パンや麺、さらには畜産物や油脂を多く消費するものに大きく変化したためです。
ところが、かつてのように経済が成長していない近年においても、米の消費量は減少し続けているのです(リンク先の図206参照)。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2020/12/206_komeshouhi.pdf
これによると、1996/97年(96年7月から97年6月までの1年間)における米の1人当たり消費量は75.0kgだったのが、2019/20年には56.6kgへと、四半世紀足らずの間に25%も減少してます。
この背景には、引き続いている単身世帯や共働き世帯の増加や、中食(持ち帰り弁当など)・外食への支出の増大等があるとされています。特に2019/20年においては、コロナ禍の影響により家庭における米の消費量は増加したものの、それ以上に外食における米の消費が減少したため、前年に比べて3%以上と大きく減少したのです。
本年産の米の作柄が「平年並み」だったこともあり、米の需給バランスの崩れが懸念されています。
米は、国内で自給可能な主要食糧であると同時に、水田が国土・環境あるいは景観の保全等の面でも大きな役割を果たしています。これ以上の米消費の減少は、経済社会面で大きな悪影響をもたらしかねません。
[資料]
農林水産省「米に関するマンスリーレポート」(令和2年11月)
https://www.maff.go.jp/j/press/seisaku_tokatu/kikaku/attach/pdf/201110-5.pdf
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
(過去の記事はこちらにも掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
−鳥インフルエンザ−

新型コロナウイルスの感染が拡大する一方で、家きんの病気である高病原性鳥インフルエンザの発生が世界で相次いでいます。
国内でも3県・10農場で発生が確認され、過去最大に迫る160万羽の殺処分や周辺農場の移動制限等の措置がとられています。野鳥でも相次いでウイルスが確認されており、例年よりも感染リスクが高い状況にあります。
一方、鳥インフルエンザが人に感染することは一般的にはありません(海外では、感染した鳥に直接触れて羽をむしるなど濃厚に接触した場合に感染した事例があります)。
また、感染が確認された農場の家きんの肉や卵は流通していませんが、仮に食べたとしても鳥インフルエンザウイルスに感染する可能性はありません。鳥インフルエンザウイルスは70度以上の加熱や胃酸により不活化(死滅)するとされています。
ちなみに厚生労働省は、「鶏肉を未加熱または加熱不十分なままで食べることは、食中毒を予防する観点からもお勧めできません」としています。
[参考]
食品安全委員会HP「高病原性鳥インフルエンザについて」
https://www.fsc.go.jp/sonota/tori/tori_infl_ah7n9.html
厚生労働省HP「鳥インフルエンザに関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou02/qa.html
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
(過去の記事はこちらにも掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−宮内泰介、上田昌文『実践 自分で調べる技術』(岩波新書、2020.10)−
https://www.iwanami.co.jp/book/b530022.html

ベストセラーの前著『自分で調べる技術』(2004)が、全体に新たに書き下ろされました。
宮内さんは北海道大学大学院文学研究院教授。専門は環境社会学で、環境保全やコミュニティの分野を中心に実践的な調査研究を続けておられる方。
上田さんは、私も会員となっているNPO法人市民科学研究室の代表理事で、「生活者にとってよりよい科学技術」を追求し、やはり実践的な様々な活動をされています。
「あとがき」によると、本書の原点は1980年代の学生時代に2人が参画された反公害や反原発の市民運動にあるとのこと。宇井純や高木仁三郎(いずれも故人)と出会い、科学のあり方(住民自身による科学、市民の科学)についても薫陶を受けられたことが、本書の執筆を含め、現在までのお2人の活動の基底にあるようです。
本書では、世界の「いやになるほど」の複雑さに耐えながら、生きていく上で直面する様々な問題を、(国家や専門家に委ねるのではなく)自分たちが納得できるように解決することの必要性が主張されています。そして、それを可能とするのは自ら「調べる」ことであるとし、「ちゃんと調べる」ためのノウハウ(文献調査やフィールドワーク、データの整理方法等)が満載されているのです。
本書は「使う本」とのこと。
取り上げきれなかった、あるいはアップデートされた情報等は、以下の特別のウェブサイトで公開されています。
「実践 自分で調べる技術」(ウエブサイト)
https://jibundeshiraberu.jimdofree.com/
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
〇 大崎駅前マルシェから市民研へ[11/18]
https://food-mileage.jp/2020/11/18/blog-290/
▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。
○ マチモノ収穫祭2020
日時:2020年12月6日(日)10:00〜16:00
場所:まもりやまテラス-旧守山小学校(東京・世田谷区)
主催:街の木ものづくりネットワーク(マチモノ)
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/712689839647997
○ 連続講座「日本の市民科学者−その系譜を描く」
第3回 公害と闘った科学者たち−宇井純、田尻宗昭を主にして
日時:2020年12月11日(金)19:00〜21:00
場所:市民科学研究室事務所(東京・文京区湯島)及びオンライン
主催:NPO法人市民科学研究室、白順社
(詳細、問合せ等↓)
https://www.shiminkagaku.org/csijseminar_citizenscientists_2020_2021/
○ ミシュカの森2020「悲しみとともにどう生きるか」
日時:2020年12月13日(日)14:00〜16:00
場所:市民科学研究室事務所(東京・文京区湯島)及びオンライン
主催:オンライン
(詳細、問合せ等↓)
https://peatix.com/event/1708485
○ 奥沢ブッククラブ第63回 サマセット・モーム『雨』
日時:12月14日(月)19:00〜21:00
場所:オンライン
主催:奥沢ブッククラブ
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/359088088727125/
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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「毎日、どうしちゃったんだろうね。桜の季節でもないのに」
「えっ、どうしたの?」
「咲いた、咲いた(最多、最多)だって」
平穏な年末年始が迎えられるなら、神頼みでも何でもしたい気持ちですね。
コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.207は12月15日(火)[和暦 霜月朔日]に配信予定です。
より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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