【オーシャン・カレント】改正種苗法

去る2020年12月2日、種苗法の一部を改正する法律が成立しました。

 今回の改正は、国内で開発された優良品種の海外流出を防ぐことが目的でしたが、一部、誤った情報が広く拡散するという混乱がありました。
 例えば、伝統種や固定種等の自家増殖(農家自ら種を採り増やすこと)を一律に禁止するものではありません。現在、栽培されている多くの品種(一般品種)は、今後も自由に自家増殖ができます。県の試験場等が開発した登録品種については許諾料が必要となりますが、許諾が必要なことは現在と変わらず、法改正によって生産者のコストが大きく上昇する事態は想定されません。
 また、海外の多国籍企業を優遇したり、遺伝子組換え作物の利用を推進したりするものでもありません。

いずれにせよ、生産者のみならず消費者の中でも種についての関心が高まっていること自体は、日本の農業や食料供給のあり方を見直す機会となるという意味で貴重です。
 なお、海外の多国籍企業ばかり問題視されますが、かつて戦前の日本においては、官民が一体となって開発・普及した品種が植民地支配に活用されたという歴史的事実は、藤原辰史『稲の大東亜共栄圏』(2012.9、吉川弘文館)で明らかにされています。

[参考]
 農林水産省「種苗法の改正について」
 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/shubyoho.html
 藤原辰史『稲の大東亜共栄圏』(拙メルマガ記事より)
 https://food-mileage.jp/2018/04/10/hon-140/

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.207、2020年12月15日(火)[和暦 霜月朔日]
 https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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